最悪の時間旅行  法条遥《時の四部作》
 「SF史上最悪のパラドックス」という謳い文句でも話題になった法条遥の『リライト』(ハヤカワ文庫JA)。2作目の『リビジョン』(ハヤカワ文庫JA)、3作目の『リアクト』(ハヤカワ文庫JA)を経て、最終巻『リライブ』(ハヤカワ文庫JA)が刊行されました。4作のあらすじを簡単に記しておきましょう。



4150311196リライト (ハヤカワ文庫JA)
法条 遥 usi
早川書房 2013-07-24

by G-Tools

 1作目の『リライト』のあらすじは次のようなものです。未来からやってきた転校生、保彦を救うため、未来へ飛んだ中学2年生の美雪。彼女は少年との経験を小説に著します。しかし大人になった美雪のもとに、過去の自分が現れないことに気づいた美雪は、過去が書き換えられている可能性に気づきます…。
 タイムトラベルを扱った青春小説、であるかに思われたストーリーが、どんどんとねじれていき、とんでもない結末を迎えるという、何ともインパクトのある作品でした。

 
リビジョン (ハヤカワ文庫JA)
法条 遥 usi
415031120X

 2作目の『リビジョン』は、家系に代々伝わる、未来を見ることのできる鏡を持つ女性、霞が主人公。ある日、息子が死ぬというビジョンを見てしまった霞は、わが子を助けるために未来を変えようとする…という話。
 1作目の「時の改変」が、人為的なものであるのに対し、2作目では「時」そのものの圧倒的な力が強調されています。直接的な続編というよりは、1作目のスピンオフ的な印象の作品ですね。

 
リアクト (ハヤカワ文庫JA)
法条 遥
4150311544

 3作目『リアクト』では、タイムパトロールの少女ホタルが登場します。過去が見える能力者、坂口霞との出会いから、ホタルは、小説『リライト』に疑問を抱くようになります…。
 前2作を踏まえて、『リライト』そのものの書き換えが行われるという、複雑な構成になっています。

 
リライブ (ハヤカワ文庫JA)
法条遥 usi
4150311897

 そして最終作『リライブ』。何度も転生を繰り返す女性、国枝小霧。時代や家庭環境はその都度異なるものの、まったく同じ女性として生まれ変わりを繰り返しているのです。しかも生まれるときは、かならず同じ名前であり、しかも目が見えないのです。私はいったい何のために生まれてくるのか…? 結婚式当日現れた少年は、その秘密を語りだしますが…。
 シリーズを通して現れる少年の、真の目的が明かされる完結編です。
 

 このシリーズ、タイムトラベルや歴史改変といった「時間もの」なのですが、特徴を一言で言うと、「複雑すぎ」ということになるかと思います。とにかく複雑なのです。1作目にしてからが、ある人物の計画がすでに複雑だというのに、さらにそれをひっくり返す展開が用意されています。そして、その1作目自体が、後続の巻でさらにひっくり返されるという有様です。
 このあたりの事情を、解説者は「面倒」という言葉で表現をしています。僕も解説者の言葉に同感で、物語をわざと「面倒」にしている感がありますが、そこにある種の魅力もあるように思います。タイム・パラドックスものの名作とされる、ロバート・A・ハインラインの『時の門』よりも、複雑な作品に出会えるとは思いませんでした。
 科学的考証はなきに等しいので、「タイムマシン」や未来の技術に関しては、とくに説明もなく、「そういうもの」として導入されます。そういう意味で、パラドックスのためのパラドックスといっていいのでしょうか。とにかく複雑すぎて、その論理が破綻していないのか検証するのも、難しい。2読、3読しても、ちゃんと理解できるか怪しいものです。
 欠点も見られますが、いわく言いがたい魅力のある作品であることも事実なのです。傑作かどうかは別にして、後世に残る問題作ではあると思います。
この記事に対するコメント

未読でなんですが、広瀬正さんの「『時の門』を開く」にならって、この連作でも、どなたか「…の門を開く」を書かれると面白いですね。
【2015/04/03 20:06】 URL | 迷跡 #- [ 編集]

>迷跡さん
僕もそれ、誰かがやってくれないかな、と考えてました。
あまりに複雑なので、考証をやっているサイトがないか探してみたのですが、今のところ、シリーズを通して上手くまとめられているサイトはないみたいです。
【2015/04/03 22:16】 URL | kazuou #- [ 編集]


この記事に対するコメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する


この記事に対するトラックバック
トラックバックURL
http://kimyo.blog50.fc2.com/tb.php/595-171b6430
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

kazuou

Author:kazuou
男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主催。
主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。
記事の新旧に関わらず、コメント・トラックバックは歓迎しています。



最近の記事



最近のコメント



最近のトラックバック



月別アーカイブ



カテゴリー



メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:



ブログ内検索



RSSフィード



リンク

このブログをリンクに追加する