月の皮がむけるとき  タイガー立石『ムーン・トラックス』
4875024614ムーン・トラックス "MOON TRAX" (タイガー立石のコマ割り絵画劇場)
タイガー立石 Tiger Tateishi
工作舎 2014-12-11

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 1980年代前半に、思索社から《思索ナンセンス選集》というシリーズが出ていました。画家や漫画家によるナンセンスでアヴァンギャルドな漫画を集めたシリーズです。梅田英俊とか、佐々木マキ、久里洋二などの作家にまじって、面白い名前の作家がいました。それがタイガー立石(1941~1998年)です。
 その選集に収められていたのは『タイガー立石のデジタル世界』という作品集ですが、一読して、驚かされました。知的でユーモアたっぷり、斬新な手法としっかりした画力。デジタルビットで漫画を描こうなんて、当時誰も考えつかなかったでしょう。
 しかもタイガー立石が凄いのは、アヴァンギャルドな手法を使うにもかかわらず、手法倒れに終わらず、一般の人にもしっかりと楽しめるというところ。まさにエンターテインメントなのです。
 以前工作舎から刊行された『TRA(トラ)』は、著者の漫画作品を集めた作品集ですが、現在でも楽しく読むことができます。今回、著者の絵画作品集が出るということを聞いて、漫画作品は面白かったけど、絵画作品はどうなんだろう?と不安に思ったのですが、杞憂でした。
 今回刊行された『ムーン・トラックス タイガー立石のコマ割り絵画劇場』(工作舎)は、「コマ割り絵画」を集めたものです。「コマ割り絵画」は、名前の通り、コマで割った絵画で、絵画の手法で漫画を描いたものとでもいえばいいのでしょうか。
 漫画作品ほど、明確なストーリーやオチがあるわけではありません。その代わりに、思いもかけないイメージや大胆な構図が多用されていて、見る人を驚かせてくれます。絵画の遠近法を利用したトリック、形やイメージの変容など、エッシャーやマグリットを思わせる作品も見られます。
 以前から、タイガー立石の作品には、SF的な感性が感じられると思っていたのですが、この本の解説を読んで、その疑問が解消されました。
 彼はSF作品が好きで、よく読んでいたというのです。名前が挙げられていたのは、ロバート・シェクリイ、ロバート・A・ハインライン、筒井康隆などですが、一番影響を受けたと言っているのは、シェクリイの短篇集『人間の手がまだ触れない』(ハヤカワ文庫SF)だそうです。道理で、知的でスマートな感触があったわけです。
 一昔前、純文学と大衆小説の融合というテーマが取り沙汰されたことがありましたが、そういう観点から言うと、タイガー立石の作品は、アートとエンターテインメントの融合というべきでしょうか。とにかく「面白い絵」を見たい!という方には、オススメしたい作品集です。

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