2014年を振り返って
モンスターズ: 現代アメリカ傑作短篇集 ミステリマガジン700 【海外篇】 (ハヤカワ・ミステリ文庫) SFマガジン700【海外篇】 (ハヤカワ文庫SF) 不思議屋/ダイヤモンドのレンズ (光文社古典新訳文庫) 郵便局と蛇: A・E・コッパード短篇集 (ちくま文庫) 大いなる不満 (新潮クレスト・ブックス) パインズ -美しい地獄- (ハヤカワ文庫NV)
 2014年のトピックでいちばん印象深いのは、やはり『ナイトランド』をめぐるあれこれ。年明け早々、≪ナイトランド叢書≫の予約者が集まらず、叢書が中止。そして雑誌『ナイトランド』の完全休刊と、ショックなニュースがありました。
 それが年後半になり、商業出版としての復活が告知され、ようやく年末寸前で復刊準備号が出ました。とりあえず、ほっとしました。
 本誌だけでなく、ぜひ≪ナイトランド叢書≫の企画も復活させていただきたいですね。

 さて、2014年に読んで面白かった本を、簡単に振り返っておきたいと思います。

 日本作家で印象が強いのは、矢部嵩の作品。『 〔少女庭国〕』 (ハヤカワSFシリーズJコレクション)の突拍子のなさに驚き、『魔女の子供はやってこない』 (角川ホラー文庫)で、不覚にも感動させられてしまいました。デビュー作と2作目も読んだのですが、正直これが同じ作家の作品?と言うぐらい作品の質に差があり、逆にびっくりしました。何が出てくるかわからないという意味で、次回作が楽しみな作家ですね。
 他には、安定した幽霊屋敷ものである『どこの家にも怖いものはいる』(三津田信三 中央公論新社)、ドイツ・ロマン派を思わせる、奇妙なメルヘン『きんきら屋敷の花嫁』 (添田小萩 角川ホラー文庫)、新機軸のヒロイック・ファンタジー『スタープレイヤー』(恒川光太郎 角川書店)、カップリング作品が面白かった『牛家』(岩城裕明 角川ホラー文庫)などを面白く読みました。

 海外作品としては、やはり荒俣宏編の大アンソロジー≪怪奇文学大山脈≫全3巻の刊行が嬉しかったです。まだ3巻は未読なのですが、本邦初訳作品の多さ、充実した解説など、荒俣さんのまさに集大成的なアンソロジーだと思います。欲を言えば、もう少し立派な造本にしてほしかったというのはありますが。

 アンソロジーで一番良かったのは、馴染みのない作家が多かったにもかかわらず、なかなか楽しませてくれた、B・J・ホラーズ編『モンスターズ 現代アメリカ傑作短編集』(白水社)ですね。収録作品は軒並み良かったのですが、巻末のモスマンのコミックがとくに味わい深いです。
 あとは、『SFマガジン700 海外篇 創刊700号記念アンソロジー』 (山岸真編 ハヤカワ文庫SF)と『ミステリマガジン700 海外篇』(杉江松恋編 ハヤカワ・ミステリ文庫)の両雑誌のアンソロジーが粒揃いでした。

 クラシック作品としては、メイ・シンクレアの怪談集成『胸の火は消えず』(南條竹則編訳 創元推理文庫)、フィッツ=ジェイムズ・オブライエンのファンタジー集『不思議屋/ダイヤモンドのレンズ』(光文社古典新訳文庫)、フランス怪奇小説のアンソロジー『最初の舞踏会 ホラー短編集3』(岩波少年文庫)、A・E・コッパードの短篇集『郵便局と蛇』(ちくま文庫)などが収穫。
 電子出版のみですが、『モーリス・ルヴェル短篇集1・2』(中川潤訳 Amazon kindle)とステファン・グラビンスキの作品(芝田文乃訳 パブー)も良かったです。ちなみにグラビンスキは来年度、単行本化の予定があるとかで、実にうれしいニュースです。

 個人短篇集としては、オーソドックスながら味わい深いSF短篇集『霧に橋を架ける』(キジ・ジョンスン 創元海外SF叢書)、ブラックな笑いの横溢する『大いなる不満』(セス・フリード 新潮クレスト・ブックス)、奇妙な味の現代小説『口のなかの小鳥たち』(サマンタ・シュウェブリン 東宣出版)、拾遺集とは思えないレベルの高い作品集『はい、チーズ』(カート・ヴォネガット 大森望訳 河出書房新社)が印象深いです。

 あとは、最近ハヤカワ文庫NVで、ジャンルミックス的な作品が多く出るようになりましたね。「作られた町」的なテーマで、ハラハラドキドキさせてくれる良質なエンターテインメント『パインズ 美しい地獄』(ブレイク・クラウチ)、タイムトラベルをひねった『プリムローズ・レーンの男』(ジェイムズ・レナー)などが面白かったです。まだ未読ですが『スカウト52』(ニック・カッター)も楽しみです。

 コミックとしては、残酷なメルヘン『かわいい闇』(マリー・ポムピュイ、ファビアン・ヴェルマン 原正人訳 河出書房新社) 、生物的SF短篇集『田中雄一作品集 まちあわせ』(講談社KCデラックス アフタヌーン) 、幻想小説の漫画化のある種の極致ともいえる『五色の舟』(近藤ようこ エンターブレインビームコミックス)、クールさと叙情味の同居する『夜とコンクリート』(町田洋 祥伝社)が良かったです。

 それでは、来年もよろしくお願いいたします。

この記事に対するコメント

「ミステリマガジン 700号記念アンソロジー」は、1冊だけじゃなくて、もっと出してほしいと思いました。個人的には、ミステリマガジンの未収録短編をぜーんぶ出してほしいくらいです。
(著作権とか難しいとは思うのですが)

マンガ「モスマン」は楽しかったですし、まさか「郵便局と蛇」が文庫になるとは思わず。魔法の本棚買ってました。
クラシック作品の出版もうれしかったです。
とりとめなくて失礼いたしました。
良いお年を・・・

【2014/12/29 22:07】 URL | fontanka #- [ 編集]

>fontankaさん
 『ミステリマガジン』は、『SFマガジン』と違って、ほとんど海外作家の翻訳で誌面が占められていたので、毎号アンソロジーだといってもいいぐらいです。そういう意味で、たった1冊では、足りないですよね。1970年代から、お便りコーナーで『傑作選』を出してほしい、という要望をよく見ましたが、実現したのが40年後というのも、感慨深いですね。

 『モスマン』いいですよね。続きが読みたいです。

 今年もお世話になりました。来年もよろしくお願いします。
【2014/12/29 22:49】 URL | kazuou #- [ 編集]

トピックといえば
SFマガジンとミステリマガジンの"隔月刊化告知"には驚きました。
先日発売の、「最後の月間SFマガジン」2月号の大森望コラムはその理由について考察していて、編集後記でそれを追認しているふうの書きぶり。それによると、SFマガジンの方は、発売部数高止まりで、雑誌単体としては採算がとれていたらしいですね。
『ナイトランド』騒動もそうですが、雑誌出版というものはなかなか難しそう。
ともあれ、今年もブログ、おおいに楽しませていただきました。
来年も面白い本とたくさん出会えますように。
良いお年をお迎えください。
【2014/12/30 00:22】 URL | 迷跡 #- [ 編集]

>迷跡さん
 来年もよろしくお願いいたします。

 『ミステリマガジン』も『SFマガジン』も、近年、メジャー化というか一般誌化が進んでいたような印象です。宝塚を取り上げたりと、小説誌としては挑戦的で面白いとは思ったものの、ミステリファン、SFファンとしては、どうなんだろうと思ったのも事実です。
 隔月化で、もっと密度の濃い特集が組めるのなら、その方がいいのかもしれませんね。

 正直、ホラーファンとしては、『ミステリマガジン』『SFマガジン』のニュースよりも、『ナイトランド』の方が衝撃的でした。『幻想と怪奇』の轍を踏まずに、ほっとしています。
【2014/12/30 08:56】 URL | kazuou #- [ 編集]

今年もいろいろ楽しませていただきました
先ず、こちらも、矢部さんのご紹介に先ずお礼です。今年読むことが出来た本の中でもかなり印象が強かったです (あと『かわいい闇』もですね)。
世間的な評価はいまいちなのか、作者の方はツイッターで「見通しは暗いですが」なんて書いておられるようですが、どうか次作も無事刊行されますように・・・

他のご紹介の本は、短編集など、買ったのにまだ読めていないものがかなりあって、この冬頑張って読もうかというところですが、「きんきら屋敷~」は面白く読みました(ご紹介ありがとうございます。「牛家」も買いました!)。「スカウト52」は目新しい要素は特にないのですが、個人的には特に "最後の一人" の運命に胸を突かれました。
怪奇大山脈Iは、ちょっと古典と相性のよくない私には若干ストレスを感じながら読む感じだったなぁと…ただ、荒俣氏が解説文で見せた志の高さには気分が高揚するものがありました (なお、IIも既に購入済みのため読む予定)。皆さんが称賛していた気のするシンクレアも、私個人は怪奇小説としての面白みをあまり感じられずに、むしろ表題作での三面記事的な日常の成り行きを面白く感じたりとか…(という感じ方は下世話?)
「まちあわせ」は、書店で検索しても出てこない(未刊行扱い??)ことすらあって、結局まだ買ってもいません。この辺のマイナー作家の作品を書店で買おうというのは無理な話なのかもしれないですね。。。
実はグラビンスキもまだ買えていなくて、単行本で出るならそちらを買ってしまおうかなとも・・・
(ルヴェルも面白そうだったのですが、PCで読めたかどうか…)

マシスン短編集、ブリッジ等、楽しみにしていたけれど出なかったものもあって、特に「ブリッジ」は、何だかもう無理なのかなぁという気になってきました・・・

来年も楽しみに拝見いたします・・・


ところで、雑誌の話がまたトピックになっているので、(私個人の話になりますが)雑誌に求めるものについて。
個人的には、小説は本で読みたいと思っていて、小説を読むために雑誌を買う感覚がないんですよね・・・何か文芸誌というものを否定する感じになってしまいますが、雑誌は時事的な記事も多く、また紹介する作家等もバラバラなので、そのまま取っておくにはかさばりすぎるし、後から中身を探しづらいなどのこともあって、小説はあまり雑誌では読みたくないのでした。それでどうしても書評関連の立ち読みで済ませることになってしまうという・・・

雑誌に求めるものというと、書評のような時事ネタがまず浮かびますが、まず、もし小説を雑誌で読むなら、折角なので普通の単行本ではあまり出来ない読書体験がしたいです。挿絵や写真、フォント、背景や場合によっては「紙葉の家」みたいな遊びまで・・・
想起するのがミルハウザーの「アリスは、落ちながら」をマリ・クレール誌(女性誌ですが、姉が読んでいたのを読んだ)で初読した時のことで、作品世界と直接の関わりのない、でも夏の日を連想させる涼やかなカラー写真が幾つも作品を彩っていて、瑞々しく印象的でした。この時ミルハウザーのファンになったと言ってもよく、忘れ難い経験です。
(例えば、ミステリ/SFマガジンにも挿絵などはあったりしますが・・・・数が少ないだけでなく単に説明的で膨らみがない気がします。まぁあまり読んでいないのですから実際のところは分かりませんが)

あと、雑誌と言って思い浮かぶのが、ポピュラー音楽の話になってしまいますが、「ストレンジ・デイズ」という雑誌の創刊号のこと。ある編集者が自分の作りたい雑誌を作ろうと立ち上げたもので、英国ポップの雑誌というコンセプト、レーベル特集やニッチ・ポップガイド、洋楽好き向けの洋邦楽の新譜案内など、趣向が明確な、今までになかったような視点の特集をいろいろ組んでいて、偶然目にした時には衝撃的でした。
その後、季刊、隔月刊、月刊と勧めていく過程で持ち味を薄めて一般的な雑誌になって行った感があり、こちらも買わなくなってしまいましたが、創刊号だけはまだ手元に置いていたりします(そもそも雑誌をあまり買う人間ではないし、更に音楽誌なんてほとんど買わない人間なのですが)。

なのでもし買うとしたらと考えてみたのですが、中身は多くはある種のブックガイドや評論的なものになるのかなという感じですが、やはり新しいコンセプトを持ったものだとか、(これまでも、ある程度されてはいると思いますが、)例えば作品の新たな読み方・楽しみ方を提示するもの、ある分野が好きな人への他ジャンル作品のガイドとか、未翻訳作品の内容紹介とか、個々人の好きな本(私の100冊系?)を掘り下げたものとか、とにかく何にせよ未知の本への道しるべ、導火線になるような様々な趣向がこらされたものであってくれれば・・・というのが個人的に思うことですね…
(ミステリマガジンとかにも様々なコラムがあるみたいですが、趣向として統一性がないのか何だかあまり目に留まらない気が・・・そこが迷宮的に自分で見つける喜びもあるのだろうというのは分かりつつ、でもちょっと立ち読みしてみるような人にはアピールしていないというか、分かりやすさに欠ける気もします。
とはいえ売り上げの問題ではなさそうだとすると、内容が変わることはなさそうですが。)

そういえば、ナイトランドはその辺り(紙面構成)はどんな感じだったのでしょう・・? (マンガ、映画、アトラクションやインスタレーション、その他ホラー的な要素を含むものは紹介しようと思えばいくらでもありそうな…)
【2014/12/30 11:31】 URL | Green #mQop/nM. [ 編集]

雑誌の難しさ
 最初は先鋭的なコンセプトだったとしても、大抵の雑誌は、時間が経つうちに薄まっていきますよね。雑誌の場合、継続して刊行するというのが至上命令ですし。
 雑誌はターゲットが狭い場合でも、そのターゲット内で、ある程度の広がりを持った層にアピールする必要があるので、コラムや連載の趣向が統一されないのは、しょうがない面もあると思います。結局それが「マニア受けしない」ということになるんでしょうけど。

 『ナイトランド』は、基本的にはホラーの翻訳短篇がメインでしたね。コラムやエッセイもありましたが、おまけみたいなもので、基本的には他雑誌が載せないようなマニアックなホラー短篇を載せている感じでした。感覚的には「雑誌」というよりも「アンソロジー」に近い感触だと思います。

 ブックガイドや書評メインというと、かっての『幻想文学』誌は、毎号特集でのブックガイドに、常設の新刊評と、読みでがありました。瀬戸川猛資編集の『BOOKMAN』誌なんてのも、ブックガイドメインでしたね。ただ、今の時代あの手の雑誌を出しても、売れないような気はします。
【2014/12/31 08:49】 URL | kazuou #- [ 編集]

雑誌で小説を読むということ
年を跨いで書くようなことでもないのですが…
返信を拝見した時に(いつもお礼も書いていませんがありがとうございます)
即座に思ったのが、「アンソロジーに近い感触」の雑誌を読む楽しみが、
アンソロジーそのものを読むのとどう違うんだろうかということだったのですが、
自分なりにこんなことだろうかと考えた長所が

 1. 必ず毎月読める楽しみがある
     :アンソロジー(というより一部ジャンルの小説自体)は、
     毎月刊行されるとは限らない・・・
 2. コラムなどが適度に入っていると、小説単体より読みやすいことがある
    :この辺は雑誌の構成の巧さなんかにもよりますが…
 3. 写真、挿絵、背景や活字構成、フォントなどで、単行本にはない読書体験が
   出来ることがある
    :これは文芸誌よりむしろビジュアル誌のおまけの小説などに多いかも
     (文芸誌には、小説そのものを提示するのだという意識があるということ
     でしょうか…)
 4. 単行本として紹介される可能性の薄い作家や短編に出会える
    :単純に「今年の傑作短編」みたいな単行本アンソロジーを出しても
     売れるとは限らないでしょうから・・・・

逆に短所かなと思ったのが

 1. 紙質やサイズ、製本などの問題から、保存に適さない
    :この辺は雑誌によりけりなところがありますが・・・
 2. やはり単行本よりかさばる
    :単行本にもあとがきその他ありますが、おまけ分とはいえ
     かさばるような…
 3. 当たり外れを外から判別しにくい
    :これはアンソロジーでもほぼ同じなのですが、内容紹介や
     コンセプトがない分判断が難しいかなと・・

あと、コストパフォーマンスはどうかとか、評判が分かりづらいのではとか、良く分からない要素もあれこれありますが、こんな感じなのでしょうか?
(そうではないというところや、他にこんな要素があるということ、ありますでしょうか?)
【2015/01/03 03:04】 URL | Green #mQop/nM. [ 編集]


 雑誌は単体で考えるというよりは、1年とか、10年とか、複数年で捉えた方がいいのじゃないかと思います。要するに規模の大きいアンソロジーですね。(あくまでアンソロジーに近い感触の雑誌ですが)

 メリット・デメリットは、だいたいお書きになっている内容で合っていると思います。
 雑誌のいちばんの利点は、初めての作家や関心のなかった作品に出会える機会があること、だと思っています。単行本であれば、テーマやコンセプトなどに関心がない場合、手に取らないですが、雑誌の場合、定期購読していれば、好き嫌いに関係なく、いろんな作品に出会える可能性がありますよね。
 逆に言うと、当たり外れが多いということでもあり、その意味では、コストパフォーマンスは悪いのかもしれません。これを言うと精神的なものになってしまうのですが、長年講読している雑誌になると、雑誌自体に愛着が出てくるので、「つまらない」号があっても許容できたりします。(ある意味「惰性」といっていいのかもしれません)

 雑誌は種類にもよりますが、基本的に読み捨て前提で、保存を考えていないものが多いので、マニア泣かせですよね。光文社から出ていた「EQ」なんか、紙質がすごい悪いので、集めていたころ、かなり気になりました。あとはホッチキス製本だと、数十年経つと、劣化して紙の方にも錆がついてしまったり。
【2015/01/03 08:58】 URL | kazuou #- [ 編集]

細かくてごめんなさい!
毎回楽しく読ませていただいています勉強になります
パインズ-美しい町ではなくパインズ-美しい地獄なのでは?
すみません細かくて笑
【2015/01/05 22:41】 URL | @yoshiki #- [ 編集]

>@yoshikiさん
ご指摘ありがとうございます。
確かに間違えてましたね。テーマが「作られた町」だったので、「美しい町」だと思い込んでました。
【2015/01/05 22:51】 URL | kazuou #- [ 編集]

昨年分消化中
最近電車の中でも眠気に勝てず、今年の1/4が過ぎた今になっても昨年分の消化が遅々として進んでいないという状態ですが(ので、新しい面白い記事が沢山ありますがこちらに…)、ただ続けて良い作品に出合えるので、やはり昨年は短編集の収穫が多かったのかなという感じですね。
「霧に橋を架ける」は、何かとの邂逅(とそのもたらしたもの)と、自分とほとんど一体化した何かとの離別が描かれていて、どこか心が揺さぶられるというか・・・ なるほどこうも捉えられると唸る「スパー」、心慰められるが故に離別の痛みも残る「26モンキーズ」、そして本編とさほど変わりない世界の話なのにサイドストーリーがまるで寓話のように感じる「~トリックスターの物語」などなど・・・・昨年の短編集の既読分では、個人的には一押しですかね・・・・
「大いなる不満」も印象的で、初めの話を読んだ時には、残りの作品はいったいどんな変な展開が詰まっているのやらと思ったほどですが、結局残りはそこまでは変な話ではなかった感じ(少しミルハウザーの一部作品を連想)。我々は異常を内包しており、それゆえにあらぬ方向へ行ってしまう、と言いたげな作品集だった印象です。
「月の部屋で会いましょう」は短めの奇談で、日常に奇想を放り込んで展開するあたり、タイプとしては昨今よく紹介されている類のものに近いかなと感じられ、短編集にまとめられると奇想の繰り返しに少々食傷する辺りもにていますが、そこに身近な人間関係の綾を沿わせてある辺りが巧みで結構よく出来ているなぁと。
ブロック短編集は、リリカルな作品を多く集めてあるのだと、今一つさまにならないというか… やはり冒頭の作品みたいないかにも作り物の、けれん味たっぷりの感じが、らしいし今も楽しめると思うのですが。

「はい、チーズ」は読んでいるところ(冒頭の作品だけ読みましたが、何ともいい感じでした、ブラックですけど)、「口の中の小鳥たち」「元気で大きいアメリカの赤ちゃん」などなど、まだ買っていない本もあって、なかなか今年の本に移行できません・・・

「プリムローズ・レーン~」は、指の件を読んだ時、日本のマンガを韓国で映画化した「オールド・ボーイ」という作品を何となく連想、きっと自分に跳ね返ってきて不幸な終わり方をするんだろうと思いながら読んでいましたが、途中までそんな感じだったものの、あの気持ちの良いエピローグは予想だにしていませんでした。
(でも指ミキサーになぜ抵抗しなかったのかは、結局よく分からなかったですが・・・)

今年は久方ぶりのマグリット展が開催中のようで、割と最近知った自分の中でも徐々にマグリット熱が復活中ですが、タイガー立石さんのご紹介は面白く読みました。自分の感覚にフィットした訳でもないのですが、でも世界を広げ頂いた感じで、このようなご紹介、また楽しみにしています。
【2015/04/06 23:08】 URL | Green #mQop/nM. [ 編集]


最近では、ジャンルが混交してきているので、文学系の作品集にエンタテインメント的な作品があったり、エンタテインメント系の作品集に文学的な作品があったりしますよね。個人的に、あまりに文学的な要素が強かったり、実験性が強かったりするものは、最近受け付けなくなってきている気がします。《新潮クレスト・ブックス》で出る作品って、そのあたりのバランスが微妙なので、購入しようかどうか、いつも迷います。

ブロックの短篇集は、この人の短篇集には珍しく、叙情性の強い作品が多かったように思います。これはこれで悪くないのですが、もっとショッカー的な作品を求めていたので、ちょっと物足りなかったかも。

マグリットもそうですが、タイガー立石みたいに、アートをエンタテインメントとして楽しめる作家って、以外に少ないんですよね。マグリットやダリのような画家が今でも人気があるのは、やっぱり「面白い」からだと思います。
【2015/04/08 22:25】 URL | kazuou #- [ 編集]


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kazuou

Author:kazuou
男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。
主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。
記事の新旧に関わらず、コメント・トラックバックは歓迎しています。



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