幽霊屋敷の新機軸   三津田信三『どこの家にも怖いものはいる』

4120046370どこの家にも怖いものはいる
三津田 信三
中央公論新社 2014-08-08

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 三津田信三のホラー作品の怖さには定評があります。「幽霊」「お化け」、言い方は何でもいいのですが、そうした得体の知れない存在が、登場人物たちに迫ってくるときの切迫感が半端ではないのです。その怖さは、精神的なものというよりは、むしろ物理的なものに近い感触です。
 新作『どこの家にも怖いものはいる』(中央公論社)も、そんな「怖さ」を味わえる作品です。
 初期の作品でもそうでしたが、この作品でも主人公は、作家である三津田信三自身です。彼がふと知り合った編集者の三間坂から、怪奇現象を記述した日記と手記を渡されたことから、物語は動き始めます。
 ひとつは現代の新築の家から子どもが消えてしまった事件、もう一つは少年が奇怪な女に追いかけられ、謎の屋敷に迷い込む事件。時と場所も異なっているらしい二つの事件でしたが、それぞれの現象にどこか共通点があることを感じ取った三津田と三間坂は、事件について調べ始めます。やがて第三、第四の事件について記された資料が見つかりますが…。
 幽霊屋敷テーマについて書かれた作品なのですが、それが一つではなく、五つも出てくるという、ホラーファンにとってはたまらない趣向です。それぞれの事件は一見全く関連のない、独自の怪奇現象に見えるのですが、それらに共通点を感じ取った主人公たちが、事件の背景を調査・推理していくという形式になっています。
 5つの事件は、それぞれを短篇小説として読んでも十分に面白いのですが、それが最後にひとつの事件に収斂されていくのには驚かされます。
 この著者の描く怪奇現象の描写はほんとうに怖いのですが、本作でもそれは十分に発揮されています。霊的な場所に入り込んでしまった登場人物が、得体の知れない存在に追いかけられる。単純に言ってしまえばそれだけなのですが、それがわかっていても怖いのだから、その筆力はただ事ではありません。
 ホラー・怪奇小説ファンにとっては、ひじょうに満足できる作品といえるのですが、唯一難点を挙げるとすると、最終的に理に落ちてしまうところでしょうか。5つの事件のうち、4つ目までは、ほんとうに怖くて面白いのですが、それらの事件の元凶として語られる5つ目の事件が描写されることによって、因果性が見えてしまうのです。
 怪異は不条理なほうが怖いのです。「~のせいだった」といった、理由が説明されてしまうと、やはり怖さが半減してしまいます。
 ただ、事件の共通点を推理していったり、怪奇現象について論理的に考えていくという、ミステリ的な興味はそれはそれで楽しく読めるのも事実です。その意味ではミステリファンにも楽しめる作品でしょう。
 総体的にはホラーとミステリのハイブリッド作品といえるのですが、かなりホラー寄りに書かれた作品でしょうか。ホラーファン、とくに幽霊屋敷ものが好きな方にはオススメしたい作品です。

テーマ:怪談/ホラー - ジャンル:小説・文学

この記事に対するコメント
チャレンジ

「切迫感が半端ではない」「ほんとうに怖い」といったご紹介文を見て、これは面白そうだと思って購入してしまいました。一緒に文庫化されていた山白朝子さん(以前のご紹介で興味はあったのですがその時は買うに至らず)とマーガレット・ミラー(初期から中期の作品のようで、楽しみです)も購入。

日本作家の方が怖さは上、という意見はよく目にしますし、実際、確か眉村卓氏選の「幻想文学傑作選」だったかを読んでそれを感じていたりもしましたが、海外作品の場合と違ってなかなか好みの作品に行きあたらないというか、怖いというよりはSF、ミステリ的であったり、あるいはいかにも日本人作家的だなぁという感じだったりで、積極的には手を出さずに来て久しいですが、ご紹介が面白そう・怖そうだったのでチャレンジしてみようかと。
【2014/08/31 07:29】 URL | Green #- [ 編集]


 単純に「怖い」となると、結局心霊実話とかになってしまうのですが、小説ならではの「怖さ」を追求した作品となると、今のところ、三津田信三作品をいちばんに挙げたいですね。
 海外の作家で言うと、ヘンリー・ジェイムズとかウォルター・デ・ラ・メアよりも、M・R・ジェイムズあたりに近い印象でしょうか。超自然的な現象をはっきり出して、それが事実として登場人物たちが動く…というあたり、ゴースト・ハンターものっぽい感じも受けますね。
【2014/08/31 08:33】 URL | kazuou #- [ 編集]


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Author:kazuou
男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。
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