怪奇山脈登攀中!  荒俣宏編『怪奇文学大山脈1』
4488010202怪奇文学大山脈 (1) (西洋近代名作選 19世紀再興篇)
荒俣 宏
東京創元社 2014-06-28

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 このたび刊行された『怪奇文学大山脈1 西洋近代名作選 19世紀再興篇』(東京創元社)は、荒俣宏編の全3巻からなる大型アンソロジーです。
 第1巻は、19世紀の作品をメインに編まれています。未訳作品も多く、怪奇幻想文学のファンとしては、必読のアンソロジーでしょう。
 まずは収録作品の紹介を。

 ゴットフリート・アウグスト・ビュルガー『レノーレ』
 ヨハン・ヴォルフガング・ゲーテ『新メルジーネ』
 ルートヴィヒ・ティーク『青い彼方への旅』
 作者不詳『フランケンシュタインの古塔』
 キャサリン・クロウ『イタリア人の話』
 クレメンス・ハウスマン『人狼』
 エドワード・ブルワー=リットン『モノスとダイモノス』
 ジョゼフ・シェリダン・レ・ファニュ『悪魔のディッコン』
 フィッツ=ジェイムズ・オブライエン『鐘突きジューバル』
 リチャード・マーシュ『仮面』
 ラルフ・アダムズ・クラム『王太子通り二五二番地』
 ロバート・W・チェンバース『使者』
 エルクマン-シャトリアン『ふくろうの耳』
 コンスタンチン・ツィオルコフスキイ『重力が嫌いな人』

 ビュルガー『レノーレ』やゲーテ『新メルジーネ』といった、幻想文学史には必ず取り上げられる名作から始まり、ブルワー=リットンやレ・ファニュといったビッグネームの作品、そしてリチャード・マーシュやラルフ・アダムズ・クラムといった、マイナー作家の作品まで、バラエティに富んだ構成になっています。
 中でも面白かった作品を挙げると、古色豊かな幽霊物語『イタリア人の話』(キャサリン・クロウ)、漂流物語とゴーストストーリーを組合わせた異色の作品『モノスとダイモノス』(ブルワー=リットン)、不気味さでは比類がないサイコ・スリラー『仮面』(リチャード・マーシュ)あたりでしょうか。
 とくに、いろいろな人物に化けられる怪女性が登場する『仮面』は、江戸川乱歩の初期作品を読んでいるような、雰囲気抜群の作品で楽しませてもらいました。リチャード・マーシュは、以前創元推理文庫から『黄金虫』という怪奇スリラーが翻訳されていて、これも雰囲気たっぷりの佳作でした。もっと作品を読んでみたい作家ですね。
 あと意外、といっては失礼ですが、文豪ゲーテの『新メルジーネ』が、じつにひねくれたメルヘンで楽しませてくれます。妖精の恋人を手に入れた語り手の男性が、富も恋人も手に入れておきながら、不満をこぼしまくる「ダメ男」であるという、風刺の効いた作品です。
 解説も充実しており、勉強になります。しばらく怪奇幻想の分野からは離れていた感のある荒俣さんですが、このジャンルの総決算をしておきたいとの言葉も見られ、意気込みが感じられます。
 2巻の収録予定には、ウェイクフィールド、ジョン・メトカーフ、デ・ラ・メア、マリオン・クロフォードなど、まさに怪奇小説の黄金時代の作家たちの名前が挙がっていて、期待が膨らみます。
この記事に対するコメント
まえがきと50ページ以上の作品解説が凄い
「ふくろうの耳」は2009年にkazuou様が同人出版「怪奇幻想短編集」としてコメントしておられますね。短いけれど不思議な読後感です。自分も「仮面」が印象に残りました。昔の貸本の怪奇少女漫画みたいな極彩色でおどろおどろしい感じ。各話の扉絵もぴったりで
さすが荒俣御大と唸ります。作品解説の図版も豊富であと二冊も楽しみです。
【2014/07/27 12:06】 URL | 奈良の亀母 #- [ 編集]

>奈良の亀母さん
『ふくろうの耳』も味のある作品ですね。
『仮面』は、江戸川乱歩風というか楳図かずお風というか、怪奇小説好きにはたまらない雰囲気の作品でした。
相変わらず凝り性の荒俣先生というべきか、丁寧な解説で、怪奇小説アンソロジーなのに「教養」が身についてしまいそうなところが凄いですよね。
【2014/07/27 12:18】 URL | kazuou #- [ 編集]


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Author:kazuou
男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。
主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。
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