秀作の宝庫  小山正『ミステリ映画の大海の中で』

4871985768ミステリ映画の大海の中で (叢書・20世紀の芸術と文学) (叢書20世紀の芸術と文学)
小山 正
アルファベータ 2012-11-03

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 このところ映画づいているので、自然、映画のガイド本を読む機会も増えました。
 中でも圧倒的だったのが、以前紹介した、『映画の生体解剖 ~恐怖と恍惚のシネマガイド~』(稲生平太郎+高橋洋 洋泉社)なのですが、同じぐらい強烈なインパクトを受けたのが、小山正『ミステリ映画の大海の中で』(アルファベータ)です。
 『映画の生体解剖』の方は、ガイドというよりは評論寄りの本なので、映画作品自体の内容がもっと知りたい!という面では、物足りないところがありました。それに対して、『ミステリ映画の大海の中で』は、あくまで映画作品のガイドに徹底しています。
 タイトルに「ミステリ」と入っているので、「ミステリ映画」に絞った内容なのかと思って、ノーマークだったのですが、これはすごい!ものすごい密度と鑑識眼が感じられます。
 本の後半は、『ミステリマガジン』に掲載されたDVD評が、まとめて収録されています。雑誌掲載時には、たまに読んでいて参考にしていました。わずか1ページの紹介文なのですが、どれも要領よくまとめられており、作品紹介のお手本のようなコーナーでした。今回、単行本でまとめて読んでみると、なんという重量感でしょうか。
 メジャー作品ではなく、マイナー作品、それもあくまで「話の面白さ」にこだわったセレクションがなされています。具体的には、監督よりも脚本家重視のセレクションといっていいのでしょうか。早速これをガイドとして、DVDをいくつか買い込みました。
 よほどの映画フリークでもない限り、知らないような映画が山のように取り上げられています。それだけに、大傑作!というよりは、小粒な秀作だったり、怪作だったりといった方がいいような作品が多く取り上げられているようです。
 タイトルにあるように、ミステリ映画がメインですが、SFだったりホラーだったりと、ジャンルもかなり融通無碍、ミステリにしてもちょっと変わったサスペンスやサイコ・スリラーなども紹介されています。その点、ジャンル映画好きの方なら、ミステリ好きに限らず、楽しめると思います。


B00005MFY4スリープウォーカー [DVD]
エムスリイエンタテインメント 2001-08-25

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 例えば、『スリープウォーカー』(ヨハン・リューネボルグ監督 スウェーデン)というサスペンス作品。夢遊病に悩む男が、目を覚ますと横で寝ていたはずの妻が消えており、大量の血痕だけが残っていた…という話です。自分が殺してしまったのではないかと悩む男は、警察に追われながら、妻の居所を探すのですが、これがひねりにひねる。ひねりすぎて正直、わけがわからなくなってしまうという怪作です。


B0006TWU8Kボディスナッチ [DVD]
日活 2005-02-10

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 また、『ボディスナッチ』(フランソワ・ハンス 監督 フランス)は、事故で耳に障害を負ってしまった、元ストリップダンサーが主人公です。誠実な夫とかわいい息子にかこまれて、幸せな生活を送る主人公ですが、造園技師だと言っていた夫が、実は医師だったことがわかり、夫に対する疑念がわきあがっていきます…。ボワロー、ナルスジャックの『私のすべては一人の男』を思わせる、トンデモスリラーです。


B0006FH0D4ザ・サイト [DVD]
ポール・W・S・アンダーソン
パンド 2005-01-07

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B0098X0TQ0イベント・ホライゾン デジタル・リマスター版 [DVD]
パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン 2012-11-22

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B000JVRTEAザ・ダーク [DVD]
サイモン・マギン
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント 2007-01-01

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B004FEEZGMパンドラム [DVD]
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント 2011-02-23

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 この本を読んで、個人的にいちばん気になったのは、ポール・W・S・アンダーソンという人。『バイオハザード』とか『エイリアンVSプレデター』の監督をしている人ですね。メジャーな娯楽大作をとる監督という認識しかなかったのですが、この本で、ほかにも面白い作品を作っているという紹介がなされていて、いくつか観てみました。
 これが好みにはまる作品ばかりでビックリです。霊が見える男が連続殺人犯を追うミステリ『ザ・サイト』、宇宙探検ものとクトゥルーものとをくっつけたようなSFホラー『イベント・ホライゾン』、あの世の描写が冴え渡るオカルトスリラー『ザ・ダーク』、世代間宇宙船ものをひねったSF『パンドラム』など。
 正直、テーマとしては新奇さには欠けるきらいはありますが、見せ方とリミックスの仕方が上手いのもあって、娯楽作品としては、どれも十分に楽しませてくれます。
 とくに、『イベント・ホライゾン』『パンドラム』は、ともに閉鎖された宇宙船内部を舞台にした作品なのですが、それぞれ工夫が凝らされていて飽きさせません。
 消息を絶った宇宙船の行方、乗組員はなぜ消えたのか?操縦士がかかった記憶喪失症の理由とは? そしてタイムリミットによるサスペンスも相まって、SFやホラー好きにはたまらない作品になっています。この手の作品が好きな方には、ぜひオススメしておきます。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

この記事に対するコメント
イベントホライズンは自分にとって神映画です!
「イベントホライズン」「パンドラム」大大大好きです。
周り全部真空という逃げ場無しの閉鎖空間で、地獄絵図が展開いたします。
どちらも宇宙船や機器などのガジェットがよく作り込まれていてSFファンも
納得の映像です。
【2014/06/09 11:24】 URL | 奈良の亀母 #- [ 編集]


そんなに面白い本だったんですね。図書館で予約しちゃいました。
もっともこの手の本は持っていないと役に立たないのですが。
とりあえず借りることに。

DVDは手をだすととんでもないことになりそうで・・
【2014/06/09 22:11】 URL | fontanka #- [ 編集]

>奈良の亀母さん
『イベント・ホライゾン』と『パンドラム』、ネットの感想を見ると、目新しさがない、みたいな評価が多いですね。
むしろ、テーマやガジェットとしてはありふれたものを組合わせて、あれだけ面白い映画が作れる、というところに驚きます。
【2014/06/10 21:24】 URL | kazuou #- [ 編集]

>fontankaさん
これは面白い本でした。とにかく読んでいると、紹介されている作品が観たくなる、という点で、ガイド本としては非常な良書だと思います。

DVDも最近はリーズナブルな値段になってきているのもあって、大分買い込んでしまいました。本だけでなく、DVDも積んである状態です…。
【2014/06/10 21:27】 URL | kazuou #- [ 編集]


興味を持ったので近所の中古ビデオ店に行ったら「イベント・ホライゾン」と「スリープ・ウォーカー」があったので買ってきました。楽しみ。ご紹介ありがとうございます。
【2014/07/12 21:22】 URL | オリヒロ #- [ 編集]

>オリヒロさん
『イベント・ホライゾン』は文句なく面白いので、オススメできるのですが、『スリープ・ウォーカー』はかなり癖のある映画なので「注意して」(というのもおかしいですが)観てもらったほうがいいかもしれません。
【2014/07/12 23:10】 URL | kazuou #- [ 編集]


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Author:kazuou
男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。
主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。
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