ホラー映画ガイドの愉しみ

別冊映画秘宝怖いテレビ (洋泉社MOOK 別冊映画秘宝) 別冊映画秘宝80年代悪趣味ビデオ学入門! (洋泉社MOOK 別冊映画秘宝) プロが選んだはじめてのホラー映画―塩田時敏ベストセレクション50 ホラーの逆襲―ジョン・カーペンターと絶対恐怖監督たち スプラッターカーニバル―悪夢映画流血編 (Million mook―新映画宝庫) イタリアン・ホラーの密かな愉しみ―血ぬられたハッタリの美学
 映画のガイドブックというのは昔からいろいろありますが、ホラー映画に特化したガイド本というのは、以外に少ないように思います。
 そこで、僕がお世話になったホラー映画ガイド本をいくつか紹介していきたいと思います。

 まず、近年出版されていて手に入りやすいものから。

 映画秘宝から出ているムックはどれも面白く読めますね。
 いちばんのオススメは『怖いテレビ』(洋泉社)。「怖い」テレビ番組やシリーズを紹介したガイドです。
 最近の連続ドラマシリーズの紹介に始まって、『世にも不思議な物語』『事件記者コルチャック』『悪魔の異形』『スパニッシュ・ホラー・プロジェクト』など、過去の名作アンソロジードラマにも触れています。『悪魔の異形』全話ガイドなんて貴重ですね。幻のカルト作品として知られる『シェラ・デ・コブレの幽霊』についての記事も興味深く読めます。

 『80年代悪趣味ビデオ学入門!』と続編『80年代悪趣味ビデオ学の逆襲』は、主に80年代にリリースされたB級ビデオ作品についてのガイドです。バブルの恩恵で出せたような、どうしようもない駄作についても、どこがどうダメか、丁寧に書かれているところが凄いです。あまり観たくなるような作品は少ないのですが、純粋に読んで面白いガイド本といえるかも。最近DVD化された『バクステール』とか『ベイビー・ブラッド』なんかは、このシリーズの恩恵かもしれません。

 『怪奇・怨霊・宇宙人 衝撃!超常現象映画の世界』は、超自然を扱った映画についてのガイド、『ゾンビ映画大マガジン』は、1冊まるごとゾンビを扱っています。

 『ショック!残酷!切株映画の世界』『ショック! 残酷! 切株映画の逆襲』は、人体破壊描写に絞り込んで紹介するというユニークなテーマを扱っています。「人体破壊」がテーマなので、狭義のホラー作品だけでなくて、いわゆるメジャー大作や一般映画なども取り上げられているのが特徴。

 上記のようなテーマ別のガイドだけでなく、オーソドックスかつ初心者向けの≪映画の必修科目≫というシリーズも出ています。各ジャンルの名作を一通り概観し、ジャンルの歴史もわかるという、丁寧なつくりの一般向けガイドです。中では、SF映画を扱った『異次元SF映画100』、ファンタジーを扱った『狂烈ファンタジー映画100』が面白いですね。

 さて、ここからはホラー映画に絞ったガイド本を紹介していきます。

 もっともオーソドックスなガイドとしては、塩田時敏『プロが選んだはじめてのホラー映画―塩田時敏ベストセレクション50』(近代映画社)があります。本当に基本的な名作を取り上げています。

 同じく初心者向けガイドですが、かなりマニアックなタイトルも紛れ込ませているのが、永田よしのり『カルト映画館 ホラー』(教養文庫)です。個人的にはすごくお世話になった本で、最近DVDで再発売されたカルト作『ペーパーハウス 霊少女』なんてタイトルもこの本で知りました。同著者は、教養文庫で一連の映画ガイド本を出しており、他にも「アクション」「ミステリー&サスペンス」「SF」などがあり、どれも基本を押さえたガイドで参考になります。教養文庫がなくなってしまった関係で、手に入りにくくなっていますが、いいガイド本だと思います。

 『荒木飛呂彦の奇妙なホラー映画論』(集英社新書)は、漫画家の荒木飛呂彦が選んだホラー映画を紹介する本です。メジャー映画ばかりで物足りないのと、作品紹介もそんなに詳細ではないので、ガイドとしては弱いですね。確かに著者がホラー好きなのはわかるのですが、荒木飛呂彦のファンでないと楽しめないかも。

 ジョン・カーペンターを中心に、ジョージ・A・ロメロ、ダリオ・アルジェント、ルチオ・フルチ、スチュアート・ゴードンなど、代表的なホラー映画の監督および作品をとりあげたガイド本が、『ホラーの逆襲―ジョン・カーペンターと絶対恐怖監督たち』(鷲巣義明ほか フィルムアート社)です。1998年発行と、すでに年月が大分経ってしまっているので、監督たちのフィルモグラフィーは古くなってしまっていますが、今読んでも面白く、役に立つガイド本です。作品単体のガイドとしても参考になるし、監督の作風やテーマなどについても勉強になります。巻末の「見たくて見たくてたまらない絶対ホラー映画13」も、見識にあふれたセレクションです。

 1冊に収められた作品の量という点では、これにかなう本はないだろう、というのが『スプラッターカーニバル―悪夢映画流血編』(大洋図書)です。章ごとにテーマ分けされており、「ゾンビ」「吸血鬼」「悪魔」「怨霊」などのテーマが挙げられています。「スプラッター」とはいいつつ、スプラッター映画だけでなく、ホラー映画全般についてのガイドになっています。1930~40年代ごろの古典作品から、本書が発刊された2000年ごろの最新作品(具体的には『ファイナル・デステネーション』あたり)まで、全年代にわたってホラー作品がたっぷり紹介されています。
 章ごとに、歴史的な概観に始まり、代表的な作品のガイド、そして間にコラムや監督の紹介ページがはさまるなど、情報量としてはすさまじいの一言。名作と言われる作品から、どうしようもない駄作まで、幅広く紹介がされています。
 日本のホラー映画についても、「ジャパニーズカルト」として、一章が割かれており、目配りも広いです。ホラー映画ファンなら、ぜひ手元に置いておきたいガイドですね。

 イタリアン・ホラーに絞って解説したガイド本が、西村安弘ほか『イタリアン・ホラーの密かな愉しみ―血ぬられたハッタリの美学』(フィルムアート社)。評論的な要素が強くて、作品ガイドという意味ではちょっと物足りない点があります。

 同じくイタリアのどぎつさを優先したスリラー、いわゆる≪ジャッロ≫映画のガイド『ジャッロ映画の世界』(安井 泰平 彩流社)は、ものすごい労作だと思いますが、日本で見れる作品が少ないのが玉に瑕ですね。
 
 小山正『ミステリ映画の大海の中で』(アルファベータ)も、メインはミステリ映画ですが、ところどころホラー作品についても筆が割かれています。非常に面白いガイドなので、この本については、改めて記事を書きたいと思います。
この記事に対するコメント
映画の本(^〇^)/
『カルト映画館 ホラー』(教養文庫)、『荒木飛呂彦の奇妙なホラー映画論』(集英社新書)、
『プロが選んだはじめてのホラー映画―塩田時敏ベストセレクション50』(近代映画社)、
『ホラーの逆襲―ジョン・カーペンターと絶対恐怖監督たち』(鷲巣義明ほか フィルムアート社)を持っています。
特に『カルト映画館 ホラー』(教養文庫)には色々と教えてもらいました。大概は録画したり、購入したりしていたのですが、かなりマニアックな作品がBS、CSで一般の作品に紛れてサラリと放送される実態をこの本で学びました。DVD化にもなっていない物を本当にサラリとー…おかげで始終アンテナを張っていないといけないのです^^;
『怖いテレビ』(洋泉社)は、かなり迷っていました。ハズレだったら困ると思っていましたが、kazuouさんがオススメならば安心です❤まして『シェラ・デ・コブレの幽霊』について語っているなら、ぜひ読みたい!!!!
『シェラ・デ・コブレの幽霊』を神戸の上映会で観た方が感想を書いておられました。いや~ますます、死ぬまでに一度は観たいと思いましたよw
【2014/05/13 01:56】 URL | みん #- [ 編集]

>みんさん
『カルト映画館 ホラー』は、名著ですよね。作品解説も細やかだし、見てみたいなと思わせるという点で、ガイド本としては成功だと思います。

『シェラ・デ・コブレの幽霊』は、僕も一度見てみたいです。上映会のレビューを読むと、作品としてはともかく、幽霊の造形がすごいらしいですね。DVD化も目指しているとか。
【2014/05/13 19:47】 URL | kazuou #- [ 編集]


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男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主催。
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