女=悪女?  ピエール・ヴトロン監督『世にも不思議な物語2』
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 ちょっと珍しいビデオを見る機会があったので、紹介しましょう。ピエール・ヴトロン監督『世にも不思議な物語2』。フランス製のオムニバス映画です。タイトルで分かると思いますが「フランス版トワイライトゾーン」みたいな謳い文句を掲げています。
 全話原作付きなのですが、なかなか興味深いラインナップ。エミール・ゾラ、ギョーム・アポリネール、フランソワ・コペ、テオフィル・ゴーチェ、ジャン・コーの幻想小説が原作となっています。ジャン・コー以外はわりと有名な作家だと思います。
 タイトルに「2」とあるので、他にもシリーズが出ているのかと思ったら出てないようです。日本の発売元が勝手に「2」をつけてしまったみたいですね。原題にも「2」は見あたりませんし。詳細をご存じの方がおられたら、ご教示お願いします。
 さて内容紹介に入りましょう。オムニバス映画らしく、まず物語の大枠として、現代の女優が台本を読んでいるというパートが現れます。この台本に、それぞれのエピソードが記されているという趣向です。ちなみに原作はジャン・コー以外、19世紀の作家なのですが、物語の方も現代を舞台に改変したものではなく、19世紀が舞台になっています。

 第一話はエミール・ゾラの原作。こんな話です。
 初老の夫と年の離れた若い妻がアパートに住んでいます。夜、妻の悲鳴が響き渡ります。近所の連中は驚き、家にかけつけてきます。何でもないと言う妻に対し、人々は夫が虐待しているのではないかと考えます。夫婦の上の階に住む美男子の医師がやってきて、自分の部屋で治療をすると言ってドアを閉めます。しかし妻の悲鳴は狂言で、その医師と会うために仕組んだ芝居でした。
 そしてまた別の夜、妻は鞭で自分の体を痛めつけ、悲鳴をあげます。人々は警察に通報し、夫は逮捕されてしまうのですが…。

 第二話はアポリネール『アムステルダムの船員』(窪田範彌訳 福武文庫『アポリネール傑作短篇集』所収)が原作。
 ジャワから帰ってきたアムステルダム出身の水夫は、初老の紳士から声をかけられます。水夫の肩に止まっているオウムを買おうというのです。家に鳥籠があるので、一緒に来てくれといわれ、水夫はついていきます。
 家に入ったものの、水夫は突然ドアを閉められ、閉じ込められてしまいます。ドアに駆け寄ると、のぞき窓からピストルが! 言うとおりにしないと射殺すると脅かされた水夫はうなずきます。まず引き出しから拳銃を取り出させた紳士は、そのまま後ろのカーテンを開けろと指示します。その中には、猿轡をかまされ縛られた若い女性が転がっていました。
 その女性は紳士の妻でした。姦通を犯した妻を殺したいが、彼女を愛している自分には殺せない。今から10数えるうちにお前のピストルでその女を殺さなければ、お前が死ぬことになる…。

 第三話はフランソワ・コペ原作。
 カジノで負け続け、一文無しになった若い男が主人公。そこに太った男が現れ、金を貸してくれないかと頼みます。彼は、今夜十二時ぴったりにルーレットに17番が出ると、確信ありげに話します。主人公は相手にせず、男をやり過ごして外に出ます。ピストル自殺しようとしたそのとき、道ばたで眠っている若い娼婦の姿が眼につきます。娼婦の足下に金貨が落ちており、それを見た主人公は太った男の言葉を思い出し、あわててカジノに駆け戻ります。
 男の言葉通り、ルーレットの数字は的中し、その後も当たりを出し続け大もうけします。そこへ現れた太った男は、先ほどの娘のもとへ行ってやらなければならない、と言うのですが…。

 第四話は、ゴーチェ『オムパレー』(店村新次/小柳保義訳 創土社『ゴーチエ幻想作品集』所収)が原作です。
 富裕だが強欲な貴族が臨終の床にあります。そこへ呼び寄せた甥が現れます。伯父は、女はみな悪魔だとわめきちらし、甥だけを側に残します。ワインが飲みたいという伯父に対し、甥は鍵をもらいワインをとりに行くのですが、その部屋は伯父の妻が死んで以来開いたことのないという部屋でした。部屋の壁には一面にヘラクレスとオンファレを描いたタピスリーがかかっていますが、甥はオンファレの美しさに目をひかれます。伯父によれば、それは伯父と妻とを描いたものでした。
 伯父は甥にふと秘密をもらします。実は妻は自分が殺させた。姦通した妻を許せなかったのだ。甥は驚きますが、タピスリーに描かれた女が気になって、再び部屋に向かいます。タピスリーの女の目からはなんと涙が…。

 最終話は、ジャン・コー原作。ここでは、再び大枠の物語、現代に戻ります。
 女優は、仕事の後、見知らぬ青年に銃を突きつけられます。女優を強姦するという青年に、その理由を訊ねますが、答えてくれません。女優のファンでもないようです。理由のわからぬまま、青年の言うなりになる女優でしたが、シャワーをあびさせてくれと言い出します。
 青年の気がゆるんだ矢先、女優は青年を閉じ込めることに成功します。その直後、女優の恋人がやってきます。相手がまだ子供ゆえ、事を荒立てたくない、という女優にしたがって、恋人は姿を隠します。
 銃と身分証をよこせば、大人しく見逃してやるという言葉にしたがい、青年はドアの下から身分証を差し出します。その身分証を見た恋人は驚きます…。

 非常に退廃的でアンニュイな雰囲気が漂う作品です。各エピソードは基本的に男女の愛をめぐる幻想物語。舞台は大枠の物語を除いて19世紀に設定されていますが、セットもとくに豪華というわけではありません。例えば第二話の水夫が登場する港に至っては安っぽい書き割りのような背景なのですが、それが逆に幻想的な雰囲気を醸し出しています。
 舞台が19世紀だからというわけでもないのですが、物語の展開もかなり遅く、アメリカ映画を見慣れた方なら、イライラするかも。
 そして、すべてのエピソードに共通するテーマは「女の恐ろしさ」です。どの物語でも主人公は、女のために破滅するのです。そのテーマを強めている要素として注目したいのは、枠物語の趣向です。大枠に登場する女優が他の全てのエピソードでもヒロインを演じているのです。各エピソードのつなぎ目も非常にうまく出来ています。とくに、第四話自体が、実は大枠の物語の女優が演じていた芝居だった、というメタフィクション的な趣向はなかなかです。他にも細かい仕掛けがたくさんあって、例えば第二話に登場した紳士とオウムが第三話の酒場にさりげなく登場します。
 派手さはありませんが、テーマと趣向が実にうまく組合わさった佳作だと思います。この作品、話題にされているのを全然見たことがないのですが、捨てがたい味がありますね。
 ちなみにゴーチェとアポリネールの原作小説を読み直してみたのですが、どちらも作者の作品としては、地味な部類のもので、なぜこれを原作に選んだのかは、ちょっとわかりかねます。そもそもゴーチェの幻想小説はどれも大体女がからんでくるので、もっと他にいい原作があったと思うのですが。例えば『死女の恋』あたりでもよかったのではないかと思ってしまいました。

テーマ:★海外映画★ - ジャンル:映画

この記事に対するコメント
もしかすると…
『世にも怪奇な物語』の続編と錯覚させて売り上げを伸ばそうとする魂胆だったのでは?
【2006/03/31 12:26】 URL | 迷跡 #- [ 編集]

そんな感じですねえ
まあ、これは明らかにタイトルを混同させようとする意図がありありですね。ダリオ・アルジェントの『サスペリア』と『サスペリア2』と似たような例でしょうか。
でも作品自体がかなり拾いものだったので満足です。英米以外のオムニバスドラマってあんまりないので、けっこう貴重ですよね。もっと他の国のオムニバスも見てみたい気がします。ドイツなんか怪奇小説の本場だし、そういう作品もありそうな気がするんですが。
【2006/03/31 17:31】 URL | kazuou #- [ 編集]


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男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。
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