ホラー映画のことなど
 『映画の生体解剖 ~恐怖と恍惚のシネマガイド~』(稲生平太郎+高橋洋 洋泉社)を読んで以来、映画づいてしまい、このところ映画をよく観ています。といっても、ほとんどホラー映画ですが。
 その中から、いくつかご紹介します。



B007AD0YME怪人カリガリ博士 [DVD]
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン 2012-05-25

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『怪人カリガリ博士』(ロジャー・ケイ監督 1961年 アメリカ)
 自動車事故を故障させてしまった若い女性ジェーンは、近くの屋敷に助けを求めます。カリガリと名乗るハンサムな男は快く迎え入れ、屋敷に泊まることを勧めます。カリガリに惹かれはじめたジェーンでしたが、なぜか彼はジェーンを屋敷に閉じ込め、出そうとしません。
 ほかにも客が何人も滞在しているのに、ジェーンが脱出するのに手を貸してくれる人間はおらず、どうやら客たちはカリガリには逆らえないようなのです…。
 ロバート・ブロック脚本による不条理スリラー作品です。理由もわからずに屋敷に閉じ込められてしまう女性の不安を描いている、のでしょうが、正直ちょっと退屈なのは否めません。ただラストはブロックらしいオチがあって、かなり驚かされはするのですが、そこまでがかなり長いのが弱点。オムニバスの1話ぐらいの尺だったら、傑作になったと思うのですが。



B008U2H0XAレガシー [DVD]
パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン 2012-11-08

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『レガシー』(リチャード・マーカンド監督 1978年 アメリカ)
 仕事の依頼を受けてロンドンに向かった建築家マギーは、途中で自動車事故に会いますが、それをきっかけに、ある豪華な屋敷に招かれることになります。
 屋敷には、それぞれの業界で栄達をとげた人間が集まっており、死期の迫ったある人物の遺産相続に備えているというのです。そしてマギーもまた、相続者の一人であると…。
 やがて、客たちが一人一人と謎の死をとげていきますが…。
 キャサリン・ロス主演のオカルト・ミステリー映画です。ムードは悪くないのですが、肝心のお話が少々古臭いのが難点です。



B004NSW18O悪を呼ぶ少年 [DVD]
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン 2011-05-20

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『悪を呼ぶ少年』(ロバート・マリガン監督  1972年 アメリカ)
 夫の死をきっかけとして寝込むようになってしまったアレクサンドラ。息子であるナイルズは、母親を元気付けようとしますが、双子の兄ホランドはいたずらを繰り返します。
 ある日ナイルズが父親の形見の指輪を見ているところを、従兄に見つかってしまいます。指輪は父親とともに埋葬されたはずだというのです。やがて従兄が不慮の事故で死んだのを始め、回りの人間たちが次々と死んでいきます…。
 1930年代のアメリカを舞台にした、トマス・トライオン原作によるサイコ・スリラー映画です。題材が双子だけに、なんとなく内容は予想はつくのですが、この作品のキモは、むしろそこにはありません。
 純粋なナイルズと悪魔的なホランド、その対照性が見所でしょう。後半、事故にあった母親と接するナイルズが無邪気に本を読んであげようとするシーンなど、見事の一言につきます。ホラー映画史でも名作に挙げられる作品ですが、確かにそれだけのことはある作品だと思います。



B0078J5RRCミッドナイト・ミート・トレイン [DVD]
角川書店 2012-03-15

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『ミッドナイト・ミート・トレイン』(北村龍平監督 2008年 アメリカ)
 写真家の青年レオンは、ふとしたきっかけからある男を尾行することになります。その男の正体は、世間を騒がせていた地下鉄内連続殺人事件の犯人だったのです。淡々と殺人を繰り返す男の目的は何なのか…?
 クライヴ・バーカーの同題の短編を原作とした映画です。バーカー原作作品って、あんまり成功したものがないような気がするのですが、これはかなり成功している部類ではないかと思います。
 もともと話のプロット自体はシンプルなので、結局、ヴァイオレンス描写的な部分が上手く描けるかどうか、というのがこの作品のキモだと思いますが、その点北村龍平監督のそれは豪快なもので、見ごたえがあります。
 最後のオチというか最終シーンもほぼ原作を踏襲しているところも、原作ファンには嬉しいところです。



B009CU1VN4ミスター・ノーバディ [DVD]
角川書店 2012-10-25

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『ミスター・ノーバディ』(ジャコ・ヴァン・ドルマル監督 2009年 フランス/ドイツ/ベルギー/カナダ)
 医学が発達し、不老不死の世界となった近未来が舞台。その世界で、最後の「死を迎える人」となった世界で最高齢の老人が、自らの過去を振り返り始めます。
 老人ニモは、自分が選んだ女性、あるいは選んだかもしれない3人の女性との人生を語り始めますが…。
 人生の分岐点を1つだけ描くのではなく、分岐した結果をいくつも描き出してしまおうという、何ともユニークな試みの映画です。メインとなるのは、幼いころに出会った3人の少女、それぞれと結ばれたとき、ニモの人生はどうなるのか?というのを、重層的に描き出していきます。
 幸せになる人生もあれば、不幸になる人生もある。人生の複雑さをこのような形で描く手法があったとは驚きです。これは間違いなく、将来名作として語り継がれるようになる作品でしょう。



B00GWDG9WWビザンチウム [DVD]
ポニーキャニオン 2014-03-04

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『ビザンチウム』(ニール・ジョーダン 2012年 イギリス/アイルランド)
 ある日、海辺の街に現れた少女エレノアと姉のクララ。クララは街で出会った青年をたぶらかし、彼の所有する古びたホテルを娼館に変えてしまいます。一方、エレノアは、難病で苦しむ青年と出会い、彼に惹かれてゆきます。
 エレノアとクララには誰にもいえない秘密がありました。二人は人の血を吸わねばならない吸血鬼であり、すでに数百年も生きているというのです。やがて二人を狙う組織の者が現れますが…。
 人の血を吸うことに罪悪感を覚える純粋なエレノアと、生きるためには他人を殺してもしょうがないと考えるクララの対比が、コントラストをなしています。孤独にさいなまれてきたエレノアが共に生きたいと青年を愛し始めたとき、それを許さないクララがとった行動とは…?
 モンスターとしてではなく、人間として生きたいと考える吸血鬼の物語です。この作品では、不老不死は、恩寵というよりは難病として捉えられています。静謐な空気を持った佳作です。



B00A2HRQ3K恐怖ノ黒電話 [DVD]
松竹 2013-02-07

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『恐怖ノ黒電話』(マシュー・パークヒル監督 2011年 イギリス)
 環境を変えたいと、アパートに引っ越してきたマリー。その部屋にはすでに回線のつながった、古い黒電話が置いてありました。ある日かかってきた電話は、知らない女性からのものでした。間違い電話だと思ったものの、話し相手になってほしいとの言葉にマリーは、彼女の相手をはじめます。
 話しているうちに、その女性ローズは、1970年代に生きていることがわかります。半信半疑のマリーでしたが、男との仲に苦しんでいるというローズの相談に乗ってやります。何の気なしにもらしたマリーの言葉から、ローズはとんでもない行動に出てしまいます。
 そして、ローズはマリーに対し、異常な執着を見せ始めます。過去に生きているというローズの言葉は本当なのでしょうか? やがて不可解な現象がマリーを襲います…。
 今回いちばん楽しんだのがこの作品です。「過去からの殺人鬼」という、なんともユニークな設定のホラー作品です。直接的に襲うのではなく、間接的な手段で主人公を苦しめるのですが、その攻撃の仕方がとんでもない。SF的な要素を非常に上手く使っています。


 さて、『映画の生体解剖』を読んでいて、いちばん気になった作品が、『狂恋』(カール・フロイント監督 1935年 アメリカ)でした。原作が、フランスの作家モーリス・ルナール、脚本がガイ・エンドアという、怪奇小説ファンとしては、気になる名前なのです。
 モーリス・ルナールは、翻訳はおそらく『フランス幻想文学傑作選3』に収録された『女歌手』『リズロ氏の奇妙な思い出』ぐらいしかないと思うのですが、どちらも怪奇味の強い作品で、面白い作品だったので、印象に残っています。
 ガイ・エンドアは、ジャンル専門作家ではありませんが、名作怪奇小説『パリの狼男』の作者ですね。
 映画のあらすじも調べると、話も面白そうです。事故にあい、両手を切断することになったピアニストが、代わりに死刑囚の腕を移植することになり、その直後に殺人が発生する、という物語だそうです。
 観てみたいけれど、ソフト化もされていないみたいだし、と思っていた矢先、嬉しいニュースが!
 『アメリカンホラーフィルム ベスト・コレクション DVD-BOX vol.1』が7月に発売され、その中に『狂恋』も含まれるというのです。ほかにもW・F・ハーヴィー原作の『五本指の野獣』なんてのも含まれるらしいので、購入しようかどうか考え中です。
この記事に対するコメント
素晴らしいセレクト
「レガシー」「悪を呼ぶ少年」「恐怖ノ黒電話」はDVD持ってます。が、未見でしたので早く見たい!と一人で喜んでおりました。
「怪人カリガリ博士」は、R・ブロックの作品なのですね。
サイレント映画の「カリガリ博士」とは内容も全然違うので、ブロックのオリジナルという事はわかるんですが、なぜ『カリガリ博士』なんだろうと。
ブロックの大ファンなので、この作品は探さねば!!
「ミッドナイト・ミート・トレイン」の監督は日本人で驚きました。
クライヴ・バーカーの小説は、あまりに視覚的な表現が秀逸で、目の前に色彩が浮かぶので血の本も途中で読むのを断念してしまった経緯があります。
映画で観るのは「ヘルレイザー」も傑作だったので、大丈夫だと思います。
「アメリカンホラーフィルム ベスト・コレクション DVD-BOX vol.1」ほしいな~
ハーヴェイの作品もあるなら、やっぱりほしい。
ホラー映画ジャンルは、根強いファンがいるので大ヒットしなくても予定した数はさばけるというおいしいジャンルかもしれません。
kazuouさんを映画ブームに惹きこむ『映画の生体解剖 ~恐怖と恍惚のシネマガイド~』恐るべし。
【2014/04/22 01:31】 URL | みん #- [ 編集]

>みんさん
『怪人カリガリ博士』、ロバート・ブロック脚本と聞いて、観てみました。オチは面白いのですが、そこまでの過程にキレがない感じでした。

『ミッドナイト・ミート・トレイン』は、なかなか面白かったです。バーカーの映画化では『血の本』なんかも面白かったですよ。

『アメリカンホラーフィルム ベスト・コレクション』は、かなり古い時代の作品を集めているみたいですね。個人的にはとりあえず『狂恋』が見てみたいです。ハーヴィー原作の『五本指の野獣』も気になるし。

【2014/04/23 19:49】 URL | kazuou #- [ 編集]


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Author:kazuou
男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主催。
主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。
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