最近読んだ本

4336057605ボリバル侯爵
レオ・ペルッツ 垂野創一郎
国書刊行会 2013-11-22

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 ナポレオン麾下として、スペインに侵攻したドイツ・ナッサウ連隊。しかし、占領下のラ・ビスバル市では、ゲリラによる反乱活動の噂が耐えませんでした。そしてその中心にいるのは、怪しいうわさの耐えない怪人物ボリバル侯爵。青年将校たちは、不可思議な運命に巻き込まれてしまいます…。
 これは素晴らしい。謎の侯爵、さまよえるユダヤ人、不可思議な運命。緊迫した政治情勢のなか、追い詰められていく主人公たち。サスペンスあふれる中にも、ユーモラスな場面も忘れないところがにくいですね。先に出た 『夜毎に石の橋の下で』とは、また違った味わいの作品です。どちらかと言えば 『第三の魔弾』に近い味わいですね。



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ぼくが死んだ朝 (扶桑社ミステリー)
ロバート・コーミア Robert Cormier
扶桑社 1991-09

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 幼い子供たちが乗るスクールバスをバスジャックした某国のテロリストたち。たまたま運転手の代わりを務めていた少女ケイトは、まだ少年といっていいテロリストの一人ミロに、犯行をやめるよう説得を続けます。一方、政府の秘密機関の長官を務める准将は、犯人との交渉に自分の息子ベンを使おうと考えますが…。
 バスジャックを巡るサスペンス小説です。ヤングアダルト向けに書かれたそうですが、その内容は実にハード。子供も容赦なく殺されてしまいますし、それ以上に残酷なのが、主人公ベンの運命。読後感も非常にやるせないものですが、傑作といっていい作品でしょう。



4480804501注文の多い注文書 (単行本)
小川 洋子 クラフトエヴィング商會
筑摩書房 2014-01-23

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 久々となる、クラフトエヴィング商會の新刊は小川洋子との共作でした。小説中に登場する架空の「もの」を探してほしい、という依頼に答えて「ないもの」を取り出してみせるという、じつにクラフトエヴィング商會らしい作品です。
 「肺に咲く睡蓮」や「バナナフィッシュの耳石」など、小川洋子が提出してみせるテーマが、クラフトエヴィング商會の味わいとじつにマッチしています。コラボレーションの見本ともいうべき作品集でしょう。



4582836410星を賣る店
クラフト・エヴィング商會
平凡社 2014-01-27

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 こちらは、クラフトエヴィング商會の展覧会の公式図録として作られた作品集です。 『どこかにいってしまったものたち』 『クラウド・コレクター』で見せてくれた、架空の商品の紹介のほかに、クラフトエヴィング商會が装丁した本のカタログにもなっています。このユニットのファンならマストバイの図録ですね。


次はコミックからいくつか。


4778322215バベルの図書館 (FX COMICS)
つばな
太田出版 2014-01-22

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 紙に触っただけで、そこに書かれた全ての文章を読む力を持つ少年と、天使の存在を信じる少女が出会ったときに起こったのは悲劇なのか…?
 つばな作品には珍しい、シリアスなトーンの物語です。結末は賛否両論分かれるかも。



4396765959雪女幻想 みちゆき篇 (フィールコミックス) (Feelコミックス)
安堂維子里
祥伝社 2014-01-08

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 前作の 『Silent Blue』が、正直微妙な作品だったのですが、今回はなかなか。永遠の愛をもとめて遍歴を続ける、現代の雪女を描いた物語です。オムニバスになっており、男に結局裏切られ続ける主人公がまた旅に出る…というテーマで描かれています。主人公を追いかけ続ける男や、主人公の姉なども登場し、物語全体の引きも十分。続刊もあるようですが、期待できそうです。


4396460473夜とコンクリート
町田 洋
祥伝社 2014-02-03

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 デビュー短編集 『惑星9の休日』が素晴らしかった町田洋の第二作品集です。描かれたのは、こちらの方が古いようですが、すでに作風として完成されているのに驚かされます。
 建物の声を聞くことのできる青年と出会った建築士の物語『夜とコンクリート』、何十年も前に失踪した友人を救うために、別の世界から来たという老人に協力することになった青年とその仲間を描く『夏休みの町』、空想の友人を持つ少女が、現実で始めて友人になった男は不思議な能力を持っていた…という『青いサイダー』、青春スケッチ風の『発泡酒』の4編が収められています。
 『夜とコンクリート』の味わいも良いのですが、なんと言っても『夏休みの町』『青いサイダー』が素晴らしいです。とくに『夏休みの町』は、失踪した老人の友人の物語が、主人公の物語と一体となるクライマックスが、じつに味わい深い。オススメの作品集です。
この記事に対するコメント
クラフト・エヴィング商会
図書館の新刊コーナーで見つけて借りました。
おっしゃる通り、文章とクラフトが相乗効果で世界観を紡いでいます。
「クラウドコレクター」に夢中になりましたが、醒めれば消えてしまう夢のようで
もっと観たい見たいと飢餓感がつのります。深夜のみ開館する軽食つきの
図書館の話も良かったなあ。あんな図書館があったら毎日通うのに。
【2014/02/10 11:51】 URL | 奈良の亀母 #- [ 編集]


『どこかにいってしまったものたち』とか、初期の作品にあった圧倒されるような作品が近年少なくなったなあと思っていたのですが、考えたら、あれだけの架空の世界観を作るのには、ものすごいエネルギーが要るんでしょうね。
その意味では、近年の作品は「さっぱりした」ものが多いのですが、これはこれで魅力的な作品です。『注文の多い注文書』も、そうした面で軽やかで楽しい作品でした。
【2014/02/11 14:28】 URL | kazuou #- [ 編集]

夜とコンクリート
「夏休みの町」が良かったです。ロアルド・ダールの一編を思い出しました。
静かな作風ですが、コマツシンヤ先生とは異なるベクトルですね。
「青いサイダー」は全然関係無いのにコマツ先生の「8月のソーダ水」が
頭に浮かんできてしまいました。
【2014/02/28 15:04】 URL | 奈良の亀母 #- [ 編集]

苦味
町田洋作品は、「苦味」がありますよね。ファンタスティックな装いの中にも、現実のほろ苦さが見えるというか…。個人的に似ていると感じたのは、坂田靖子作品でした。
【2014/03/02 08:01】 URL | kazuou #- [ 編集]

第三の魔弾
紹介のあった中で一番気を引かれたのは、「ぼくが死んだ朝」と「夜とコンクリート」でしたが (「ぼくが・・」の方は結構昔の刊行なんですね)、「ボリバル侯爵」はどんなところが面白いのかなとあまりピンとこないまま調べていたら、紹介文に出て来た『第三の魔弾』が非常に面白そうだと今更のように気付きました。
ペルッツは実は結構昔の作家なのだということも今更気付きました・・・(「夜毎に・・」は、そんなことは意識せず楽しめたので)

昔は神田の古書店を巡れば、「世界幻想文学大系」はどこか数件でひと揃えあった記憶がありますが、最近は行ってもいないのでどうなっているか・・・ 今手に入るかも分かりませんが、今読んでみたい作品の1つになっています。
ただ、ボリバル伯爵も同様に楽しめるのなら、こちらを手にしても楽しめるかなという気にもなってはいますが。

クラフト・エヴィング商会については、他作品に提供しているビジュアルを高く買っている分、一度読んだ自身の作品には物足りなさのようなものがあって、その後は手に取っていないのですが、もしかしたら彼らの最高作を読んでいないだけなのかもしれないなとちょっと思いました。
【2014/03/15 22:49】 URL | Green #- [ 編集]

ペルッツ
ペルッツ作品としては、『第三の魔弾』がいちばん面白かったです。重厚なゴシックロマンといった感じですね。
『ボリバル侯爵』は物語の構成というか、プロットがよく出来ていて、読んでいる最中よりも、読み終わった後に感心する、といった感じでした。
≪世界幻想文学大系≫は、一時期ゾッキで出回っていて、どこの古書店でもあったものですが、最近はむしろ高値がついてしまっていますね。

クラフト・エヴィング商會、近作は軽めのものが多いんですけど、期待最初期の作品、『どこかにいってしまったものたち』とか『クラウド・コレクター』なんかは、良い作品だと思います。作りこみがよく出来てますし。
【2014/03/16 07:38】 URL | kazuou #- [ 編集]

ボリバル侯爵
「ボリバル侯爵」を読んでみましたが、良かったですね。
昔の作家にしては(という言い方も失礼ですが)展開にスピード感があり、
良い意味で予想を裏切られ続けました。

脱線しますが、ナポレオン軍のドイツ人兵の話は、
「皇帝の魔剣」という短編集にもありました。
こちらはロシア遠征の話で、呪われた短剣がキーになっています。
宜しければ、御一読をおすすめします。
【2014/03/21 12:44】 URL | bear13 #- [ 編集]

>bear13さん
今読んでもサスペンスが十分感じられますよね。ペルッツは、当時の人気作家だったというのもうなずけます。
『皇帝の魔剣』面白そうなので、機会があったら読んでみます。
【2014/03/21 14:50】 URL | kazuou #- [ 編集]


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Author:kazuou
男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主催。
主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。
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