カニのための進化論  アルチュール・ド・パンス『カニカニレボリューション』
4864102856カニカニレボリューション (EURO MANGA COLLECTION)
アルチュール・ド・パンス 原正人
飛鳥新社 2013-10-09

by G-Tools

 近年、フランスの漫画「バンド・デシネ」の邦訳もずいぶん多くなりました。日本漫画に慣れた目には、斬新な形の作品が多く、読むたびに驚かされることも稀ではありません。
 そんなバンド・デシネの中でも、アルチュール・ド・パンス『カニカニレボリューション』(原正人訳 飛鳥新社)は、更にユニークな作品といえるでしょう。
 これ、なんとカニを主人公にした物語なのです。そう聞くと、動物を擬人化した子供向けの作品なのでは? と思い勝ちですが、なかなかどうして深いテーマを持った作品なのです。
 フランス南西部に生息する、何の変哲もないカニ。その名も「タダノドコニデモイルガニ」。彼らは食用にも適さず、横方向にしか移動できません。同じ種族内でさえ、互いに関心を持たず、名前という概念さえ持ち合わせていませんでした。
 他の動物たちからも哀れみの視線を向けられるカニたちですが、ある日、初めて名前をつけたカニたち、ソレイユ、バトー、ギターは、現状を打倒しようと立ち上がります。生命の危機に陥ったソレイユは、方向転換の技術を身につけ、それはカニたちの進化を引き起こしていきます…。
 一方向にしか動けないカニたちと、それを嘲笑する周りの動物たち。そこから寓意を読み取ることも可能なのでしょうが、そうした深読みをしなくとも、十分魅力的な物語になっています。
 カニたちはビジュアル的にはほとんど同じキャラクターたちなのですが、しっかりと個性を持って描かれているのは見事です。基本的に海が舞台なので、他に登場するキャラクターたちも、海の動物が多いのですが、色鮮やかなカラーリングも見ていて飽きません。
 コンピュータで描いているという絵は非常にチャーミングで、コマ割も洗練されています。動きを重視している日本漫画と違い、バンド・デシネは、じっくりと読まないといけない作品が多いのですが、この作品は、日本漫画のように、スピーディに読み進めていけるのも爽快ですね。
 もともと、アニメーションも手がける作家らしく、大コマの演出も凝っています。というか、この『カニカニレボリューション』自体が、短編アニメーション作品をふくらませて出来た作品だそうです。
 現在、アニメ作品の方も翻訳付きでYou Tubeで見ることができます。(http://www.youtube.com/watch?v=fHnekg3JNU8
 アニメ作品と比べてみると、バンド・デシネ作品の方はもう完全に別物ですね。物語の膨らませ方といい、見事なイマジネーションです。
kani1.jpg kani3.jpg kani2.jpg

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

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怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。
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