怪奇小説のできるまで  都筑道夫『都筑道夫のミステリイ指南』
都筑道夫都筑道夫のミステリイ指南 (講談社文庫)
都筑 道夫
講談社 1990-07

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4939138607黄色い部屋はいかに改装されたか?増補版
都筑 道夫 小森 収
フリースタイル 2012-04-17

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 都筑道夫は、エンターテインメント小説の創作作法に関して、意識的だった作家です。作家自身の資質ともいえるのでしょうが、エッセイや評論でときおり言及される創作作法が、非常に論理的、かつ説得力があるものなのです。
 例えば、『私の推理小説作法』『黄色い部屋はいかに改装されたか?増補版』フリースタイル収録)というエッセイがあります。この手の創作技法に関する本だと、得てして精神論的な面が強調されることが多いのに対して、都筑道夫のエッセイでは、具体的かつ詳細にミステリ小説をどう構成して書いていくのかが、書かれています。エッセイ自体が立派なエンターテインメントといってもいいかと思います。
 都筑道夫はミステリだけでなく、いろいろなジャンルの作品を書いた作家ですが、その活動のなかでも大きな部分を占めているのが、怪奇小説です。エッセイにおいても、たびたび言及されますし、上記の『私の推理小説作法』でも、一章が『幽霊探偵について』という、ゴースト・ハンターものの考察にあてられています。
 そんな都筑道夫の怪奇小説の創作方法を具体的に語っているのが、『都筑道夫のミステリイ指南』(講談社文庫)です。
 本書自体は、エンターテインメント小説全般に関する創作の本です。ただ、この本、怪奇小説の創作方法に関する内容が、非常に大きな割合を占めています。二章分が怪奇小説にあてられていて、「怪奇小説を読む」「怪奇小説を書く」がそれに当たります。
 カルチャースクールの創作講座がもとになっているらしく、「怪奇小説を書く」では、生徒の作品の添削なども出てきますが、面白いのは『怪談作法』という短編が、できあがるまでの経緯を語った部分でしょう。実際に目にした情景から、どう着想し、どんな構成にするのか、どんな描写を入れるのか。このあたりの文章は、とても面白く読むことができます。
 しかし本書でいちばん注目すべきは、「怪奇小説を読む」の章でしょう。『風見鶏』という、都筑作品では名作に挙げられる怪奇小説作品がありますが、主にこの作品について語られています。
 なんと、この作品、つごう3回書き直されていて、その全てのバージョンを読むことができます。メインとなるプロットは同じですが、長さもまちまち、設定も微妙に変わっていたりと、読み比べることで、作者の狙いがわかってくるという仕組み。
 作品の推敲過程や異同について、研究者などが考察するというのは、よくあると思うのですが、これを作者自身がやった例は、あまりないのではないでしょうか。ミステリだけでなく、怪奇小説についても、ここまで理詰めで考えているのか、ということがわかって、驚かされます。
 それでいながら、彼自身の怪奇小説の理想は、理知的な作風に反するような、岡本綺堂や内田百閒だったりというのですから、それもまた面白いところですね。
この記事に対するコメント

はじめまして。
いつもブログを拝読するのを楽しみにしています。
都筑道夫さん、大好きな作家です。
今回紹介されている本も以前読んだ事があります。
記事を拝読して記憶が少し掘り起こされました。

都筑さん、博識で瀟洒な作家でしたね。
『雪崩連太郎シリース』『物部太郎シリーズ』等、本当に面白い作品が多かったです。
短編ながら『狐火の湯』という怪奇小説も実に印象的でした。

レビューを拝読しながら、つい思い出に浸ってしまいました。
これからも楽しみにしています♪
【2013/08/27 20:21】 URL | miroku #- [ 編集]

>mirokuさん
mirokuさん、はじめまして。
コメントありがとうございます。

個人的には、都筑道夫は、創作よりもエッセイや評論の印象が強くて、上に挙げた『黄色い部屋はいかに改装されたか?』などは、何回も読み返している愛読書です。
創作に関しても、確固とした理論というかバックボーンがあって書かれているんだな、と思わせられるところは流石だと思います。
「狐火の湯」は『深夜倶楽部』に入っている作品でしょうか。僕はこの人の書く怪談が好きで、ずいぶん読みましたが、『深夜倶楽部』はなかでもお気に入りの作品です。
【2013/08/27 20:45】 URL | kazuou #- [ 編集]


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Author:kazuou
男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主催。
主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。
記事の新旧に関わらず、コメント・トラックバックは歓迎しています。



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