『たんぽぽ娘』と『奇妙なはなし』
tanpopo1.jpgたんぽぽ娘―海外ロマンチックSF傑作選2 (1980年) (集英社文庫 コバルトシリーズ)
風見 潤
集英社 1980-02

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kimyo2.jpg奇妙なはなし (文春文庫―アンソロジー人間の情景)
文芸春秋
文藝春秋 1993-02

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 最近、ロバート・F・ヤングの名作短編『たんぽぽ娘』が話題になっています。確かに名作だけれど、現役本では、この作品が読める本はなかったような…。
 どうやら、最近人気の作品、三上延『ビブリア古書堂の事件手帖』(メディアワークス文庫)及びそのドラマ化作品でとりあげられたことで、読みたいという人が増えたせいのようです。
 その影響かどうか、何年も前から刊行予告がなされていながら、ちっとも出なかった、河出書房の奇想コレクションの一冊『たんぽぽ娘』(伊藤典夫訳)が、5月に刊行予定になったそうです。さらに、かってコバルト文庫から出ていたアンソロジー『たんぽぽ娘 海外ロマンチックSF傑作選2』も、同じく5月に復刊が決まったそうです。
 こんなところで、ちょっとしたヤングブームが起きるとは思いませんでした。これを機に、未訳の作品がもっと訳されるといいのですが。
 さて、僕が『たんぽぽ娘』を初めて読んだのは、文春文庫のアンソロジー『奇妙なはなし』でした。『たんぽぽ娘 海外ロマンチックSF傑作選2』は、その当時すでに絶版で、古書でもほとんど手に入らない状態でしたから、いちばん手に入れやすいのは、この本でした。
 同じく『たんぽぽ娘』が収録された『年刊SF傑作選2』 も手に入れました。あと、後に『SFマガジン』の40周年記念特大号(525号)にも収録されています。
 『たんぽぽ娘』自体も、甘酸っぱくていい作品なのですが、この作品を収録したアンソロジー『奇妙なはなし』がまた、すごく良いアンソロジーです。収録作品を挙げておきましょう。

『ミリアム』トルーマン・カポーティ
『足あと』カレル・チャペック
『魔物』中山義秀
『過去への電話』福島正実
『たんぽぽ娘』ロバート・F・ヤング
『沼』芥川龍之介
『人面疽』谷崎潤一郎
『死人の村』ラドヤード・キップリング
『蛇』夏目漱石
『エル・ドラドオ』香山滋
『時間をかけた料理』津山紘一
『猫町紀行』つげ義春
『簟笥』半村良
『防空壕』江戸川乱歩
『沼のほとり』豊島与志雄
『セメント樽の中の手紙』葉山嘉樹
『穴の底』伊藤人誉
『花妖記』渋澤龍彦
『空中』夢野久作

 いわゆる「奇妙な味」を集めた作品集です。どれも面白かったのですが、なかで僕がいちばん惹かれたのが、津山紘一『時間をかけた料理』。津山紘一は1970年代終わりから80年代初め頃に活躍していた作家ですが、今となっては忘れられてしまっているようです。正直、とびぬけた作品はないように思うのですが、『時間をかけた料理』が収録された連作短編集『時のない国 その他の国』だけは、傑作だと思います。変わり者の夫婦が、これまた奇妙な国ばかりを旅してゆくという物語です。童話風の雰囲気を持ちながら、時折強烈なナンセンスの見られる、変わったロード・ノベルです。
 『奇妙なはなし』も復刊されて、『時のない国 その他の国』も復刊!されるといいのですが、なかなか難しいでしょうね。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

この記事に対するコメント

ビブリア古書堂の影響力はなかなかのものですね。
なんていうぼくも、今月のちくま文庫の新刊で、
小山清の作品集を買ってしまいました。

ヤングが大好きなので、うれしいニュースですが、
ほんと、未訳の作品こそ、もっと紹介してほしいです。

【2013/03/13 18:29】 URL | kenn #NV6rn1uo [ 編集]

>kennさん
ヤングは、ほんとうに読める本が少なくて、『SFマガジン』で訳された短編をいっしょうけんめい探して読んだりしました。一時的とはいえブームが続くことを祈ってます。
【2013/03/14 22:35】 URL | kazuou #- [ 編集]

ヤング
『たんぽぽ娘』は何で読んだろう? と考えてみると、SFマガジン初出はありえないので、『年刊SF傑作選2』になりますね。この傑作選、今思うとなかなかの選択眼なんですが、当時のSF初心者にはレベルが高すぎて、読んだのはこの2まででした。
SFマガジンで読んだヤングだと、『ジョナサンと宇宙くじら』は、新井苑子さんのイラストこみでよく覚えています。奇想コレクションが楽しみですね。
【2013/03/20 18:55】 URL | 迷跡 #LkZag.iM [ 編集]

>迷跡さん
メリル編の『年刊SF傑作選』は、当時では狭義のSFの枠におさまらない作品を集めていましたよね。SFファンより、むしろ一般の文学ファンなどのほうが面白く読めたのかも。

奇想コレクションのヤング短編集は、下手すると予告から10年近く経ってるんじゃないでしょうか。訳者も高齢だし、もう出ないんじゃないかと思ってました。「ビブリア」様々です。
【2013/03/20 21:30】 URL | kazuou #- [ 編集]


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