二度あることは三度ある  埋もれた短編発掘その1
 これから不定期に、雑誌などに埋もれた短編を紹介しようと思います。もともとこのブログを作ろうと思ったきっかけは、雑誌に埋もれた名作短編を紹介することでした。有名作家であれば、埋もれた短編が単行本に収録される可能性もあります。シオドア・スタージョンなどはその例でしょう。しかし、一冊も著書が翻訳されていない作家の短編が、単行本に収録されることはまずないと言っていいでしょう。そうした中で埋もれさせておくには惜しい作品をその都度取り上げていきたいと考えています。なおあくまで個人的な趣味での選択ですので、厳密にいうと名作ではないものも混じると思いますが、その点はご容赦を。では、どうぞ。

 まず第一弾としてジェイムズ・パウエル『クレーベル警部の殺人分析』(深町真理子訳 早川書房 ミステリマガジン1971年4月号所収)を取り上げたいと思います。ストーリーは次のようなもの。
 《わたし》は、妻の伯父リュシアン・クレーベル警部が、難事件であるオマール事件を解決したことに感心し、詳しい話をせがみます。クレーベル警部は事件の解決に何のイマジネーションもいらないと断言します。殺人のバリエーションは限られたものであり、有史以来、試みられたことのない殺人などない。法律家が判例を参照するように、殺人においても重要なのは前例である。そう力説します。

 「したがって、過去の殺人事件に無知な探偵は、事件が起こるつど、新たにそれを解決することを余儀なくさせられることになる。これがわしの金言のひとつだ。」

 クレーベル警部は、リヨンで起こったジェロームという男の妻殺しの事件を語りはじめます。殺人を強盗の仕業にみせかけようとしたジェロームでしたが、アリバイが全くなかったために逮捕されます。しかしアルデシュ県のタルデューという男が、ジェローム事件に目をつけ、この計画に改良を加えて犯行に及んだのです。しっかりとしたアリバイを作ったタルデューは、妻殺しを実行します。しかし近所で強盗事件など起こったことのないことから、警察に不審を抱かれ、タルデューは逮捕されるのです。
 しかもこの後、さらにタルデュー事件を参照したとおぼしい殺人が発生するのです!

 「こうなると、それから三、四ヶ月後、フランとかいうパリのカフェの経営者が、まったくおなじやりかたで細君殺しを企てたということは、驚くべきことだと思わんかね?」

 次々に前の事件の不備を補うようにして続発する殺人事件。独創的な犯行だとうぬぼれる犯人の思惑とは裏腹に、クレーベル警部は淡々と真相を指摘するのです。飄々としたクレーベル警部の語りが、犯人たちの間抜けさ加減とも相まって、実にコミカルな味を出しています。実に愉しいクライム・ストーリーと言えるでしょう。
 パウエルは、他にも時折雑誌に訳載された短編がちらほらあるので、また機会があったら紹介したいと思います。

テーマ:読書感想文 - ジャンル:小説・文学

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