武宮閣之さんのこと
 先日、書棚の整理をしていた際に、つい『ミステリマガジン』のバックナンバーを拾い読みしてしまいました。その中にあったのが、1992年の8月号。
 この号、『ミステリマガジン』毎年恒例の「幻想と怪奇」特集なのですが、1992年度のタイトルは「新しい日本の恐怖小説」として、日本作家の恐怖小説を集めた特集でした。
 ほぼリアルタイムで買った号です。ただ、掲載作が日本作家の作品ばかりなので、その当時は海外作家一辺倒だったこともあり、おそらく(記憶は定かではないのですが)目を通していない号です。
 目次を見てみると、武宮閣之さんの作品『十七番目の羅漢』が載っています。僕はこの人の作品のファンなのです。以前にも2回ほど、このブログで紹介しています。

 無限公園  武宮閣之『魔の四角形』
 失われた目を求めて  埋もれた短編発掘その24 武宮閣之『月光眼球天体説』

 児童文学として出版された『魔の四角形』(文溪堂)を除けば、『ミステリマガジン』にいくつか掲載された短編しか、公に発表されたものはないようです。この方、今はどうされているんだろう?と思って、ふと検索してみると、今年度のやまなし文学賞の受賞者として名前が挙がっていました(朝田武史(あさだたけし)名義「祝人伝」(ほいとでん))。筆を折ったのかと思っていましたが、ずっと書き続けていたんですね。
 インタビューを読むと、幻想小説の執筆にも意欲をお持ちのようで、また新作短編が読めるかもしれないと思うと嬉しいです。
 『月光眼球天体説』とか『緑砂花園』(どちらも『ミステリマガジン』掲載の短編です)などは、将来的にアンソロジーで発掘され、アンソロジー・ピースになる可能性を秘めた作品だと思いますが、現役作家としてまだまだ活躍してくれるなら、もちろんその方が嬉しいです。
 とりあえず、これを機会に『ミステリマガジン』に発表された短編をまとめて単行本化していただきたいですね。
 さて、ついでに『十七番目の羅漢』の紹介をしておきましょう。
 ふと、職場を離れて、自分でもわからないまま京都へやってきた男。幸福だった学生時代を過ごした町だからだろうか。サラリーマン生活に疲れた男は、そんなことを考えながら歩きつづけます。そぞろ歩きを続けた男が見つけたのは、とある寺でした。
 数年前に、パフォーマンスを見に訪れたことのある場所だと気づきますが、今日は人気がありません。庭を眺めていた男の前に、突如半裸の男が現れ、奇妙な舞踏を始めます。そしてその半裸の男は、男と全く同じ顔をしていたのです…。
 静寂そのものの寺に現れた奇妙な現象。半裸の男は、男の心の表れなのか? スティーヴンソンの『マーカイム』を思わせる、妙に心に残る作品です。
 これは、今読んでこそ味のわかる作品かもしれません。リアルタイムで買った学生時代には、わからなかったかも。
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Author:kazuou
男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。
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