最近読んだ本

4884182839火を熾す (柴田元幸翻訳叢書―ジャック・ロンドン)
ジャック・ロンドン 新井 敏記
スイッチ・パブリッシング 2008-10-02

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478758488Xアメリカ残酷物語
ジャック ロンドン Jack London
新樹社 1999-02

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ジャック・ロンドン『アメリカ残酷物語』(辻井栄滋、森孝晴訳 新樹社)
ジャック・ロンドン『火を熾す』(柴田元幸訳 スイッチ・パブリッシング)

 ジャック・ロンドンの短篇集を2冊ほど。どちらも、ジャンル的には多岐にわたっていますが、ロンドンらしさが感じられる作品を集めています。
 この場合の「ロンドンらしさ」とは、生への執着もしくは生命への賛歌、といったものです。ただ生命賛歌といっても、ロンドンの場合、過酷な状況を描くことが多く、大体においてハッピーエンドにはなりません。人間が立ち向かうのが「自然」であろうと「運命」であろうと、それは同様なのです。
 どの作品も良いのですが、飛びぬけて強烈な印象を受けたのは次の2作品。極寒の地で死にかける男を描く『火を熾す』『火を熾す』収録)、僻地の部族に囚われた男が、拷問を避けようとする物語『恥さらし』です。とくに『恥さらし』『アメリカ残酷物語』収録)の結末は、とても衝撃的なので、一読を勧めたいですね。
 SF・幻想文学ファンには、影と光、それぞれを追求し続ける男の対決を描いた名作『影と閃光』『火を熾す』収録、『アメリカ残酷物語』にも別訳題で収録)、夜になると獣性を抑えられなくなる男の物語『世界が若かった時』『火を熾す』収録)が面白いでしょう。



448854102Xゾティーク幻妖怪異譚 (創元推理文庫)
クラーク・アシュトン・スミス 大瀧啓裕
東京創元社 2009-08-30

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4488541038ヒュペルボレオス極北神怪譚 (創元推理文庫)
クラーク・アシュトン・スミス 大瀧 啓裕
東京創元社 2011-05-28

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4488541046アヴェロワーニュ妖魅浪漫譚 (創元推理文庫)
クラーク・アシュトン・スミス 大瀧 啓裕
東京創元社 2011-12-21

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クラーク・アシュトン・スミス『ゾティーク幻妖怪異譚』(大瀧啓裕訳 創元推理文庫)
クラーク・アシュトン・スミス『ヒュペルボレオス極北神怪譚』(大瀧啓裕訳 創元推理文庫)
クラーク・アシュトン・スミス『アヴェロワーニュ妖魅浪漫譚』(大瀧啓裕訳 創元推理文庫)

 まさかクラーク・アシュトン・スミスの作品が、これだけまとめて読めるようになるとは、思いもしませんでした。
 舞台となる地は、未来の地球であったり、異世界であったりと、様々なのですが、共通するのは、スミス独特の退廃と官能に満ちた世界観。今回まとめて読み直してみて、その極彩色のイメージに改めて感じ入りました。スミスは、辞書をまるごと通読して、語彙を増やしたと言われているだけあって、言葉のレパートリーがひじょうに豊富です。以前の翻訳で読んだときは、これほど視覚的にイメージ豊かな作品だとは思いませんでした。今回の翻訳が、スミスにマッチしているんでしょうね。
 あとは、意外にユーモアの要素があったのも、新しい発見でした。



B000J8PL7A法廷外裁判 (1978年) (ハヤカワ・ミステリ文庫)
ヘンリイ・セシル 吉田 誠一
早川書房 1978-04

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ヘンリイ・セシル『法廷外裁判』(吉田誠一訳 ハヤカワ・ポケット・ミステリ)
 病的なまでに嘘をつくことが嫌いな男ロンズデイル・ウォルシ。ライバルであった男を殺した罪で有罪になったウォルシは、自分の潔白を証明するために裁判をやり直させようと考えます。金の力を使い、名判事、腕利きの弁護士、事件の関係者を誘拐し、判事の屋敷で裁判をはじめたウォルシでしたが…。
 ユーモアに満ちた法廷ミステリです。法廷ものに加え「コン・ゲーム」的な要素も味わえます。裁判シーンが終了してからの、皮肉に満ちた結末が印象的な作品です。



4488274048検死審問―インクエスト (創元推理文庫)
パーシヴァル ワイルド Percival Wilde
東京創元社 2008-02

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4488274056検死審問ふたたび (創元推理文庫)
パーシヴァル ワイルド Percival Wilde
東京創元社 2009-03-20

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パーシヴァル・ワイルド『検死審問―インクエスト』(越前敏弥訳 創元推理文庫)
パーシヴァル・ワイルド『検死審問ふたたび』(越前敏弥訳 創元推理文庫)

 検死官リー・スローカムと、陪審員たちが繰り広げる検死審問を描く2作品です。事件そのものの謎よりも、登場人物たちの魅力で読ませてしまうというのが面白いところです。
 証言に立った証人たち、陪審員たちの話が、それぞれ短篇小説にしてもいいほどの豊かさを持っているのに驚きます。いちおう「法廷もの」に分類される作品なのでしょうが、「法廷もの」が苦手な読者でも全然問題ありません。お話の面白さを求める読者にオススメしたい作品ですね。



4309273300ロスト・シング
ショーン タン 岸本 佐知子
河出書房新社 2012-06-23

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ショーン・タン『ロスト・シング』(岸本佐知子訳 河出書房新社)
 少年が出会ったのは、生物とも物ともつかない不思議な生き物でした。どうやら迷子になったらしいそれの居場所を見つけてやろうと、少年は考えますが…。
 日本でも知名度の上がってきたショーン・タンの作品です。ページの端々にいろんな工夫がされており、細部を見ても楽しめます。優しさに満ちた絵本。


あとは漫画作品をいくつか。



4091885896にげまどうし みんなみんな、にげたがり (IKKI COMIX)
三友 恒平
小学館 2012-06-29

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三友 恒平『にげまどうし』(小学館 IKKI COMIX)
 そのころ、街ではある噂が流行っていました。それは、居場所のない人のもとに現れて「どこでもない場所」に連れて行ってくれるという存在「にげまどうし」の噂でした…。
「にげまどうし」を巡る人々を描く、オムニバス・ストーリーです。どのエピソードもとんでもなくブラックなのですが、とくに第三話『晴れの日』がものすごい。
 何をやっても、日常に満足感を得られない男は、恋人も家も仕事も捨てて、ホームレスになります。最初の頃こそ、新しいことの連続で充実感を味わった男でしたが、数年が経ち、それにも現実感を感じられなくなっていきます。「にげまどうし」に連れられ、「どこでもない場所」にたどり着いた男は、やがて日常に郷愁を覚え、永遠に泣き続ける…という話です。
 素直にオススメしにくい作品なのですが、傑作だと思います。



4396765533Silent Blue (Feelコミックス)
安堂維子里
祥伝社 2012-07-06

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安堂維子里『Silent Blue』(祥伝社 Feelコミックス)
 移動カフェを営むあおこは、たびたび湖に潜って何かを探していました。その湖は、二十年前には、あおこの住む街だったのです。隕石が落下し、その後に雨が降り注ぎ出来た湖・二十日湖。隕石落下前の記憶を失っているあおこは、記憶のよすがを求めて、湖に潜り続けますが…。
 お話としては、それほど複雑な話ではないのですが、舞台となる二十日湖、そして「水」のイメージがひじょうに美しい作品。湖に沈んだ街の情景が心に残ります。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

この記事に対するコメント

「法廷外裁判」
ヘンリ・セシルの法廷物はけっこう好きです。
これのラストもいいですよね。

ワイルドもよかったです。ただし、「検死審問ふたたび」のほうは、見当ついちゃうようなきがしますが・・・
【2012/07/13 19:55】 URL | fontanka #- [ 編集]

>fontankaさん
他の作品だと、セシルは、『メルトン先生』がすごく面白かったです。
ワイルドは、謎解き部分を差し引いても、小説自体の面白さがありますよね。
【2012/07/13 21:14】 URL | kazuou #- [ 編集]

作品のイメージ
タンの新作は、実は出ていたことを知りませんでした。感謝。
手元には以前買った "The viewer" もあったりしますが、これを機に読もうか検討中。高校・大学のサイドリーダーの一節などよりはよほど短いので読めないことはないはずなんですが・・・

ジャック・ロンドンは、私にとってはボルヘスの「バベルの図書館」の1冊だったのを読んだ、という作家だったのですが (ボルヘスがどんなところに惹かれたのかが(紹介文で自身の言葉で書いてはあるのですが)興味深いところです)、「火を熾す」も刊行当時読んで、面白く読めた記憶があります。
『恥さらし』は、僻地の部族で拷問とか聞くとボウルズの「遠い挿話」や「優雅な獲物」やら何かを連想してしまいますが、ロンドンだから心理的な戦い(というか耐久)のプロセスなんだろうなぁ・・・

C・A・スミスのこの辺り、私はゾティークしか読んでいませんが、これを読み逃したら損だというのはありますでしょうか? ゾティーク自体は幾つかのイメージが新鮮で楽しく読んだのですが、とはいえ同じようなものをもっと買うかと言われると、別の本を優先してしまいそうな感じですので・・

『にげまどうし』、紹介を読んで私がイメージしたのが「笑うせぇるすまん」ですが(笑)、まぁ、もっとキャラクター性、下世話さは薄くて物語的(詩情もある?)なんでしょうね・・・ なんとなく読んだら後を引きそうです(笑い)

付けたしで。
伊藤計劃、お口に合いませんでしたか、残念。スパイスリラーとかミリタリーもの的な要素のせいなのか何なのか・・・ 面白いと感じかどうかを分けるものとして、どんな要素が介在しているのかなぁというのは時々感じることですが、簡単ではないですね。
5月頃、ミルハウザーのご紹介がありましたが、ファンとしては次の短編集の邦訳が待ち遠しいのですが・・・ 
もともとそんなに紹介のペースは速くないですが、「ナイフ投げ師」の解説などを見ると、柴田元幸氏は以降の短編集ももう読んでおられるようで、一部は邦訳済みらしいので(「猫と鼠」は読んだ気がします)それでまだまだとなると、もう紹介されないかもとぼんやり思ったり。
【2012/07/17 03:49】 URL | Green #- [ 編集]


『ゾティーク』と『ヒュペルボレオス』は、わりと似た印象ですが、『アヴェロワーニュ』はちょっと味わいが異なるので、どれかというなら『アヴェロワーニュ』でしょうか。

『にげまどうし』、この作品、説明しにくいんですが、「にげまどうし」そのものよりも、それぞれの短編の登場人物にスポットをあてている作品ですね。救いが全然ない話が多いんですが。

ミルハウザーは、短編もそうですが、長編もけっこう未訳があるんですね。あまり期待せずに待っていたほうがいいかもしれません。
【2012/07/17 21:41】 URL | kazuou #- [ 編集]


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Author:kazuou
男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主催。
主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。
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