『セス・アイボリーの21日』と『霜と炎』
スターダストメモリーズ (幻冬舎コミックス漫画文庫 ほ 1-4) 2001夜物語 1 新装版 (双葉文庫 ほ 3-4 名作シリーズ) ウは宇宙船のウ【新版】 (創元SF文庫)
 星野之宣といえば、諸星大二郎と並ぶSFコミックの巨匠です。諸星大二郎は以前からファンだったのですが、星野之宣に関しては、今まで読んだことがありませんでした。というのも、個人的にハードSFや宇宙ものが苦手なのですが、彼の著作のあらすじなどを見るにつけ、そういうジャンルの作品が多そうだな、と思っていたからです。
 最近ふとしたきっかけから、彼の短篇集を読んでみました。これが面白い! 読まず嫌いだったのを後悔しました。そんなわけで、続けて星野之宣の作品をいくつか読みました。『残像』『2001夜物語』『大いなる回帰』『妖女伝説』『スターダストメモリーズ』『はるかなる朝』『サーベルタイガー』など。もっぱら手に入りやすい文庫版作品集(全部短編か連作短編ですが)を集めて読みました。
 正直、ハードSF的な科学考証についてはさっぱりなのですが、とにかく作品のスケールが大きいのと、その詩情に惹かれました。なかでも気に入ったのが、人類の宇宙開拓を描く連作シリーズ『2001夜物語』と、これもまた連作の『スターダストメモリーズ』です。
 この中で一番印象に残った短編はと言えば、間違いなくこの一編『セス・アイボリーの21日』『スターダストメモリーズ』収録 幻冬舎コミックス漫画文庫ほか)でしょう。
 宇宙船に事故が起こり、とある惑星に不時着した女性、セス・アイボリー。彼女以外の乗組員は全て死亡してしまいます。事故前に送った救援信号が届いていれば、21日で救援が来るはずなのです。
 その惑星の植物の成長の早さに目をみはるセスでしたが、やがて恐ろしいことに気がつきます。植物の成長が早いのではなく、生物に及ぼす時間の影響が早いのです!気がつけば自分の体も老化しています。そのスピードは、2日間で約10歳ほど。
 このままでは、救援隊が来る21日後までに、老衰で死んでしまう。そこでセスがとった行動とは、自分のクローンを作ること。彼女の考えとはいったい何なのか…?
 自らの死が避けられなくなったとき、人は何を考え、何をすべきなのか。生きるとは何なのか? 短めの短編作品ながら、いろいろと考えさせる要素を持った作品です。
 『セス・アイボリーの21日』を読んで思い出したのは、レイ・ブラッドベリの『霜と炎』(大西尹明訳『ウは宇宙船のウ』 創元SF文庫収録)という作品です。設定が非常に似ているのです。同じく、時の流れが速く、生物がたちまち老いてしまうという惑星が舞台ですが、こちらでは、宇宙船である惑星に遭難した乗組員たちの子孫がすでに世代を重ねている、という設定です。第一世代の残したロケットの元にたどりつこうとする主人公と、それを邪魔する勢力の対決など、冒険小説的な要素もある作品でした。
 星野之宣が『霜と炎』を読んでいるのかどうかはわかりませんが、ブラッドベリ作品とは全く異なった味わいの作品になっています。読み比べてみると、同じ設定を使いながらも、哲学的なヒューマンドラマを生み出している星野作品に軍配が上がるでしょうか。
 どちらの作品も、一度読んだら忘れられないような作品ですので、気になった方はぜひ。
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男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。
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