あけましておめでとうございます
 少し遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。

 昨年は、年始から一年中忙しかったような気がします。本は合間を見て少しづつ読んではいたものの、感想はおろか、ブログを更新する暇もなかなかありませんでした。
今年は、少し身辺も落ち着いてくるかなと思いますので、少しづつでも更新を続けていけたらいいな、と考えています。
 さて、昨年後半に読んだ本からいくつかご紹介します。



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ヴィルヘルム・マインホルト『琥珀の魔女』(前川道介訳 創土社)
 17世紀、三十年戦争期を舞台にした作品です。貧困と飢餓のなか、敬虔な牧師は、自分の娘が魔女と見なされ処刑されようとするのを必死で救おうと奔走します…。
 長年積読だった作品ですが、ようやく読みました。19世紀半ばの作品だけあって、ストーリー自体はわりとストレートなお話なのですが、今読んでも、小説として面白い作品です。読みどころはやはり時代背景。殺人や略奪が横行する、三十年戦争時代の凄惨な描写が心に残ります。主人公の牧師や娘たちに迫る飢えの描写はリアルですね。
 


4796870970ピノキオ (ShoPro Books)
ヴィンシュルス 原 正人
小学館集英社プロダクション 2011-09-22

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ヴィンシュルス『ピノキオ』(原正人訳 小学館集英社プロダクション)
 これはコミック作品。ディズニー製の『ピノキオ』に触発されて描かれたという、邪悪な「ピノキオ」の物語。感情を持たずに、ただ破壊をするためだけに作られたピノキオをめぐる人間たちを描く、とんでもなくブラックな作品です。ピノキオ以上に、人間たちのえげつない行為が皮肉たっぷりに描かれます。
 ピノキオのパートと、ピノキオに寄生するゴキブリ、ジミニーのパートが交互に現れる構成になっているのですが、ジミニーのパートが饒舌なのに対して、ピノキオのパートはセリフがあまりなく、サイレント風なのも効果を出しています。



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ブルース・ハミルトン『首つり判事』(井上一夫訳 ハヤカワ・ポケット・ミステリ)
 「首つり判事」の異名をとる、厳格なブリテン判事のために、ハリイは、無実の罪で死罪になってしまいます。数年後、寒村でひそやかに暮らす紳士ウィロビーのもとに謎の男が現れます。男は突然失踪し、その後ウィロビーの敷地内から死体で発見されます。容疑のかかったウィロビーの正体は高名な人物でした…。
 あらすじを読むと、筋がわかってしまいそうですが、実際にその通りの流れで話は進みます。しかし小説としての面白さは抜群です。社会の不条理を摘発する、社会派ミステリというべきでしょうか。



4003243064花・死人に口なし 他7篇 (岩波文庫)
シュニッツラー 番匠谷 英一
岩波書店 2011-07-16

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シュニッツラー『花・死人に口なし 他7篇』(番匠谷英一、山本有三訳 岩波文庫)
 以前にアンソロジーで読んだ短編が面白かったので読んでみました。基本は恋愛、それも不倫を扱った作品が多いのですが、中にはエンタテインメントとしても楽しめる作品が含まれています。
 愛人との密会の最中に事故に遭い、愛人が死亡したために逃げ出してしまう人妻の心理を描くサスペンス作品「死人に口なし」、自分の過失で盲目にさせてしまった弟を気遣う兄と、心無い人間のせいで猜疑心を抱き始める弟を描く哀愁あふれる「盲目のジェロニモとその兄」、肌の異なる赤ん坊を産んだ妻の貞操を証明しようとする男を描く「アンドレアース・タマイアーの最後の手紙」、空想上の不倫の恋が現実化してしまうという、幻想小説「レデゴンダの日記」あたりが楽しめます。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

この記事に対するコメント
Happy New Year !
あけましておめでとうございます。
ことしもよろしくおねがいします。

新刊の話など、楽しみにしていますが、
kazuou さんもお忙しいようなので、
無理はなさらないでください。

【2012/01/08 16:17】 URL | kenn #NV6rn1uo [ 編集]

>kennさん
kennさん、あけましておめでとうございます。
お心遣いありがとうございます。今年は、昨年よりは更新頻度を上げていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
【2012/01/08 17:17】 URL | kazuou #- [ 編集]

http://fontanka.cocolog-nifty.com/blog/
あけましておめでとうございます。

お忙しくて大変ですね。
私も仕事がいそがしくて、なかなか本がよめません。
今は古いポケミスを読むを課題にしていて、たまたま「首吊り判事」は読みました。
今年もよろしくお願いいたします。
【2012/01/09 18:25】 URL | fontanka #- [ 編集]

>fontankaさん
fontankaさん、あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。

『首つり判事』は、古い作品ですが、今読んでもなかなか面白かったです。ミステリは、本格ものよりも「犯罪小説」的な作品のほうが時間の経過に耐えますね。この手のものでは、エドワード・アタイヤの『細い線』なんてのも、積読になっているので、近いうちに読みたいなと思ってます。
【2012/01/11 21:49】 URL | kazuou #- [ 編集]

連想あれこれ
「琥珀の魔女」は、迫力がありそうですね。
その迫力を体験したいという気もするし、一方でちょっと手軽には手
に取りがたい話のようにも思えますが…

「ピノキオ」、直接関係ないのですが、ご紹介を読んですぐ連想したのが
昨年出た「ドクター・ラット」。
こちらも露悪的な作品で、動物実験の横行する施設
(実験の様子が残虐と言うより(むしろマッドサイエンティストものの例にもれずぶっ飛んでます)
対象になった動物の叫びが悲痛・・・)が舞台で、
実験の結果、気が狂ったラットが語り部と言うのもどことなく似ているような・・・
「ピノキオ」も面白そうですが、元々の作品もそんなに人間がグロテスクなんでしたっけ…?
ピノキオが我がままだったり、なんか騙されていたりした記憶はあるのですが・・

シュニッツラーは昔々、購入リストに何度も名前を上げながら結局読まなかったという
思い出だけがある作家なのですが、結構サスペンスとして面白そうですね。
「盲目のジェロニモとその兄」は、確かそれをタイトルにしている本があって、
タイトルからもうちょっと人情もの寄りの話を連想していましたが、
内容を聞くとまるでウールリッチ作品のようですね・・・

ポケミスはリニューアル以降の作品が話題のようで、私もつられて何冊か買いましたが、
ご紹介のあったのは通版3ケタの作品で、結構古めの作品なんですね。
有名作品は文庫化されていたりするので、特に古いポケミスの場合、
はっきりターゲットを決めている場合しか読まなかったりするのですが、
そうした意味でご紹介があるととても参考になります。
(さすがに全作品解説などを買って読む余裕と気力は・・・)

いずれも読んではいないので、直接関係のない話が多くて済みません・・
【2012/01/15 16:58】 URL | Green #- [ 編集]

>Greenさん
『ドクター・ラット』は、僕も読みましたが、たしかに強烈な作品でしたね。読後感もあまりよくなかったりするし…。『ピノキオ』はもっとユーモアがあるので(ブラックユーモアですが)、読後感は悪くないです。
シュニッツラーは、サスペンスといっても、あくまで普通の文学なので、ウールリッチほどのサスペンスはありませんけどね。日本で言うと志賀直哉とか、菊池寛とか、ああいう感じでしょうか。
【2012/01/15 18:22】 URL | kazuou #- [ 編集]


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男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主催。
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