『血の本』の2つの映画化
クライヴ・バーカー 血の本 [DVD] クライヴ・バーカー ドレッド[恐怖] [DVD]
 才人として知られる英国の作家、クライヴ・バーカー。最近こそファンタジーづいていますが、初期の作品はホラー作品が中心でした。強烈な印象を残したデビュー短編集『血の本』は、今でもその価値を失っていません。
 さて、このバーカー、もともと映像指向の強い人で、自ら監督したものも含めて、自作小説の映画化作品が数多くあります。『キャンディマン』という佳作もありましたが、正直どの映画化作品も「いまひとつ」という感じが否めませんでした。
 そもそも疑問だったのは、『血の本』が、秀作目白押しなのに、そこからの映画化が少ないということでした。ところがここに来て、『血の本』収録作品が続々と映画化されており、その質もなかなか高いことに驚かされました。そこで今回は、『血の本』の2つの映像化作品を紹介します。
 まずは『クライヴ・バーカー 血の本』。これは独立した短編ではなくて、短編集『血の本』のプロローグとエピローグに使われている、いわゆる「枠物語」の外枠の部分のお話を映像化したものです。
 心霊現象の研究者である、女性心理学者が主人公です。少女が悪霊によって殺されたという噂のある屋敷に、調査にやってきます。調査を進めている最中に出会った青年サイモンが、霊能力を持っていることを知った主人公は、屋敷の調査に参加してほしいと頼みます。やがて、常識では考えられないような現象が次々と起こりはじめます…。
 正直後半まで、そんなに派手な展開はなく、地味な怪奇現象が続くのですが、雰囲気描写が巧みなので、飽きずに見させます。そしてクライマックスシーン、ここ下手な演出をすると、すごく馬鹿らしくなってしまいそうなシーンなのですが、上手く盛り上げていたと思います。
 二つ目は『クライヴ・バーカー ドレッド[恐怖]』『腐肉の晩餐』が原作です。
 大学の課題として、人間の恐怖の心理を研究することになった、スティーヴンとクエイド。女子学生のシェリルを加えた3人は、人々に恐怖体験をインタビューし始めます。しかし、両親を目の前で惨殺されたという経験を持つクエイドは、彼らの体験話の生温さに満足できなくなってきます。
 やがてクエイドには、異常な行動が目立つようになっていきます。行方不明になったシェリルの行方をたずねるスティーヴンに対し、クエイドはシェリルを監禁したと話し始めます…。
 これは原作の雰囲気を崩さずに、かなり脚色を加えている作品です。顔にあざを持つ女子学生や、耳に障害のある青年など、原作にはない登場人物を加えたり、男女間の恋愛や嫉妬といった要素を持ちこんだりと、物語を複雑にさせる要素を多く加えています。
 一番大きな改変は結末でしょう。ある種の予定調和を思わせる原作小説に対し、より残酷さを増した結末となっています。これは原作を読んでから見ていただきたい作品ですね。物語の膨らませ方が実に見事です。
 『血の本』からの映像化作品としては、他に北村龍平監督『ミッドナイト・ミートトレイン』があります。これは日本では劇場公開されず、3月にDVDがリリース予定だそうです。これも楽しみですね。
この記事に対するコメント
バーカー
私は映画をあまり見ないため、ホラー映画も好きと思う割に、代表的な作品すら見ていないものがある状態ですが、バーカーの作品の映像化は難しかろうとは感じます。
「物語の膨らませ方が実に見事」と聞くと「腐肉の晩餐」あたり見てみたい気もしますが、買ってまでは見ないだろうなぁ……(どこぞの会員でもなく、借りることもなさそうだし)

バーカーですが、予定調和という言葉も出ましたけど、『血の本』は結末も主人公が怪異側の世界にフリークアウトしてしまってめでたしめでたし、みたいな話が多かった気がします。
『グロテスクとアラベスクの物語』、タイトルの文字通りの現代版といった感じで、ポー作品に立ちこめる恐怖の要素がほとんどないのは、やはり今が情報化社会だからなのか…
個人的には今思いつく限りでは、「豚の血のブルース」とか「生贄」「ラスト・ショウ」なんかが好きでした。結構抒情味が強い作品もありましたよね。

そう言えばどこかで、そもそも「血の本」によるデビュー自体が計算されたもので、元々ファンタジー側の人間だったんだ、といううがった見方もされていたような…
まぁ、計算だけで『血の本』6巻を書きあげるのは、相当難しいとは思いますが…
【2011/02/20 04:53】 URL | Green #- [ 編集]

『血の本』
『血の本』シリーズ、当時読んだときは、その才気に当てられてしまって、ただ「すごいな」としか思わなかったのですが、改めて読み直してみると、意外にオーソドックスな作品が多かったりするんですよね。伝統的な怪奇小説の骨法に則っているというか、表面上の「血」と「暴力」を除けば、結構しっかりした作りになっているというか。
「怪異側の世界にフリークアウトしてしまう」というのは、確かにそうですね。例えば『ミッドナイト・ミート・トレイン』もそうだし『マドンナ』もそうだし。「怪異」に対して、否定せずに受け入れる、というスタンスは、もともとのファンタジー指向の一端だったのかもしれないですね。
【2011/02/20 08:55】 URL | kazuou #- [ 編集]

『クライヴ・バーカー ドレッド[恐怖]』に
興味津々!
おっとその前に、ご無沙汰しております。年末年始のご挨拶もせずに申し訳ないです^^;

>一番大きな改変は結末でしょう。ある種の予定調和を思わせる原作小説に対し、より残酷さを増した結末となっています。

これに私のホラーアンテナが反応しました(笑)。
原作との一番大きな改変は結末…残酷さを増した結末…、興味そそられますねー。
原作を読んでから映画がおススメということなので、とりあえず図書館で
集英社文庫の『ジャクリーン・エス with 腐肉の晩餐』というタイトルの本を
予約しましたが合ってますか?
原作を読み次第、映画をレンタルしてみまーす^^
あとは近所のレンタルショップに置いてあるかが問題…
【2011/03/19 22:56】 URL | TKAT #- [ 編集]

>TKATさん
TKATさん、こちらこそ、ご無沙汰しております。

この作品、オススメです(ホラーに適性のある方だけですけど)。原作は、『ジャクリーン・エス with 腐肉の晩餐』に収録の作品で合ってます。
原作の方は、あくまで「形而上的な恐怖」を追求する…といったテーマの作品なのに対して、映画化版の方は、より「肉体的な恐怖」を追求している、といった感じでしょうか。まあホラー映画なので、当然、視覚に訴える要素を増やしたといえばそれまでなんですが。
とにかく印象が、小説と映画とかなり異なるので、原作と映画とを比べてみると面白いと思いますよ。
【2011/03/21 12:15】 URL | kazuou #- [ 編集]

こんばんは。
原作『ジャクリーン・エス with 腐肉の晩餐』を読み、そしてやっと映画も見ることができました^^
確かにこれは原作を読んでから映画を見た方が面白さ倍増ですね!

とにかくラストにびっくり!思いがけない人物があっさり殺されてしまい、
その時点であれれ?!だったのに…最後の最後でさらに残酷さ増す結末で二重の衝撃が!
短編の原作から上手に肉付けし、異なる結末でありながらインパクトある終わり方で楽しめました。
こんな映画化もいいもんですね。
【2011/04/18 20:46】 URL | TKAT #- [ 編集]


原作を忠実に映像化するのもありだし、大幅に脚色するのもあり…。小説を映像化する場合、このどちらかの間で揺れるのが常なんでしょうが、この作品に関しては、原作とは離れすぎずに、脚色もほどほどに加えていました。、原作を読んでいても楽しめる映像化作品になっていたように思います。
【2011/05/03 21:15】 URL | kazuou #- [ 編集]


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「ドレッド[恐怖]」

『クライヴ・バーカー ドレッド[恐怖]』   DREAD  製作年:2009年  製作国:イギリス/アメリカ  監督:アンソニー・ディブラシ  原作:クライヴ・バーカー  出演者:ジャクソン・ラスボー... TK.blog【2011/04/18 20:35】

プロフィール

Author:kazuou
男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主催。
主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。
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