正月の読書
 あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。
 さて、連休中は大抵そうなのですが、今年の正月も雑誌のバックナンバーを拾い読みしていました。以下、面白かった短編について、軽く紹介していきます。

デイヴィッド・ブリン『異形の痕跡』『SFマガジン』1994年4月号収録)
 近未来、巨大なゴミ捨て場を発掘する考古学の研究者たちが発掘したものは、人間の骨だった。続々と発掘される大量の人骨はいったいどこからやってきたのか…。
 解説でも触れられているのですが、小松左京の『骨』を思わせる作品。ほとんどホラーに近い肌触りの作品ですね。

松尾由美『メロン』『SFマガジン』1994年4月号収録)
 少子化対策として政府が考え出したのは、カップルがすぐに別れないように、事前にシミュレーションを重ねることでした。トラブルに満ちたイベントに強制的に参加させ、カップルの相性を確かめようというのです。主人公は恋人とともに「ハイキング」に参加します。しかし本来一組のカップルしかいないはずのそのイベントに、見知らぬ男が一人現れます…。
 近未来の管理社会を舞台にした作品、と思いきや、だんだんと物語はおかしな方向に向かっていきます。この著者ならではというべきか、変わった味わいの作品。

ローレンス・ワット=エヴァンズ『ミネソタ・ナンバーの空飛ぶ円盤』『SFマガジン』1994年9月号収録)
 この作者の有名(?)な短編『ぼくがハリーズ・バーガーショップをやめたいきさつ』の続編です。郊外に建つハリーのバーガーショップには、深夜ひっそりと、異次元や異世界からの客が訪れていました。その夜現れた男は壊れた乗り物を直せないかと相談を持ちかけます。しかしこの乗り物は「円盤」だったのです…。
 短い掌編ですが、ユーモラスな味わいに満ちた一編。このシリーズって2編だけなのでしょうか。

ケイト・ウィルヘルム『花の名前』『SFマガジン』1994年9月号収録)
 妻と別れて傷心の主人公は、ある日幼い少女と出会います。数日を経て、再会した少女は不自然なほどのスピードで成長していました。政府の調査員は、彼女は大富豪の孫であり、家に連れて帰るために協力してほしいと、主人公に要請します…。
 特殊な要因により、生まれつき成長の速い少女をめぐる物語です。出会うたびに成長する少女、というイメージは、ロバート・ネイサン『ジェニーの肖像』を思わせますね。

ケヴィン・J・アンダースン『最愛の記憶』『SFマガジン』1995年7月号収録)
 妻を亡くした男は、妻のクローンを作ろうと考えます。しかし、クローンが作れるのは肉体のコピーのみ。記憶に関しては再現できないのです。男は自分の記憶の中から、妻に関するものを抜き出し、それをクローンに移植しようと、記憶を再現し始めます…。
 自分に都合の悪い記憶は削除して「理想の妻」を作り出そうとする男の物語です。妻のクローンが出来上がる前の時点で、物語を終わらせているのが効果的ですね。

ブライアン・ステイブルフォード『枕もとの会話』『SFマガジン』1995年7月号収録)
 体の不調を覚えた青年が聞かされたのは、自分の体の中に、双子の兄弟の胚が成長途上のまま残っているということでした。母親や恋人の反対をよそに、彼は自らの体内で胎児を育てることを選択します…。
 男の「妊娠」を扱っています。恋人がゲイだったりと、いろいろタブーブレーキングな作品。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

この記事に対するコメント
本年もよろしくお願いします
明けましておめでとうございます。
雑誌の拾い読み、いいですね。
すごく優雅な感じがします。
真似したいなあと思うのですが、なかなか手が回りません。
では、本年も更新を期待しております。
【2011/01/04 19:34】 URL | タナカ #- [ 編集]

>タナカさん
あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

たまっている本をほっておいて、雑誌を読んでるので、積読本はちっとも減らないんですけどね…。
雑誌の場合、はじめから読んでいかなくてもいいし、興味のないところは読み飛ばしたりできるので、気楽に読めて楽しいんですよね。
【2011/01/04 23:03】 URL | kazuou #- [ 編集]


あけましておめでとうございます。

ぼくも、読む本がなかったときなどに、
SFMのバックナンバーを読んでたことがありました。


ブリンの『異形の痕跡』は、読んだ覚えがないですね。
こういう話は好きなので、
kazuouさんの紹介文を読むだけでもわくわくしてきます。
ブリンって、短篇集はないですよね、たしか? 

ケイト・ウィルヘルムの『花の名前』もおもしろそう。
ジェニーを思わせるというと、
成長の秘密もその辺にあるのかなぁ。


SFの短篇にはいいものが多いですね。
またいろいろ紹介してください。

というわけで、本年もよろしくおねがいします。
 
【2011/01/05 18:09】 URL | kenn #NV6rn1uo [ 編集]

>kennさん
あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

ブリンの短編集は出てないと思います。本来なら、ハードSF系の作家は全然手を出さないのですが、短編を読んでみたら面白い作家って意外といるんですよね。ブリンもそのタイプで、今まで読んだ短編は、どれも面白かった覚えがあります。

ウィルヘルムの『花の名前』は個人的には、すごく拾い物でした。アイディア的には、よくあるもので、その意味では新味はないんですけど、小説自体の上手さで読ませる、という感じの作品ですね。
【2011/01/05 21:07】 URL | kazuou #- [ 編集]


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男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主催。
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