最近読んだ本

4087745341ZOO
乙一
集英社 2003-06-26

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乙一『ZOO』(集英社)
 さまざまな傾向の短編を集めた作品集です。どちらかと言えばホラー寄りの作品が多いんでしょうか。
 主人の死を看取るために作られたロボットを描く『陽だまりの詩』、互いの姿が見えなくなった両親と二人とも認識することのできる息子を描く奇妙な家族小説『SO-far そ・ふぁー』、言ったことを現実化できる能力を持った少年を描くSF『神の言葉』などが面白いですね。
 基本的に収録作品はどれも面白いのですが、中でも『SEVEN ROOMS』が一番印象に残ります。
 姉とともに殺人鬼に監禁されてしまった少年。しかし独房の中には溝があり、そこには汚水が流れていました。少年の体ならば通れる、とその溝をくぐった少年が見たのは、自分たちが監禁されているのと同じ作りの部屋でした。そしてそこには別の女性が。しかも溝をたどっていくと、同じような部屋が7つもつながっていたのです。犯人の狙いと目的とは…?
 突然不条理な状況に放り込まれた姉弟、そして絶望の中に生まれる姉弟愛。物語の緊張感が半端ではありません。非常にグロテスクで、結末も悲惨なのですが、後味は悪くありません。



4575236861さよなら、ジンジャー・エンジェル
新城カズマ
双葉社 2010-02-09

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新城カズマ『さよなら、ジンジャー・エンジェル』(双葉社)
 死んでしまった元警官の主人公が、書店でアルバイトをする娘に何故か心惹かれます。彼女に近付く青年に悪意を感じとった主人公は、彼女を守ろうと考えますが…。
 死んでしまった主人公が事件を探るという、いわゆる「幽霊探偵」ものミステリです。興味深いのは、時間の感覚がない、物質に触ると崩壊させてしまう、生前の活動エリア内しか動けない、など幽霊に関するルールがいろいろと設定されていること。新米幽霊の主人公が、それらのルールを調べながら捜査活動をする過程は、ひじょうに面白く読めます。
 幽霊たちが自分たちの存在について議論するのですが、自分たちは誰かの夢だ、とかボルヘス的な考えを披露するあたりも、なかなかユニークですね。



4796870806氷河期 ―ルーヴル美術館BDプロジェクト― (ShoPro Books)
ニコラ・ド・クレシー 小池寿子
小学館集英社プロダクション 2010-11-09

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ニコラ・ド・クレシー『氷河期』(小学館集英社プロダクション)
 フランスの漫画、通称BD(バンド・デシネ)の作品なのですが、ルーヴル美術館とコラボレーションしているというユニークな作品です。近未来、氷河に覆われた未来のパリで、考古学調査隊が埋もれた美術館を発見するという設定の物語です。
 この作家、本国ではすでに巨匠として認められている人のようです。ほぼ同時刊行された『天空のビバンドム』もすでに入手しているのですが、まだ未読。すさまじい画力の持ち主です。



3936480680Arzach
Moebius
Cross Cult 2008-05

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メビウス『Arzach』
 フランスBDの巨匠メビウスのコミックです。これ実はドイツ語版なのですが、『Arzach』はセリフのない絵だけの作品なので、問題なく読めます。翼竜に乗った不思議な男アルザックが、幻想的な世界を飛び回るといった明確な筋らしい筋もない作品なのですが、これがまた大変魅力的。
 怪物退治をしたかと思ったら、女性の着替えを除いたりと、ユーモアあふれる描写も垣間みられます。
 セリフどころか擬音も全くない世界なので、読者の想像力の余地が大幅に増えています。今見ても、その絵柄、デザインの完成度は比類がありません。    
この記事に対するコメント

国書刊行会から出たBDコレクションは3作品とはいえ、楽しみな企画です。
イビクスは購入はしましたがまだ読んでいません。寝転んで読めない本なのが
ツライですね。
今回、教えていただいた2作品も興味をそそります。
【2010/11/15 22:25】 URL | マルケス #- [ 編集]

乙一
こんにちは。
私も『SEVEN ROOMS』の印象は鮮烈でした。
なんなんだ、この話は!乙一って、やっぱりただものじゃないなの感を強く持ちました。
デビュー作からして非凡でしたよね。
【2010/11/16 20:41】 URL | タツナミソウ #- [ 編集]

>マルケスさん
『イビクス』も気になるタイトルなんですが、まだ購入はしてません。国書刊行会のシリーズといい、なぜか最近、BDがクローズアップされてきていますね。これからもいろいろと出版されるようなので、楽しみです。
今回読んだ中でも、とくにメビウス『Arzach』は良かったので、オススメです。
【2010/11/16 21:14】 URL | kazuou #- [ 編集]

>タツナミソウさん
乙一は、以前何冊か長編を読んで、もういいかなと、それ以後全然読んでいなかったんですよね。けれど、アンソロジーで、短編をいくつか読む機会があって、あれ、こんなに面白かったっけ?という感じで最近また読んでいます。
そんなわけで、世間では話題になっていた覚えはあるのですが、『ZOO』も随分遅ればせながら読んでみました。
とくに『SEVEN ROOMS』は強烈でしたね。かなり扇情的な題材なのに、脳天気なスプラッターでもなく、勧善懲悪なアクションものでもない、独自の味わいを持った作品に仕上げているところに、驚かされました。
デビュー作もこの若さですごい作品だな、とは思っていましたが、作家として順調に成長を続けている感じですね。
【2010/11/16 21:22】 URL | kazuou #- [ 編集]


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Author:kazuou
男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。
主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。
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