9月の気になる新刊
9月7日刊 ジャック・リッチー『カーデュラ探偵社』(河出文庫 予価882円)
9月10日刊 『ちくま文学の森1 美しい恋の物語』(ちくま文庫 予価998円)
9月10日刊 『ちくま文学の森2 心洗われる話』(ちくま文庫 予価998円)
9月15日刊 ヴィカース・スワループ『6人の容疑者 上・下』(武田ランダムハウスジャパン 予価1890円)
9月25日刊 北村薫『北村薫のミステリびっくり箱』(角川文庫 予価600円)
9月25日刊 山田風太郎ベストコレクション『太陽黒点』(角川文庫 予価630円)
9月25日刊 山田風太郎ベストコレクション『天狗岬殺人事件』(角川文庫 予価630円)
9月25日刊 大森望編『ここがウィネトカなら、きみはジュディ 時間SF傑作選』 (ハヤカワ文庫SF 予価987円
9月刊 アントニイ・バークリー『パニック・パーティ』(原書房 予価2520円)

 リッチー『カーデュラ探偵社』は、シリーズ・キャラクターである〈カーデュラ〉ものを集めた作品集。カーデュラの正体について、作中でははっきり語られないのですが、読者にはすぐわかってしまうという、とぼけた味が魅力です。新訳の短編もいくつか収録されるようです。
 テーマ別の短編を集めるという、文学全集としては非常に斬新な編集で話題を呼んだ、《ちくま文学の森》が文庫化です。お話の面白さに重点を置いたセレクションで、どの巻もとても面白いシリーズでした。マルセル・エイメやロード・ダンセイニ、ボンテンペルリ、カミ、アルフォンス・アレの作品が入った文学全集なんて、後にも先にも、このシリーズぐらいだったんじゃないでしょうか。どうやら全ての巻が文庫化されるわけではないようですが、オススメのシリーズです。
 来月のいちおしは、これですね。大森望編『ここがウィネトカなら、きみはジュディ 時間SF傑作選』。先月の『SFマガジン』で、既に収録作品が紹介されていました。未訳が3編、既訳が10編と、既訳作品が多いのが気になりますが、どれも今では読めないものばかりなのを考えると、よしとしましょう。
 既訳作品は、時間SFの名作として知られる、表題作のバズビイ『ここがウィネトカなら、きみはジュディ』、ソムトウ・スチャリトクル『しばし天の祝福より遠ざかり』、テッド・チャン『商人と錬金術師の門』、ロバート・シルヴァーバーグ『世界の終わりを見にいったとき』、ボブ・ショウ『去りにし日々の光』、デイヴィッド・I・マッスン『旅人の憩い』など。SF史上に輝くオブジェ〈スローガラス〉を登場させた『去りにし日々の光』が嬉しいところです。
 未訳作品の中では、リチャード・ルポフの"12:01AM"が要注目。これ『世にも悲しい放浪者たち』というオムニバスドラマシリーズで、『時間の牢獄』として映像化された作品の原作です。時間に囚われた、いわゆる「ループ」もの作品ですね。ちなみに『時間の牢獄』を長編映画化した『タイムアクセル12:01』という作品もあります。どちらもすごく面白い作品なので、機会があったらぜひ。
 アントニイ・バークリー『パニック・パーティ』は、バークリーのシリーズキャラクター〈ロジャー・シェリンガム〉ものの最終作にして、唯一未訳だった作品です。邦訳の予定が挙がってから、ずいぶん時間が経ってしまいましたが、とりあえず訳されたことを喜びましょう。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

この記事に対するコメント

>SF史上に輝くオブジェ〈スローガラス〉

これほどシンプルで魅力的なものは、
そうそうあるもんじゃないですよね。

楽しみな傑作選ですが、なんとなく
ニューウェーブっぽく感じられるのは、
気のせいでしょうか? 
【2010/08/23 02:58】 URL | kenn #NV6rn1uo [ 編集]

ちくま文学の森
こんにちは。
『ちくま文学の森』の文庫化とは嬉しいニュースですね。
全巻文庫化ではないようですが、7巻「恐ろしい話」はぜひ復刊してほしいです。
池内紀氏の解説がとても良かったですし。
【2010/08/23 15:02】 URL | タツナミソウ #- [ 編集]


「ちくま文学の森」→夫が持ってました。で、昔、貸してもらってました。
このシリーズで、それこそいろんな作家に出会った気がします。

続のシリーズ(確かありましたよね)は、持っていませんが。
シリーズものが再刊(文庫化含む)されるとき、再編集(?)されてしまうと、もうそのとりこぼされたものが復活するのは難しい気がします。
是非、全部文庫化してもらいたい気がします。

【2010/08/23 20:01】 URL | fontanka #JalddpaA [ 編集]

>kennさん
〈スローガラス〉 は、本当に魅力的なガジェットですよね。正直、この短編を読むためにだけ、このアンソロジーを買ってもいいくらいだと思います。

収録作品は、わりと新しめの年代から選んでいるようなので、ニューウェーブっぽく感じられるのかもしれませんね。
【2010/08/23 20:31】 URL | kazuou #- [ 編集]

>タツナミソウさん
『ちくま文学の森』は、短編の面白さを教えてくれた、得難いシリーズでした。僕が好きなのは、『おかしい話』とか『機械のある世界』『恐ろしい話』あたりですね。
『恐ろしい話』は、今回のラインナップに入っているようですよ。
【2010/08/23 20:37】 URL | kazuou #- [ 編集]

>fontankaさん
『ちくま文学の森』、続刊シリーズも含めると、かなり巻数があるんですよね。続の方の『奇想天外』とか『世界は笑う』なんてのも、とても面白い巻でした。
再編集されてしまうと、とりこぼされたものは復刊してくれない、というのは、同感ですね。まあ、いきなり全巻文庫化というのは難しいんでしょうが…。
【2010/08/23 20:41】 URL | kazuou #- [ 編集]

ご無沙汰しております
『ここがウィネトカなら、きみはジュディ 時間SF傑作選』と『ちくま文学の森』文庫版が買いかなあと思ってます。『ちくま文学の森』の旧版はたしか古本屋で揃いを見かけたと思うのですが、入手にいたらず。今回、すべてではないにしても、文庫というかたちで再刊されるのがうれしいです。好評であれば続刊…となればよいですね。
【2010/09/02 01:25】 URL | green-flow #- [ 編集]

> green-flowさん
『ちくま文学の森』は、「続」シリーズも含めると、けっこう巻数がありますよね。
とくに後期の巻は、面白いテーマのものが多いと思います。
興味あるテーマの巻だけ購入というのもありだと思うので、これはぜひ続刊を期待したいシリーズですね。
【2010/09/03 12:26】 URL | kazuou #- [ 編集]


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Author:kazuou
男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。
主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。
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