秘密の庭  アイナール・トゥルコウスキィ『月の花』
4309271774月の花
Einar Turkowski
河出書房新社 2010-03-25

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 独特の美意識に裏打ちされたユニークな造形と、驚異的な画力。前作『まっくら、奇妙にしずか』で我々を驚かせてくれたドイツの絵本画家、アイナール・トゥルコウスキィ。『月の花』(鈴木仁子訳 河出書房新社)は、そんな彼の新作絵本です。
 前作同様、ストーリーは単純です。周りの人間から離れて、ひとり大きな屋敷に住む男が主人公。彼は植物や動物などの自然を愛し、ひとり暮らしでありながらも、充実した生活を送っていました。そんなある日、庭のかたすみに、不思議なつぼみが芽吹いていることに、男は気づきます。花を咲かせようと、男はいろいろな方法を試します…。
 今回の作品では、登場人物(登場する人間といった方がいいでしょうか)は、主人公ひとりのみ。何せ、物語は男の住む屋敷内だけで展開するのですから。前作とは対照的です。
 前作では、主人公と周りの人間とのやりとりの中で、グロテスクな人間模様が描かれ、そこが作品の魅力のひとつともなっていました。それに対して、『月の花』では、人間の代わりに登場するのは、植物や、庭を訪れる昆虫や動物たちなのです。
 その植物や動物たちも、ありきたりのものではありません。作者トゥルコウスキィのデザインになる、架空の不思議な植物や動物たちなのです。植物や動物、ひとつひとつの奇抜な造形を見ているだけでも、まったく飽きさせません。
 前作でもそうだったのですが、トゥルコウスキィは、画面内の小物にいたるまで手を抜いていません。建物の何気ない一部でさえ、オリジナルの造形を施しているのです。そして、その細部の筆致はあくまでリアル。
 しかも、細部はリアルであるにもかかわらず、全体を見渡したときには、不思議な幻想性をたたえているところに、トゥルコウスキィ作品の魅力があります。
 解説によると、彼が使うのはHBのシャープペンシルだけであるとか。たった一本のシャープペンシルで、これだけ濃密な世界を構築できるとは、脱帽せざるを得ません。
 架空の植物誌や動物誌としても楽しめる作品ですので、例えば、レオ・レオーニ『平行植物』や、ジョアン・フォンクベルタ、ペレ・フォルミゲーラ『秘密の動物誌』などがお好きな方にもオススメしておきます。
月の花4 月の花3 月の花1 月の花2

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

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