子供とお菓子  埋もれた短編発掘その12
 子供にお菓子をあげ続ける老夫妻、その目的は? 今回は幻想的なミステリ、チェット・ウィリアムスン『シーズン・パス』(羽田誌津子訳 早川書房 ミステリマガジン1986年4月号所収)を紹介します。
 遊園地「マジックランド」。ここに勤める保安係である「わたし」は、あるとき初老の夫婦に目を止めます。二人とも六十前後、とくに目を惹く特徴もありません。ところがある日、夫婦が少年にチョコレートキャンディをあげているのを見かけます。単なる親切だと考えた「わたし」ですが、夫婦の眼差しには何かを感じます。
 そして後日、再び「わたし」は、夫婦が少女にキャンディをあげているのを目撃します。数時間後、その少女が青ざめて医務室にすわっているのに出くわし、疑念を抱くのです。

 キャンディの中に何か入っていたのだろうか? 微量の猫いらず? 殺虫剤を吹きつけたのか? あるいは、この温厚そうな老人たちは、復讐を企む元小学校教師なのだろうか?

 そしてまたある日、医務室に連れられてきた兄弟を見て「わたし」は声をかけます。キャンディを食べ過ぎたんじゃないのかな、坊や? そこで「わたし」は思いがけないことを聞きます。具合が悪くなったのは、キャンディを食べた弟ではなく、食べなかった兄の方だというのです。 不審の念を拭えない「わたし」でしたが、老夫妻の名前はヤンガー夫妻であることを、切符係のピートから聞き出します。彼らはシーズン・パス-定期入場券を使って、ここに通いつめているというのです。そしてピートは意外な事実を話します。二十五年前から勤めているピートは、当時から夫妻を見かけていたということを。

 二十五年前だなんて。あの夫婦は、今六十前後に見える。しかし、ピートが最初に二人と出会った時に六十だったとすると、現在は八十五か九十、いやもっと上ということになるじゃないか。

 ヤンガー夫妻は、相変わらず子供たちにお菓子をあげ続けます。「わたし」は、夫妻を問いつめ、驚くべき彼らの行為を知ることになるのです…。
 夫妻があげ続けるお菓子には何か意味があるのでしょうか? 二十五年前から歳をとらないように見える彼らの秘密とは…。夫妻との接触は「わたし」の過去を再び蘇らせることにもなるのです。ミステリの体裁をとりながらも、徐々に物語は超自然的な要素を強めていきます。その幻想性はかなりのリアリティを持って迫ってくることでしょう。

テーマ:読書感想文 - ジャンル:小説・文学

この記事に対するコメント
お菓子とおばちゃん
映画の予告編を観ているような感じで、結末が非常に気になりますx2。

日常でもおばちゃんはキャンディをよく持っています。何故なのかしら?


【2006/03/15 20:41】 URL | 加納ソルト #- [ 編集]


この作品、映像化したら、いい作品になるのではないかと思いますね。
結末ですが、まあ、たぶん単行本収録はないと思うので、明かしてしまいます。
初老の夫婦はいわゆる精神的な吸血鬼というやつで、子供にお菓子をあげる際に子供の体からエネルギーを奪っていました。そして主人公の「わたし」が遊園地に勤めている理由は、幼いころに突如衰弱死した弟の死因を探るためでした…。
【2006/03/15 21:06】 URL | kazuou #- [ 編集]


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怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。
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