4月の気になる新刊と《20世紀イギリス小説個性派コレクション》
4月6日刊 『ヒー・イズ・レジェンド』(小学館文庫 予価860円)
4月15日刊 中井英夫『とらんぷ譚3 人外境通信』(講談社文庫)
4月21日刊 ダニエル・ウォレス『ミスター・セバスチャンとサーカスから消えた男の話』(武田ランダムハウスジャパン 予価2310円)
4月24日刊 大槻ケンヂ『大槻ケンヂが語る江戸川乱歩 私のこだわり人物伝』(角川文庫 予価460円)
4月25日刊 coco『今日の早川さん3』(早川書房 予価1050円)
4月25日刊 coco『今日の早川さん3 限定版』(早川書房 予価1785円)
4月28日刊 シャーロット・アームストロング『風船を売る男』(創元推理文庫 予価1050円)
4月刊 レイ・ブラッドベリ『ナウ・アンド・フォーエバー』(仮題)(晶文社 予価1995円)
4月刊 スタニスワフ・レム『短篇ベスト10』(国書刊行会 予価2940円)
4月刊 アドルフォ・ビオイ=カサーレス『パウリーナの思い出に』(国書刊行会)

 『ヒー・イズ・レジェンド』は、リチャード・マシスンへのトリビュート作品を集めたアンソロジーです。正直なところ、トリビュートアンソロジーよりも、本人の未訳作品をもっと出してもらった方がいいような気はするのですが、これが呼び水になる可能性もあるので、期待したいところです。
 本読みにはお馴染み、『今日の早川さん』の3巻が登場。限定版は「早川さんいろはかるた」付きだそうです。CDドラマ企画も進んでいるそうで楽しみですね。
 『風船を売る男』は、シャーロット・アームストロングの久方ぶりの邦訳。アームストロングは、日常的な風景からサスペンスを醸成する仕方が上手いので、とくにミステリ好きでなくても楽しんで読める作家だと思います。
 ちゃんと来月に出るか怪しいですが、国書刊行会のビオイ=カサーレス短編集『パウリーナの思い出に』は、来月いちばんの要注目作品ですね。短篇の邦訳は十編に満たないくらいだと思うのですが、どれもが硬質な幻想小説の佳作でした。表題作『パウリーナの思い出に』は、分身テーマのアンソロジーにも収録されたことのある名作です。

 先月の気になる新刊でご紹介した、《20世紀イギリス小説個性派コレクション》の第1弾、マーガニータ・ラスキ『ヴィクトリア朝の寝椅子』、入手しました。まだ未読なのですが、驚いたのは、帯に書かれていたシリーズ続刊のタイトルです。並べてみましょう。

シルヴィア・T・ウォーナー『フォーチュン氏の楽園』
マックス・ビアボーム『ズリイカ・ドブソン』
パトリック・ハミルトン『孤独の奴隷』
エヴェリン・ウォー『卑しい肉体』

 エヴェリン・ウォーは、イヴリン・ウォーのことだと思いますが、それ以外は何ともマニアックなラインナップです。なかでも注目はシルヴィア・T・ウォーナーでしょう。邦訳は『妖精たちの王国』(月刊ペン社)だけだと思います。以前ちょこっと紹介したのですが(http://kimyo.blog50.fc2.com/blog-entry-266.html)、この作品は僕のオールタイムベストになっています。これは楽しみですね。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

この記事に対するコメント

アームストロングが出るんですね。
アームストロング「毒薬の小瓶」と短編「敵」(だったはず)以外は、けっこうサスペンスで、後味が・・・と思い始めて居るんですが、kazuouさんはいかがおもわれますか?
【2010/03/21 19:12】 URL | fontanka #- [ 編集]

>fontankaさん
僕はアームストロング、好きなんですよね。『サムシング・ブルー』とか『見えない蜘蛛の巣』とか。基本的には善人は救われる、というパターンが多いので、ハラハラしつつも安心して読める部分があると思います。
【2010/03/21 20:52】 URL | kazuou #- [ 編集]


kazuouさん>
「サムシング・ブルー」でですね、「恋愛の決着の付け方」にちょっと疑問が・・・・

主人公(?)の男性に、ずっと彼女を思い続けていたなら、(最後の最後になって僕が本当に必要にしていたのは)などと気持ちを翻すなとつっこみたくなったりするんです。
「待っているっていったなら、ずっと待っていろ!」と思うのは、女性だからでしょうか。

そっちの方が、彼女をだましていた男より罪が重い・・・・・などと。


【2010/03/22 00:21】 URL | fontanka #- [ 編集]


『ヒー・イズ・レジェンド』は知っていたのですが、ブラッドベリの『ナウ・アンド・フォーエバー』は知りませんでした。
凄いですねえ、こんなに様々な出版社の近刊を調べてらっしゃるなんて。
【2010/03/22 04:36】 URL | save #OdQiF3h2 [ 編集]

>fontankaさん
うーん、僕はそんなに気にならなかったんですが…。逆に男性の立場からすると、主人公にかまわず、結婚すると言い出す娘の方に腹が立ってしまう…ような気が。
【2010/03/22 08:47】 URL | kazuou #- [ 編集]

>saveさん
いえいえ、興味の範囲が狭いこともあって、新刊紹介のサイトと特定の出版社のサイトをいくつか参照してるだけですよ。
【2010/03/22 08:50】 URL | kazuou #- [ 編集]

(長文失礼…)
アームストロング、面白いのですか? これまで、何度か「毒薬の小瓶」を購入予定リストに加えたことはあったのですが、内容紹介文などを見た感じだと、どうしても「これって面白いのかなぁ…?」という感じになって結局は購入対象から落選、となってしまっていたのですが… 日常からサスペンスを醸成するタイプの作品の作品紹介って難しいのかもしれないですね。
日常からサスペンスというと、シリア・フレムリンは2冊読んでいて、これは楽しめましたが。
中井英夫にしても「虚無への供え物」(一応読みました)の人だっけ…?程度の認識。トランプ譚は存在のみ知ってはいますが…ダニエル・ウォレスもよく知りませんが、児童文学作家でしょうかね…

ラテンアメリカの短編集は結構読んでいるはずなのに、私の場合、あまりビオイ=カサレスは印象に残っていなかったりしますが、まとめて読んだら印象が変わるでしょうか…(覚えているのは長編の「モレルの発明」くらいでそれもさして印象にない…)
レムも、印象が強烈だったのは(…というより、読んだのは、か?)幾つかの長編と「完全な真空」のような作品などなので、短編ベストとなるとどんな作品なのか興味はあるのですが。

途中から拝見していたこともあって、短編集オールタイムベストのページは見逃していました。
知らない作家が多く、読書量の中途半端さが知れてお恥ずかしいですが(笑)、「今夜の私は危険よ」が入っていたのは、ウールリッチファンなのを知っていてもちょっと驚きでした。
集中の「ジェーン・ブラウンの体」が彼のベストの一つに挙げたいくらい好きなのですが、ウールリッチ好きがベスト短編を挙げるとしても、この作品集を挙げる人は多くはないと思うので。
あと、S・T・ウォーナーという名前、どこかで聞いたような気がして検索してみましたが、
あるにはあったものの、どれも読んだことはなかったです。。。
 (こことか… http://homepage1.nifty.com/ta/sfw/warner.htm#av)
マイナーでも(しかも妖精物語系統のファンタジーで!)、アンソロジーに取り上げられるだけの力量のある作家なんですね。

余談ですが、「犬は勘定に入れません」を読んでいると「ボートの三人男」へのオマージュはもちろん(本人も出てくる…)、ウッドハウスへのオマージュもしきりに捧げられていて読みたくなり、結局「ボートの三人男」購入。ウッドハウスも読みたいですが、同じような感じの厚めのタイトルがずらり並んでどれを選んだものやら…で、結局買っていません。
やはりはじめに買うならジーヴズものでしょうか? あと、「狂った旋律」を買おうとしたら書店になかったのですが、これ、結構前の本なんでしょうか… Amazon にも古書しか出ていないですね…
(本当に長くなりました… 失礼おば。。)
【2010/03/22 19:48】 URL | Green #- [ 編集]

>Greenさん
アームストロングは、あらすじ紹介だけを読んでも、あんまり面白さの伝わらない作家じゃないかと思います。正直、題材だけとるならありふれたものが多いんですよね。この人の面白いところは、「謎」があっても、それをすぐに読者に明かしてしまう、というところですね。ただし登場人物たちは真実を知りません。何も知らない主人公たちの行動に対してハラハラドキドキさせる、というタイプの作品です。
『毒薬の小瓶』はアームストロング作品の中でも特殊なので、できれば『サムシング・ブルー』『見えない蜘蛛の巣』『疑われざる者』あたりを読んでみてほしいです。

中井英夫の短篇は日本の幻想小説の一つの極致、だと思ってます。《とらんぷ譚》は、幻想文学好きなら読んでおくべき作品でしょうね。少なくともシリーズ1作目の『幻想博物館』は娯楽性と幻想性を兼ね備えた傑作短篇揃いなので、ぜひ読んでみてほしいです。

ダニエル・ウォレスは、ティム・バートンが映画化した『ビック・フィッシュ』の原作者ですね。じつは僕も読んだことないんですけど、あらすじが面白そうだったので、購入予定本に入れてます。

『今夜の私は危険よ』は、ウールリッチのなかでも一番お気に入りの作品集ですね。「ジェーン・ブラウンの体」はベタだと言われそうですが、ウールリッチらしさが良く出た作品だと思うので好きです。

S・T・ウォーナーは、妖精物語専門の作家というよりは、ファンタジー的な要素を持った現代小説作家、とでもいった方がいいんでしょうか。情感とモダンさを兼ね備えた作家だと思います。似たようなテイストを持つ作家を挙げるとすると、マルセル・エイメとかジョン・コリア、シュペルヴィエル、ジャック・フィニィとか、そのあたりでしょうか。

ウッドハウスは邦訳がずいぶん出てしまってますね。ジーヴズものはきりがないので、『エムズワース卿の受難録』とか『マリナー氏の冒険譚』から入るのがいいかと。

『狂った旋律』はもう10年ぐらい前の本ですね。そろそろ新刊では買いにくいかもしれません。あと、それ以前に出た、同じ作者の『復讐のディフェンス』もけっこう面白いですよ。
【2010/03/22 21:54】 URL | kazuou #- [ 編集]


はじめまして。
ヒー・イズ・レジェンド、海外で刊行されたことは知ってましたが、ようやく日本で刊行ですね。
リチャード・マシスンファンの私は、運命のボタンと共に楽しみにしています。
【2010/03/23 13:00】 URL | naomatrix #- [ 編集]

>naomatrixさん
naomatrixさん、はじめまして。
マシスン関連書が二冊立て続けに刊行ということで、これを機にマシスンの邦訳が増えるといいですね。以前スタージョンがブームになった前例もあるので、期待したいです。
【2010/03/23 20:55】 URL | kazuou #- [ 編集]

う~ん…
『今日の早川さん3 限定版』は、“早川さんいろはかるた”つきですね。
通常版か限定版か、ぎりぎりまで迷いそう(笑)
【2010/03/23 22:35】 URL | 迷跡 #- [ 編集]

第2期《20世紀イギリス小説個性派コレクション》の可能性
はじめまして。
よく拝見させていただいております。

取り上げていらっしゃる《20世紀イギリス小説個性派コレクション》について、情報を補足させていたもらいますね。
このシリーズがある程度の数字に達すれば、第2期が可能となるそうです。
そして、選者であるひとり横山茂雄氏は、そのなかにあの「チャールズ・ウィリアムズ」を入れると断言してはばからないのです。あのチャールズ・ウィリアムズと翻訳・横山茂雄です。どうです、読みたいでしょう?
そのためにはこのシリーズが売れていただかなくては成り立ちませんし、ぜひ海外小説ファンの皆様にはお買い求めいただきたく存じます。図書館にリクエストされましても、一向にかまいません。ぜひあたたかい応援をお願いする次第です。

なお、同じ版元から出ている横山氏編纂の『危ない食卓』。これはゲリラ的名著です。英文学をやられている方は必見です。こちらもよろしくお願いいたします。

それでは失礼する次第です。
【2010/03/24 08:51】 URL | りく坊 #znV3k9no [ 編集]

>迷跡さん
CDドラマの方が後に控えてるので、今回は通常版でいいかなあ…と思ってます。
【2010/03/24 20:40】 URL | kazuou #- [ 編集]

>りく坊さん
りく坊さん、はじめまして。コメントありがとうございます。

第2期の予定もあるのですか。第1期がものすごくマニアックだったので、ぜひ第2期も実現していただきたいですね。しかもチャールズ・ウィリアムズとは、驚きです。
とりあえず僕はシリーズ全て購入する予定ですが、ぜひ応援させていただきたいと思います。
【2010/03/24 20:45】 URL | kazuou #- [ 編集]

こんばんは
つい最近、シャーロット・アームストロングは本屋で『あなたならどうしますか?』を見つけ、
帯の宣伝文句を読んで面白そうだなと思っていたんです。
ですがこの方の著書を読んだことがなくて少し躊躇して買わずじまいです^^;

初シャーロット・アームストロングで短編集『あなたならどうしますか?』は
いかがでしょう?他の著書から入ったほうがいいのかしら?
よろしければご教授願います^^
【2010/03/25 20:25】 URL | TKAT #mQop/nM. [ 編集]

>TKATさん
『あなたならどうしますか?』は、初アームストロングとしてはベストだと思いますよ。この作家、長編だとわりと型が決まっているんですが、短編はけっこうバラエティに富んでいるので、その意味でもオススメしたいと思います。
気に入ったら、長編の『サムシング・ブルー』『見えない蜘蛛の巣』、『魔女の館』あたりをお読みになるといいかと。
【2010/03/25 21:38】 URL | kazuou #- [ 編集]


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男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。
主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。
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