『SFが読みたい!』2010年版
415209107XSFが読みたい! 2010年版―発表!ベストSF2009国内篇・海外篇
SFマガジン編集部
早川書房

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 毎年恒例の『SFが読みたい! 2010年版』(早川書房)が発売され、さっそく目を通してみました。正直、年度ベストにはあまり興味がないのですが、去年読んで衝撃を受けた『紫色のクオリア』(うえお久光)が日本編の10位に入っていたのは嬉しかったです。
 海外編では、3位の『洋梨型の男』(ジョージ・R・R・マーティン)、4位の『TAP』(グレッグ・イーガン)、8位の『時の娘』(中村融編)、13位の『金剛石のレンズ』(フィッツ=ジェイムズ・オブライエン)あたりが、既読のもの。
 毎回そうなのですが、普段とくに要注目しているわけではないジャンル、とくにライトノベルなどで、気になる作品が出て来たりすることがあるので、このガイドは重宝するんですよね。今回気になったのは、樺山三英の『ハムレット・シンドローム』(小学館ガガガ文庫)という作品。久生十蘭の『ハムレット』を翻案した作品らしいです。
 あとは、スルーしていたんですが、アラン・ムーアの『フロム・ヘル』は、やっぱり評価の高い方が多いようで、気になってきました。
 今年度版の特別企画は、『ゼロ年代SFベスト』。アンケートによるベスト、座談会、ベスト30ガイド、で構成されています。海外ものに関しては、ゼロ年代に翻訳された作品という解釈のため、レムの『ソラリス』、べスターやウルフ、ディッシュの作品も入っていたりします。
 そして一番楽しみにしている、各出版社の2010年刊行予定のコーナー。まず目を引かれたのが、河出書房の《ストレンジ・フィクション》という新シリーズです。《奇想コレクション》の長編版といった趣のシリーズのようで、第一段は、アブラム・デイヴィッドスン『エステル・ハージイ博士の事件簿』になるとか。
 《奇想コレクション》の方の新刊は、テリー・ビッスン短編集の第2弾です。うーん、ロバート・F・ヤングの『たんぽぽ娘』は、刊行予定が出てから何年も経っていますが、いっこうに出ませんね。
 国書刊行会からは、ビオイ=カサーレスの短編集『パウリーナの思い出に』、ジャック・ヴァンスの傑作集、『アルフレッド・ジャリ全集』あたり。あと気になるのは、扶桑社のリチャード・マシスン『縮みゆく人間』新訳版と日本オリジナル短編集ぐらいでしょうか。
 今年度版は、特別企画がちょっと物足りない感じでした。結局ベストのベストみたいな感じになっちゃってますし。テーマ別のガイドなんかをつけてくれると嬉しいんですけどね。
この記事に対するコメント

『たんぽぽの娘 』、出ませんねえ。
ヴァンスの傑作集が出るのですか。知りませんでした。
『縮みゆく人間』は、個人的に旧訳版の訳がちょっと雑だった気がするので、新訳版は非常に楽しみです。でも、訳者である本間有氏は年末に事故で亡くなられた(確認済みの情報)ようで、非常に残念です。訳者の遺作(遺訳っていったほうが、言葉的にはいいのかな)として読んでしまいそうです。
本間有氏の訳は好きだったので、非常に残念です。天使アンソロジーの企画書を出したところだったとか。ツイッターやっていると、あまりにも訃報がはいりすぎてしまって、衛生的にはよくないところがあるようです。

『運命のボタン』は伊藤典夫氏と尾之上浩司氏の訳業ということで、非常に楽しみですね。仁賀克雄氏じゃなくて、内心ほっとしています。わたしは別に誤訳が幾つあっても日本語として成立していればいい(結末が変わるほどであればまずいのですが)と思うタイプなのですが、読みながらどうもしっくりこない訳は流石に困りますので。
【2010/02/14 14:54】 URL | save #WGv/JGO2 [ 編集]

>saveさん
翻訳は好みでしょうが、個人的には『縮みゆく人間』、そんなに悪い訳だとも思いませんでしたよ。その当時、どんなにいい訳でも、時代が経てば古くなってはくるもので、現代に合わせた新訳をする意義はあると思います。

『運命のボタン』は、楽しみにしています。マシスンの短篇が訳される機会もそうあるものではないですしね。
【2010/02/14 19:34】 URL | kazuou #- [ 編集]

買いました!
私も今日、記事をアップしました。
表紙が“今日の早川さん”ではなかったので、心配しましたが、中にちゃんと登場で安心。
国内のベストは、あまり手を出す気持ちが起こらないのは、加齢なのか…。海外篇は、読んでみようかなという気になるのですけどね。
各ベストには積読本もけっこうあって、あせったりして。

なお、私は一冊も読んでない“宇宙英雄ローダン”の話題、これから月2冊の刊行になるって、そんなに売れてるのか! とビックリしました。
【2010/02/15 21:52】 URL | 迷跡 #- [ 編集]

ゲイマンはもっと評価されていいような気も
 ゼロ年代、票が割れなきゃイーガン圧勝なのに、佳作のチャンにさらわれた。

 たんぽぽ娘はおもわぬピーナツバター作戦の復刊で内容がかぶったのではという説も。
 時の娘に入ってたのは好きだけど、メリルのベストで読んだはずの「たんぽぽ娘」はあまり記憶にないのですが、今読むと感想は変わるかもしれませんね。

 扶桑社はたまに「地獄の世紀」みたいなバカホラーを出してくれるので、宇宙ウイルスに期待。
 実はサブジャンル別海外ホラー10作をキング以外は読んでいたホラー好きです。
【2010/02/16 00:04】 URL | ガンビー #NIrP5qws [ 編集]

>迷跡さん
興味のあるテーマを扱っている作品を除けば、僕も国内ものにはあんまり食指が動かないですね。
『ローダン』は固定ファンがけっこういるみたいですね。本国でもまだ続いているみたいだし、日本で言うと『ガンダム』みたいな位置づけなんでしょうか。
【2010/02/16 12:20】 URL | kazuou #- [ 編集]

>ガンビーさん
他の企画でもそうですけど、アンケートって、もっと大人数でとらないと、票割れしてしまうような気がします。分母が低いといえばそうなんでしょうが。
『たんぽぽ娘』は、印象的な作品ですけど、ヤングの作品の中でもそんなすごい傑作っていうわけでもないですよね。(ヤングの作品の魅力は、情緒面にあるので「傑作」という言葉も変ですが。)

扶桑社、たまに意外な作品を出してくれるので、侮れませんね。そういえば、以前出すといっていたハーラン・エリスンの短編集って消えてしまったんでしょうか。
【2010/02/16 12:29】 URL | kazuou #- [ 編集]

虐殺器官
仕事帰りに本屋を覗く時間があって、チラッと見てみましたが、その程度ではこれといった感想も…(笑)
ただ、ゼロ年代国内で1位を取った伊藤計劃氏の「虐殺器官」、私は昨年読んで結構収穫だと思ったクチでした。
このブログのジャンルと合うかどうか…と思われそうですが、戦闘SF系か?と思って読みだすと、のっけから出てくる幻想的(?)なビジョンに何だ?と思わされたりします。
現実世界を反映した国家レベルの話でもあり、でも贖罪をめぐる内面的な物語でもある…
とか書いて、他の方が読みたくなるのか疑問な気もしますが(笑)、ともあれ個人的にはラストも含め、おおっと思った作品でした。

『紫色のクオリア』、ちょっと買ってみました(笑)
国産品、私も食指が伸びない口ではあったのですが、ここ最近は、意識的に手を出そうとしてみています。
『ドイツ幻想小説傑作選』も買ったのですが、(値段の割には)あまりに薄いのでびっくりでした。気に入った作品があったというお話がなかったら、買わなかったかも…
【2010/02/17 01:53】 URL | Green #- [ 編集]

>Greenさん
伊藤計劃、すごく評価が高くなってますよね。気になっている作家ではあるんですが、どうも手を出しにくいなあと思ってました。Greenさんお勧めであれば、ちょっと読んでみようかと思います。

『紫色のクオリア』は、グレッグ・イーガンをライトノベルでやってみた、という感じの作品ですね。ライトノベル特有の文体が気にならないようであれば、楽しめると思います。

『ドイツ幻想小説傑作選』は、あまりに薄いのでびっくりしました。この収録作品数でこの値段はちょっとひどいかも。ドイツロマン派の作品をある程度読んでいる方にとっては、コストパフォーマンスは悪いですね。このジャンルの入門書的な意味では、いいアンソロジーだと思います。
【2010/02/17 12:21】 URL | kazuou #- [ 編集]


近年の、河出書房新社のがんばりはうれしいですね。この分野はどうしても、早川に頼りっぱなしになりがちですが、なにごとも特定のところに集中するのはよくありませんね。
【2010/03/06 09:20】 URL | 雫石鉄也 #- [ 編集]

>雫石さん
SFに限らず、ミステリ、幻想文学関連でも、河出書房はいい企画を出してくれてますね。《ストレンジ・フィクション》も楽しみです。
【2010/03/07 07:41】 URL | kazuou #- [ 編集]


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SFマガジン編集部編               早川書房 「SFが読みたい!2010年版」を読んだ。恒例の2009年のSFランキングだが、国内が伊藤計劃「ハーモニー」海外がチャイナ・ミエヴィル「ペルディード・ストリート・ステーション」がトップ。ハーモニーは未... とつぜんブログ【2010/03/03 20:58】

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Author:kazuou
男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主催。
主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。
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