2009年を振り返って(主に漫画の話)
ももきや 1 (GAコミックス) フライングガール 1 (IKKI COMICS) 笠辺哲 短編マンガ集 バニーズ ほか  IKKI COMIX 第七女子会彷徨 1 (リュウコミックス) アフター0―著者再編集版 (1) (ビッグコミックスオーサーズ・セレクション) 冒険野郎伝説 アヴァンチュリエ (BEAM COMIX) 刻刻 1 (モーニングKC) 福助 1 (モーニングKC) ペット リマスター・エディション 1 (BEAM COMIX) あめのちはれ 1 (B’s LOG Comics) かげふみさん 1 (バーズコミックス) オトノハコ (KCデラックス) 全能のノア 1 (BUNCH COMICS) 俺と彼女と先生の話 (WINGS COMICS)
 今年ももうすぐ終わりということで、ちょっと雑感を。

 今年は、小説作品だけではなくて、漫画作品をずいぶん読んだように思います。もともと漫画は好きでしたが、ここ何年かはそれほど積極的に読んでいなかったんですよね。なかなか忙しかった関係で、活字作品より手にとりやすかったというせいもあるかもしれません。知らなかった作家や作品に、積極的に手を出してみたりして。その中で、いくつか収穫もありました。とりあえず、順不同で主だったタイトルを挙げてみます。
 笠辺哲の作品(『ももきや』『フライングガール』『バニーズ』)、つばな『第七女子会彷徨』、岡崎二郎の諸作品(とくに『アフター0』)、クリストフ・クリタ『冒険野郎伝説 アヴァンチュリエ』、 堀尾省太『刻刻』、伊藤静の作品(『福助』『なんじゃもんじゃ』)、三宅乱丈『ペット』、びっけ『あめのちはれ』、小路啓之『かげふみさん』、岩岡ヒサエの作品(とくに『土星マンション』『オトノハコ』)、小野洋一郎『全能のノア』、トジツキハジメ『俺と彼女と先生の話』など。
 並べてみると、やっぱりSFやファンタジーがかった作品が多いです。いくつか簡単に紹介しておきましょう。
 今年一番はまった漫画家といえば、笠辺哲なんですが、この人の作品はどれも面白かったです。たいてい不思議な道具が出て来て、それによって主人公たちがドタバタに巻き込まれるというパターンが多いんですが、どれも絶妙なユーモアセンスで、笑えるんですよね。
 つばな『第七女子会彷徨』もおかしな発明品が出てくるという点では共通してますが、こちらは主人公が女子高生だけに、ちょっと小洒落た感じ。
 岡崎二郎は、しっかりした科学考証に裏打ちされた、安定した出来の短編が多く、安心して読める作家です。『アフター0』はオムニバス短編集で、『トワイライトゾーン』風の異色短編も多く収録されています。基本的にヒューマニズムの人なので、後味が良いのがいいですね。
 クリストフ・クリタ『冒険野郎伝説 アヴァンチュリエ』は、ハーフの作家だそうですが、今時珍しいタイプの冒険もの短編集。洗練された画風と、ジュール・ヴェルヌを思わせるストーリーが魅力的です。
 堀尾省太『刻刻』は、時を止まった世界を移動できる能力を持った一族と、それを狙う組織の戦いを描くサスペンス。三宅乱丈『ペット』は、人の精神を破壊できる超能力者たちをめぐる作品。
 びっけ『あめのちはれ』は、「雨」の間だけ性転換してしまう、五人の高校生の少年を描く学園もの。性転換ものなら、過去にも例がありますが、人数が五人というのは非常に面白い試みですね。トジツキハジメ『俺と彼女と先生の話』は、いわゆる「心霊もの」になるんでしょうか、霊に触れる能力を持った青年と少女を描く物語。最終話の「冥界くだり」のシーンは圧巻です。
 このあたりの漫画に関しても、そのうち細かくご紹介したいなと考えています。

 とくに感想やレビューはしなかったのですが、以前完集したとお伝えした《異形コレクション》シリーズ。最新の2、3巻は除いて、ほぼ読み終えました。初期のものよりも、新しい巻の方がより秀作が多くなっているように感じました。あとテーマが、伝統的なテーマのものより、ちょっと変わった趣向とかSFよりのテーマのものの方が面白く読めたような気がします。
 時間テーマをSFではなくホラーに引き寄せた『時間怪談』、かなり曖昧なイメージなので書きにくかったろうなと思わせる『夢魔』、幽霊にSF的な解釈を加えた『心霊理論』、もろSF的なテーマな『進化論』あたりが良かったですね。ショート・ショートを集めた『ひとにぎりの異形』なんてのも面白かったです。
 書き下ろしアンソロジーの常として、玉石混淆なのは否めませんが、全体的な水準で言えば、相当ハイレベルなアンソロジーになっているのは確かだと思います。

 毎年書いているような気がしますが、積読本は全然減らなかったです。というか、増えてます(笑)。とくに長編もの。長編に関しては、普段なかなか読めないので、正月休みを利用して読んでおきたいですね。とりあえず、レ・ファニュ『墓地に建つ館』とかM・G・ルイス『マンク』あたりは、なるべく早く読んでおきたいところです。
 
 これで、年内最後の更新になるかと思います。今年も一年お世話になりました。
この記事に対するコメント
オバQ復活!
漫画というと、今年の私的最大事件は、
長らく封印されていた「オバケのQ太郎」が、藤子・F・不二雄全集刊行開始に伴い、
解禁されたことでしょうか。

kazuouさん、こちらこそお世話になりました。
良い新年をお迎えください!
【2009/12/29 23:23】 URL | 迷跡 #8Vfzr.cc [ 編集]

>迷跡さん
迷跡さん、今年はお世話になりました。来年もよろしくお願いいたします。

藤子・F・不二雄全集は、差別用語なども含めて、初出を再現するという方針らしいですね。『ドラえもん』なんかも、いろんなバージョンを完全収録しているとかで、ちょっと気になっています。『オバQ』封印も、本来おかしな話なので、復活したのは慶賀すべきことですね。
【2009/12/30 08:34】 URL | kazuou #- [ 編集]

よいお年をお迎え下さい
kazuouさん>
いつもkazuouさんの本の紹介を参考にさせていただき感謝しています。
来年もよろしくお願いいたします。

今年はマクロイの絶版3部作のうち2作も復刊するといううれしい驚きがありました。
来年もうれしい驚きがあるようにと思っています。

【2009/12/30 16:48】 URL | fontanka #- [ 編集]

>fontankaさん
fontankaさん、今年もお世話になりました。来年もよろしくお願いいたします。

マクロイ復刊は驚きでしたね。来年も素敵な作品に出会えることを祈ってます。
【2009/12/30 17:45】 URL | kazuou #- [ 編集]

ことしもお世話になりました
積読本は増えていく一方…。
よくわかります(笑)。

いま、コッパードの「天来の美酒/消えちゃった」を読んでいます。
これはすごいですね!
もったいなくて、ちびちび読んでいます。

ことし驚いたのは、みすず書房がアメコミ「フロム・ヘル」を出版したことでしょうか。
値が張るので買ってはいないのですが…。
同じアラン・ムーアの「ウォッチ・メン」は、あまりの面白さにびっくりしたおぼえがあるので、きっと「フロム・ヘル」も面白いにちがいないと思い、そしてスルーしています(笑)。

アメコミでは「ヘルボーイ」がB級ホラーの味があって楽しいですよ。もし未読でしたらご覧になってみてください。

では、本年もお世話になりました。
よいお年をお迎えください。
【2009/12/30 18:45】 URL | タナカ #- [ 編集]

>タナカさん
タナカさん、来年もよろしくお願いいたします。

コッパード、良いですよね。オリジナリティが半端でないです。読んでいると、ことさら「幻想小説」や「怪談」でなくてもよくなってきますし。このレベルの作品が、まだたくさん未訳だとすると、すごい宝の山ですよね。

僕も『ウォッチ・メン』はすごく面白かったんですが、やっぱり『フロム・ヘル』は迷ってます。ネットでの評判などを見ると、傑作だけど、すごく読みにくそうですし。『ヘルボーイ』も気になっている作品なので、機会があればぜひ。
【2009/12/30 21:26】 URL | kazuou #- [ 編集]

MVDも・・・
今年は復刊本やラノベでも注目するものが多かったように思います。
あと個人的に、pops系の音楽のビデオもSFやファンタジー色のものが多かったような
気がしました。
Mikaの『rain』、Tokio hotel『Automatic』もさることながら、Back street boysの『Straight through my heart』にはオドロキでした。(歌だけ聞いてれば判らない)

積読本は本を読めば読むほど増えていきますね。
多分、外界と接触を絶ってひたすら手元にある本を読まなければ減らないでしょう・・・。

来年も興味深い本の感想を楽しみにしています。
よいお年をお迎えください。
【2009/12/31 07:05】 URL | shen #lYoN0asc [ 編集]


過去のものも見させていただきましたが、今年はファンタシー系でなんか充実しているような気がしました。
それにしても四年近くこんなに安定した回数で更新を続けているというのはすごいですね。
しかもいろんな国の作家を詳細に。
来年も見させていただきます。
来年もあなたにとっていい年になることを。
【2009/12/31 14:54】 URL | save #- [ 編集]

>shenさん
世知辛い世の中だけに、ファンタジーが流行る…というわけでもないんでしょうが、音楽も小説も「夢」を見させてくれるものの方が楽しいですよね。

積読本は、読んだことのある作家や作品よりも、なるべく馴染みのないものの方から消化するようにしています。既にお気に入りになっている作家だったら、たぶん気に入るだろうから後回しでもいいかな、と。

ともあれ、来年もよろしくお願いいたします。

【2009/12/31 16:05】 URL | kazuou #- [ 編集]

>saveさん
過褒の言葉、ありがとうございます。ただ、自分の好きなものを取り上げているだけですよ。やっぱり興味があるものの方が、ブログも長続きしますし。

まだ知り合ったばかりですけれども、長らくお付き合いしていけるといいな、と思っています。
それでは、来年もよろしくお願いいたします。
【2009/12/31 16:10】 URL | kazuou #- [ 編集]

良いお年を
初耳の漫画家さんが多いです。
これらの漫画の紹介記事を楽しみにしたいです。

今年もkazuouさんのブログから、たくさんの情報をいただきました。
本当に参考にさせてもらっています。
来年もどんな記事が載るか、ワクワクしながら読ませていただきますね。
【2009/12/31 17:14】 URL | タツナミソウ #- [ 編集]

>タツナミソウさん
タツナミソウさん、今年はお世話になりました。

普段、けっこう漫画は読んでるんですけど、あんまり紹介する機会がなかったので、最後にまとめちゃいました。伊藤静『福助』とかトジツキハジメ『俺と彼女と先生の話』あたりは、タツナミソウさんも気に入りそうな気がするので、機会があったらぜひ。

来年もよろしくお願いいたします。
【2009/12/31 19:58】 URL | kazuou #- [ 編集]

はじめまして。
いつも、楽しく読ませて頂いてます。
最近、マンガは読んでいなかったのですが、早速、「俺と彼女と先生の話」
を今、読んでいるのですが面白いですね。
今年も色々、参考にさせて頂きます。。
【2010/01/01 14:04】 URL | マルケス #- [ 編集]

>マルケスさん
マルケスさん、はじめまして。コメントありがとうございます。
漫画作品に関しては、専門のレビューサイトやブログがたくさんあるので、殊更このブログで紹介するまでもないかな、と思っていたのですが、それらのサイトとは違った視点でのレビューもできるんじゃないか、と最近思い始めました。
あと、このブログを見てくれている人って、翻訳小説のファンが多いと思うのですが、そういう人たちにこそ読んでもらいたい作品って、たまにあるんですよね。
そんなわけで、漫画作品のレビューもちょっとずつ、やっていきたいなと考えてます。

『俺と彼女と先生の話』は、題材が題材だけに、もっとどろどろしそうなところを、あっさりと仕上げているところに才気を感じますね。
【2010/01/01 19:12】 URL | kazuou #- [ 編集]


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男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。
主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。
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