ナイトビジョンその3
 今週放送分の『ナイトビジョン』のレビューです。

「木が倒れても」
 大学生のデヴィンとガールフレンドのベサニー、友人のセスは、車が横転し、湖に車ごと転落してしまう。三人とも、無事に湖面から顔を出し、助かったことを喜び合う。しかし、沈み行く車の中を見た瞬間、彼らの顔は硬直する。車の中には三人の死体が見えたのだ! そういえば、車を脱出した記憶など全くない!
 自分たちは幽霊なのか? 三人は驚愕するが、あることに思い当たる。木が倒れても、その音を聞く人間がいなければ、音がしないのと同じように、人間の死もそれを確認する人間がいなければ、死ぬことはできないのではないか。三人はこの事実を伏せて普通の人間として生きてゆこうとする。しかし、信心深いデヴィンは、自分たちの行為が罪になるのではないかと考え、神父に事実を告白してしまう…。
 その死を他人に確認してもらわなければ、死んだことにはならない、というテーマを思いついた時点で、成功は約束されたようなものです。主人公の信心深さが、飽くまでも生き続けたいという他の二人の思いと葛藤を起こすあたりも、人間ドラマとして、よく出来ています。おそらくオチは読めてしまうでしょうが、デヴィンに対し、他の二人が自分たちの死を隠そうと行動するあたり、非常にサスペンスに富んでいます。
 この作品、もしかしたら、フレドリック・ブラウンの『沈黙と叫び』が発想元なのではないかと思うのですが、どうでしょうか。ちなみにこの「森の中で木が倒れたとき、その音を聞く人間がいなくても、音がしたといえるのか?」という問題は、哲学の認識論ではけっこう有名な問題のようです。

「居住者」
 離婚して一人暮らしをしているメアリー。彼女はキッチンに、使った覚えのない汚れた皿が出ているのに驚き、警察に通報する。しかし警察は、侵入の跡もなく、盗まれたものもないことから、とりあってくれない。その後も化粧品や服などが散らかっていたり、動かされていたりすることが続き、メアリーはおびえる。家の中に自分以外のだれかが住んでいる! そしてある夜、大きな音をさせて部屋に向かってくる足跡におびえたメアリーは、クローゼットに隠れ、警察に通報するのだが…。
 異常に神経過敏な主人公の描写が伏線になっています。他にもレストランの支払いでカードが使えなかったこと、貴金属店に時計を売りにいくシーンなど、結末のオチにつながる伏線が、実に丁寧にはりめぐらされているのには、感心しました。
 主人公に、やたらとちょっかいを出してくる男が登場するのですが、この男が実は侵入者なのではないかと思わせるような作りになっています。このミスディレクションも秀逸。
 『シックス・センス』『アザーズ』などに似ているといえば、結末も何となく予想がつくと思うのですが、全体に丁寧な作りで楽しめます。

テーマ:日記 - ジャンル:日記

この記事に対するコメント
音はしたか?
森の中で木が倒れたとき、その音を聞く人間がいなくても、音がしたといえるのか?
このような観念論の議論って割と好きです。
「誰も知覚しないものは存在するか?」
「誰も知覚しない状況で”森の中で木が倒れて音がした”ということを私は想像できる。即ち誰も知覚しなくてもものは存在する(音がしたと言える。)。」
「いや、あなたは”木が倒れて音がしたという観念”を知覚している。そもそも心が知覚しているものは総て観念なのであり、観念の外に物質は存在しない。」
したがって、誰もあなた方三人の死を知覚していないのだから、あなた方は死んでいないのです。あれれ‥


【2006/03/13 23:43】 URL | 迷跡 #- [ 編集]


哲学上の議論にはあまり詳しくないのですが、この『森の中の木が倒れる音』の議論の場合は、「音」をどう定義するかという観点で、現実的な解決が図られているようですね。「音」の定義に人間が知覚するという条件があれば、「音」はしなかったといえるし、そうでなければ、人間が知覚しなくても「音」がしたといえる、というものです。
フレドリック・ブラウンはたぶんこうした観念論に興味があった人だと思います。彼のSF作品にはそういうテーマを扱ったものが多くありますし。『火星人ゴーホーム』とか『さあ、気ちがいになりなさい』も、認識論的なテーマを扱ってますよね。
【2006/03/14 09:14】 URL | kazuou #- [ 編集]


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男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。
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