ループものライトノベル4題
「時間SF」は、個人的に大好きなジャンルで、この手の作品は極力読むようにしています。なかでも、時間の繰り返しを描く「ループ」ものには、特に目がありません。最近のライトノベルで、この「ループ」ものが多いということを耳にはさんだので、いくつか評判のよいものを読んでみました。
 結果としては、なかなかの収穫だったと言えるかと思います。それでは以下、いくつか紹介していきましょう。

4086302195ALL YOU NEED IS KILL (集英社スーパーダッシュ文庫)
集英社 2004-12

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 桜坂洋『ALL YOU NEED IS KILL』(集英社スーパーダッシュ文庫)
 地球人は、意思の疎通すら困難な異星人「ギタイ」との戦争を続けていました。初年兵キリヤ・ケイジは、初の戦闘で死亡していまいますが、気が付くとなぜか意識を取り戻していました。しかも、何とそこは出撃前の朝。出撃して死亡するたびに、同じ朝に戻ってしまうのです。過去へのループにとらわれたと気づいた彼は、ループを利用して戦闘技術を磨いていきます…。
 同じ時間を繰り返す「ループ」ものでは、泥沼にはまった状態を繰り返してしまう、というのが読みどころの一つになりますが、これはそれを極端することによってサスペンスを高めています。何しろ、気を抜いたらすぐ自分が死んでしまうのですから。
 ストーリー上はわりとシンプルな話なのですが、後半それを乱すような要素が投入され、物語が単調になるのを防いでいます。傑作といっていいかと思います。

 
4048674617空ろの箱と零(ゼロ)のマリア (電撃文庫)
アスキーメディアワークス 2009-01-07

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 御影瑛路『空ろの箱と零のマリア』(電撃文庫)
 平凡な高校生である星野一輝は、ある日転校してきた少女、音無彩矢から、お前を殺す、と宣言されます。世界は同じ一日をすでに何万回と繰り返しており、この繰り返しを起こしている原因は、星野一輝にあるというのです。それを終わらせるために、彼を殺さなければならない…。
 繰り返しに対し、主人公も記憶を失ってしまう、というところがユニークです。最初は主人公が「ループ」を引き起こしていると思われていたのですが、徐々に「真犯人」が別にいるだろうことが仄めかされます。
 犯人探しの面白さも加味したミステリータッチの作品。キャラクターに「厚み」があり、ライトノベルとは思えない重厚な読みごたえがあります。

 
4094511555クイックセーブ&ロード (ガガガ文庫)
染谷
小学館 2009-08-18

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 鮎川歩『クイックセーブ&ロード』(小学館 ガガガ文庫)
 榊潔人は「死ぬ」ことによって、過去に「セーブ」した時間・場所から人生をやり直す能力を持っていました。ただし「セーブ」できるポイントは常にひとつであり、上書きしてしまえば、以前の「セーブ」ポイントは消えてしまうのです。連続殺人に巻き込まれた幼なじみの姉妹を助けるために、潔人は人生を繰り返すのですが…。
 「セーブ」や「ロード」という、完全にゲーム的な設定で描かれた作品です。それはいいのですが、やり直す手段が「死ぬ」ことなので、作品中で何回も主人公が自殺を繰り返すのは、なんとも後味が悪いです。しかも、題材となる事件も陰惨なものなので、なおさらです。
 お話自体は真摯なもので、青春ものとしては悪くないのではないかと思います。ところどころで、ご都合主義的な展開が起こるのと、そもそも物語の前提条件の「セーブ&ロード」能力を受け入れられるかどうかで、この作品を楽しめるかどうかが決まりそうです。クライマックスで示される解決手段は、かなり斬新なアイディアかも。

 
4044743010サクラダリセット CAT, GHOST and REVOLUTION SUNDAY (角川スニーカー文庫)
角川書店(角川グループパブリッシング) 2009-05-30

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 河野裕『サクラダリセット』(角川スニーカー文庫)
 なぜか理由はわからないながらも、住民の大半が特殊能力を持っている街、咲良田市。記憶を保持する能力をもつ少年、浅井ケイは、時間を三日分巻き戻すことのできる能力を持つ少女、春埼美空とコンビを組み、能力者たちを管理する「管理局」の仕事をしていました。
 ある日持ち込まれた「死んだ猫を生き返らせてほしい」という依頼から、二人は思いもかけない事件に巻き込まれることになります…。
 「リセット」能力に対して、いろいろ条件をつけているのが特色です。能力者の春埼美空自身も「リセット」に対する記憶をとどめておくことができず、記憶を保てる浅井ケイと組んで初めて、その能力を発揮できる、という設定が秀逸。
 あらすじだけ読むと、超能力者たちのバトルもの、といった印象を受けますが、謎解きの過程や登場人物の描き分けも丁寧で、読後感も悪くない良作です。

 あと、テレビアニメ版で話題になった、『涼宮ハルヒの憂鬱』シリーズの短篇『エンドレスエイト』なんてのもありますね。短篇ということもあり「ループ」ものとしては、シンプルな作品でした。
この記事に対するコメント
お、ラノベ!
ループというと、無限ループが基本形(?)かもしれませんね。
無限の概念と組み合わせたアイディア・ストーリーもできそうな。
よく使われる無限の部屋をもつホテルの話。
満杯のところに宿泊客がやってきたので、1号室の客は2号室に、2号室の客は3号室に、…N号室の客はN+1号室に移動させて、首尾よく1号室に泊まらせたという話なんか、ループと組み合わせたら…話になりませんね。
【2009/10/13 20:34】 URL | 迷跡 #8Vfzr.cc [ 編集]


ライトノベルって、時間SFが多いんですね。
SFが入っているようなもののほうが受け入れられやすいんでしょうか。にしても、さんざん書かれている時間ものを、いろんな違った形で提示してくるのはすごいですね。
ハルヒシリーズは前から読んでみたいなと思っているのですが、ラノベの棚ってあまり行かないので、すっかり買い忘れています。
【2009/10/14 21:12】 URL | green-flow #- [ 編集]

>迷跡さん
ループ+無限といったら、ハインラインの『輪廻の蛇』とか『時の門』あたりでしょうか。あそこまで複雑なパラドックスはなかなかないと思いますが。
ループものが好きなのは、やはりその論理遊戯性と、極限状況におけるサバイバル性と、二つの要素が同時に楽しめるからでしょうね。
【2009/10/14 21:56】 URL | kazuou #- [ 編集]

>green-flowさん
「時間SF」に限らず、SF要素の強いものが多くなっているようですね。
ライトノベルだといっても、いろいろな趣向を凝らしたものが多いです。ハードSFファンだと突っ込みどころがいっぱいあるんでしょうけど、僕みたいなゆるいSFファンには楽しめましたよ。
『ハルヒ』は、意外とオーソドックスなSFネタが多いので、SFファンの方が楽しめるかもしれません。
【2009/10/14 22:32】 URL | kazuou #- [ 編集]

児童書ループもの
児童書にもループものがあります。
「金曜日がおわらない」(アニー・ドルトン)とか。
児童書は円環構造の作品(いって帰ってきたりする作品)が多いんですが、ぐるぐる回していたらひもが切れちゃったみたいな作品が、10代後半向けの作品になりやすいのかなあと感じています。
【2009/10/18 23:14】 URL | タナカ #- [ 編集]

面白そうですね
児童文学にもあるとは初耳です。これだけ、いろんな作品に使われていると「ループ」自体には驚かなくなってきますね。「ループ」を使ったうえで、どれだけ工夫を凝らしているか、といった面に目が向いてきます。
「金曜日がおわらない」もなかなか面白そうなので、機会があったら、読んでみたいと思います。
【2009/10/19 22:16】 URL | kazuou #- [ 編集]


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男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主催。
主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。
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