機械のための機械  ヒース・ロビンソン
4480877126わが庭に幸いあれ―紳士の国の園芸術
K.R.G. Browne W.Heath Robinson 中尾 真理
筑摩書房 1998-03

by G-Tools
1585679801Heath Robinson Contraptions
Geoffrey Beare
Overlook Pr 2007-11

by G-Tools

 SF作家の星新一は、欧米の一コマ漫画に興味を持っていて、その探求成果を『進化した猿たち』(新潮文庫)という楽しい本にまとめています。これはテーマ別にスクラップした一コマ漫画を、文章とともに紹介するというものでした。僕がこの手のジャンルの漫画に興味を持ったのも、おそらく、この本がきっかけだったと思います。
 その後、一コマ漫画を扱った本をいくつか読む機会がありましたが、とりわけ印象に残ったのが、やたらと機械が出てくる漫画でした。本来、機械というものは実用に役立てる便利なもののはずですが、その漫画では、やたらと複雑化して、どう考えても役に立つとは思えない機械がところ狭しと描かれていました。
 気になったものの、その機械の漫画の作者名はわかりませんでした。こうした一コマ漫画を扱った本は、以前は作者名を記していないものが多かったのです。そんな折り、古本屋で手に入れた『文藝春秋デラックス 世界のマンガ』(文藝春秋)という本で、ようやく機械の漫画の作者名を知ることができました。
 その名は、ウィリアム・ヒース・ロビンソン。イギリスで19世紀末から20世紀前半に活躍した有名な画家兼漫画家でした。家族がみな画家の一家で、兄のチャールズ・ロビンソンなどは、非常に美しい絵を描いています。
 ヒース・ロビンソンにも正統的な挿絵の仕事がありますが、彼を有名にしたのは、やはりナンセンスな機械を描いた一連の漫画です。単なる日常的な作業をするための巨大で複雑な機械、生活を便利(不便)にするための奇想天外なアイディア。今見てもユーモアにあふれた、楽しい絵なのです。
 彼の絵の魅力は、その機械のナンセンスさはもちろん、込み入った機械のディテールまで丁寧に細かく描かれているところでしょう。実際に3次元で作ろうと思えば作れるほど細かく描かれていて、実際に作ってみた例もあるようです。
 日本語で読める本は少ないのですが、筑摩書房から出た『わが庭に幸いあれ 紳士の国の園芸術』(K.R.G.ブラウン文・ヒース・ロビンソン絵 中尾真理訳)はお勧めの本ですね。一見、園芸に関する蘊蓄をユーモアを交えて語ったエッセイ集みたいに見えるのですが、その実、完全なおふざけで書かれた冗談みたいな本です。コーリイ・フォードの『わたしを見かけませんでしたか』(ハヤカワepi文庫)と似たタッチの本と言えば、分かる人もいるかもしれません。
 そして注目すべきは、ヒース・ロビンソンの挿絵です。ここでも彼は園芸をテーマに、奇想天外な機械を描いています。「屈まなくてもすむ方法」「拡声器つき鳥脅し装置」「猫用水かけ装置」「花粉飛ばし器」「鳥が動かすカラスの行水式バード・バス」など、ユーモアにあふれた機械の数々が紹介されます。ブラウンの文、ヒースの絵、ともに楽しめる第一級の「ユーモア・スケッチ」作品です。
 ヒース・ロビンソンの漫画をまとめて見たいという方には、洋書ですが近年出た『Heath Robinson Contraptions』(Overlook Pr)がお勧め。ヒース・ロビンソンの漫画の傑作集で、カラー図版も収録されています。
ヒース1 ヒース2 ヒース3 ヒース4 ヒース5 ヒース6 ヒース7 ヒース8

テーマ:アート - ジャンル:学問・文化・芸術

この記事に対するコメント
素晴らしい挿絵を紹介してくださりありがとうございます♪
こんばんは^^

こちらで初めてヒース・ロビンソンを知り、早速『わが庭に幸いあれ 紳士の国の園芸術』を借りてきました。こういう画、とっても好きなんです^^

で、思ってたより文章が可笑しく面白く、ヒース・ロビンソンとはいいコンビですね。こりゃ園芸に興味がないド素人でも十分楽しめます。ヒース・ロビンソンをいろいろ調べていると機械系の画だけではなく、いろんな雰囲気の画を描かれるんですね。

http://www.bpib.com/illustrat/whrobin.htm
↑右上の線の細い画も好きですが、その下のミュシャのような雰囲気の画も好きです。カラーも収録されてるという『Heath Robinson Contraptions』も見たいのですが、結構お高い^^;図書館にリクエストしてみようかなぁ。

P.S TBさせていただいたんですが、どうも最近調子が悪くて…(><)。また後日チャレンジさせていただきますね。
【2009/06/05 19:27】 URL | TKAT #mQop/nM. [ 編集]

>TKATさん
ヒース・ロビンソン、TKATさんには気に入ってもらえると思ってました。
もともと画家の一族出身なので、画力には定評があるんですよね。ふつうの挿絵も充分魅力的だと思います。
でも、やっぱり機械を描いた一連の作品の楽しさは格別です。先日読んだアンディ・ライリーの『うざい発明』とテーマがかぶるんですけど、ヒースの作品と比べてしまうと、ライリーの方は随分かすんでしまいますね。
ヒースの挿絵目当てで読んだ『わが庭に幸いあれ』も、文章の方も面白くて楽しめたのは良かったです。しゃれたユーモアエッセイという感じでしたね。
【2009/06/06 08:01】 URL | kazuou #- [ 編集]


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男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主催。
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