最近入手した本など
 長年探していた本が、最近いくつか入手できました。長いこと探していれば、ある程度の探求書は集まるものですが、それと同時に欲しい本も増えてくる、というのが世の習い。
 インターネット時代になって、よっぽどのレアケースでなければ、だいたいの本は手に入ります。ただ、希少本は高値で落ち着いてしまうので、これはこれで手に入りにくいのは確かなのですが。
 例えば、悪名高いヘレン・マクロイの『幽霊の2/3』『殺すものと殺されるもの』なんか最たるものですね。珍しい本であるのは確かですが、文庫本一冊に数十万というのは、いくらなんでもやり過ぎの気がします。先日、創元社からこの2冊は復刊予告が出されたので、この極端な値付けも落ち着くとは思いますけど。
 さて、以下、いくつか入手した本についてご紹介します。

 ジュール・シュペルヴィエル『ひとさらい』薔薇十字社
 澁澤龍彦訳。内容は以前に図書館で読んでいましたが、本自体は持っていなかったので嬉しいです。「ひとさらい」の夫婦がこどもをたくさん誘拐してきて育てる…という、シュペルヴィエルらしいファンタスティックなストーリーです。澁澤龍彦の翻訳全集にも収録されているので、読むこと自体はわりと容易です。

 後藤優編訳『カンタービル館の幽霊』珊瑚書房
 これ、あんまり聞かない書名でしょうが、ゴースト・ストーリーのアンソロジーです。昭和40年発行と、わが国ではわりと初期に出版された先駆的なアンソロジーです。表題作のオスカー・ワイルド作品とか、リットンの『幽霊屋敷』、ジョン・ケンドリック・バングズの『ハロウビイ館の幽霊』など、今となっては他の本で読めるものばかりなので、コストパフォーマンスはそんなに高くありません。編者のあとがきを読むと、あんまり怪奇小説ジャンルに愛着のある人ではないようなのが残念。

 アウグスト・モンテロッソ『全集・その他の物語』書肆山田
 グアテマラの作家モンテロッソの短編集です。わが国では、干し首をビジネスにしたアメリカ人を風刺的に描いたユーモア作品『ミスター・テイラー』や、「超短編」の元祖として知られる一行だけの作品『恐竜』が有名でしょうか。ちょうど、この2作品も本書に収められています。どの作品もブラック・ユーモアが利いており、ひじょうに才気の感じられる作品集です。異色短編が好きな人にはオススメです。

 《イメージの冒険》シリーズ全7巻 河出書房新社
 それぞれのテーマに沿って編集されたムック形式のアンソロジー。とはいっても、小説ではなく、エッセイや評論を集めたものです。テーマは『文字』『地図』『神話』『イラストレーション』『絵本』『写真』『少女』。豊富な図版とわかりやすい編集が見事です。とくに『イラストレーション』『絵本』の巻は、美しいイラストや本が紹介されていて、ブックガイドとしても楽しいです。

 内沼晋太郎『本の未来をつくる仕事/仕事の未来をつくる本』朝日新聞出版
 「ブックコーディネーター」である著者の、本にかかわる様々なトピックについて書かれた本です。いままで存在しなかった「ブックコーディネーター」という職を作ってしまった人なだけあって、とても刺激的な試みにあふれています。書店のディスプレイから始まって、本に関わる現代芸術、そして本そのものに対する人間の関わり方にも考えを巡らせています。本好き、本に関心のある人なら、読んで損はない本です。

 Luis-martIn Lozano『The Magic of Remedios Varo』D Giles Ltd; Bilingual
 これは洋書。ファンタスティックな絵を描く女流画家、レメディオス・バロの作品集です。バロの画集で、日本語で手に入る本といえば、既に絶版になってしまったリブロポート版作品集と、一度だけ開かれた展覧会の際の図録しかありません。どちらも入手難で、高値がついています。
 本書は、アメリカで開かれた展覧会の図録を書籍化したものらしいのですが、収録作品も多く、印刷も綺麗です。日本版図録に収録されていない作品も収録されています。Amazonで、2000円前後で買えるので、日本語版の作品集を買うよりは、コストパフォーマンスもいいと思います。
 ちなみに、以前書いたバロの記事はこちら

 Simon Heneage and Henry Ford『Sidney Sime Master of the Mysterious』THAMES AND HUDSON
 これも洋書。ロード・ダンセイニの挿絵で知られる、ファンタジー画家シドニー・シームの画集です。シームの絵は、見るたびに惚れ惚れとしてしまいますね。

 ウィンザー・マッケイ『夢の国のリトル・ニモ』PARCO出版局
 アメリカ漫画黎明期の傑作にして、現在のアニメの源流ともいえる絵本です。ずっと欲しかったのですが、下手すると、10万円単位の値がついていて、今まで手が出ませんでした。というわけで、もったいなくてまだ読んでいません。最近入手したなかで、いちばん嬉しい本ですね。

 最後におすすめしておきたい本をひとつ。

 荻巣康紀『マイナー通信 海外ミステリ短編の愉しみ』
 ミステリファンの方が発行された、いわゆるファンジンなのですが、翻訳ミステリ短編についてまとめられた特大号です。有名無名あわせて、海外作家50人の翻訳短編リストと短評が掲載された、非常な労作です。
 収録作家は、ロバート・アーサー、A・H・Z・カー、ジェラルド・カーシュ、D・S・ディヴィス、パット・マガー、ネドラ・タイヤ、パトリック・クェンティン、デヴィッド・イーリイ、ミリアム・アレン・デフォード、アンソニー・ギルバート、ローレンス・G・ブロックマンなど多数。翻訳短編ひとつひとつに、簡単な梗概と翻訳書誌が掲載されており、短編ファンにとっては、とても役に立つリファレンスになっています。
 こちら(http://homepage1.nifty.com/maiden/doujinshi/doujinshi01.html)で委託販売していますので、興味のある方はどうぞ。
この記事に対するコメント

こんばんは。
マクロイの復刊はありがたいことですね。好きな作品なので、「買います」→待った甲斐ありです。

探求本の入手、おめでとうございます。「カンタービル館の幽霊」はワイルドの短編ではよんでいるんですが、アンソロジーがあるとは知りませんでした。
いつもながらディープなラインナップで感服いたします。

話は違うのですが、kazuouさんのブログで知った「金剛石のレンズ」は夫が大変気に入りまして、「読むのがもったいない」とまで言ってます。
お礼申し上げます。

3-4月と仕事が忙しく、本を読むヒマもなかなかなったのですが、やっとおちついて読書できるかなとおもっているところです。
【2009/04/22 20:49】 URL | fontanka #- [ 編集]

>fontankaさん
マクロイの2作は、新訳が出たら読んでみようと思ってます。

『カンタービル館の幽霊』は、タイトルだけは知っていて、いずれ入手したいと思っていたのですが、幸い手に入れることができました。収録作品は、有名なものばかりで、未読のものが少なかったんですけどね。訳はわりと良かったです。

『金剛石のレンズ』は僕も大好きな作品なので、気に入っていただけたのは、とても嬉しいです。
【2009/04/23 07:05】 URL | kazuou #- [ 編集]


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発売から1ヶ月半ほどたち、たくさんの方に読んでいただいているようで、ぼくが見つけさせていただいたブログ記事などを、まとめてご紹介したいと思います。 本当はその都度ご... 本の未来をつくる仕事/仕事の未来をつくる本【2009/05/04 17:03】

プロフィール

Author:kazuou
男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主催。
主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。
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