ロボットの冒険  風見潤・安田均編『ロボット貯金箱』
ロボット貯金箱
ロボット貯金箱―海外ロボットSF傑作選 (1982年) (集英社文庫―コバルトシリーズ)
集英社 1982-06

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 かって、集英社文庫コバルトシリーズから出ていた、一連のオリジナルSFアンソロジー。その一冊『ロボット貯金箱』(風見潤・安田均編 集英社文庫コバルトシリーズ)は、題名どおり、ロボットに関わるSF短編を集めた作品集です。

 ヘンリー・カットナー『ロボット貯金箱』 ダイヤモンド製造機を持つ大富豪バラードは、次々とダイヤを生み出しますが、それらのダイヤはあっという間に盗まれてしまいます。業を煮やしたバラードは、技術者ガンサーに、誰にも捕まらないロボットの製作を命じます。ロボットの内部にダイヤを入れ、金庫代わりにしようというのです。無事完成したロボットは期待通りの性能を発揮しますが、ガンサーが暗殺されてしまったことから、制御が利かなくなってしまいます…。
 金庫代わりのロボットが暴走する、というテーマの物語です。設定はコメディ風なのですが、話自体がやけにシリアスに描かれているので、いまいち盛り上がらない憾みがあります。

 ケイト・ウィルヘルム『アンドーヴァーの犯罪』 女嫌いの独身主義者ロジャー・アンドーヴァーは、妻帯しないことでビジネスチャンスを逃しているのではないかと考えます。しかし、自分の生活を邪魔するような女には興味がない。彼は『アンドロイド株式会社』に、ひそかに女性型ロボットを作らせます。リディアと名付けられたロボットは、ロジャーの妻として友人たちに紹介されますが、彼女をロボットだと見破る人間はいません。完璧な妻を演じるリディアに、ロジャーは満足しますが…。
 女嫌いの男のもとにやって来た女性アンドロイド。センチメンタルな話になるのかと思いきや、彼女に執着するようになった男のサイコ・スリラー的な展開に。毛色の変わった作品です。
 
 テリー・カー『ロボットはここに』 いつの間にか手にしていた紙切れに書かれた電話番号。いつどこでこんな番号を書いたのだろうか? 疑問に思った「わたし」は、ひょんなことからある建物を訪れます。そこで「わたし」を出迎えたのは、一体のロボット。彼は、歴史を修正し、改善するために未来からやってきたというのです。しかも「わたし」は、歴史に影響を及ぼす存在であり、しばらくの間、拘束をする必要があるのだと…。
 世界は未来のロボットによって改変されていた、という一種のディストピアSFです。現在の一つの世界だけでなく、枝分かれするパラレルワールドまでをも改変するという発想が、なかなかユニーク。

 キース・ローマー『《BOLO》』 かっての戦争で使われ、地中に埋もれていた戦争用の兵器《BOLO》。人工知能を持つそれは、ふとしたきっかけで目覚め、敵を排除するために前進を始めます。制御の利かない機械に対して、協力を申し出たのは、かっての老兵でしたが…。
 戦争用に作られた兵器に対して呼びかける老兵の叫び。彼の思いは通じるのか…。オーソドックスながら「いい話」に仕上がっています。 

 クリフォード・D・シマック『地球のすべての罠』 600年もの間、バーリントン家の家族として暮らしてきた家庭用ロボット、リチャード・ダニエル。一族の最後の生き残りが死んだ後、彼もまた遺産のひとつとして処分されようとしていました。やがて自分の記憶が消去されてしまうことを知ったリチャードは、自らの記憶を守るために、地球から逃げ出す決心をします。宇宙船に密航した彼は、ハイパースペースの影響により、特殊な能力を身につけたことを知りますが…。
 記憶を失うことは、自らを失うことだ。自らのアイデンティティーを守るため、放浪の旅に出たロボットは、やがて自分の存在意義を見つけることになります。少々感傷的ながらも、希望に満ちた結末には心うたれるものがあります。集中一の力作といえるでしょう。

 全体にかなりオーソドックスで、古いタイプのSF作品が集められています。刺激には欠けますが、安心して読めるアンソロジーではありますね。この本だけでしか読めない短編が多く収録されており、ラインナップ的にも貴重です。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

この記事に対するコメント
懐かしい名前が並んでる
特にクリフォード・D・シマックはけっこう好きでした。
田園風と称されるシマックの作風ですが、アメリカの地方都市のイメージを植えつけられました。その後スティーヴン・キングによってそのイメージがまた変えられたりするんですね。
【2009/02/01 12:01】 URL | 迷跡 #- [ 編集]

>迷跡さん
シマックは、ブラッドベリなどと並んで「情緒」が豊かな作品が多いので、日本人好みなんでしょうね。ユーモアセンスもけっこうあって、僕も好きな作家です。
シマックの描く「田舎」は、のんびりしていて心地よい感じがしますね。かなり美化された「田舎」像なんでしょうが、その美化をはぎとってしまったのが、スティーヴン・キングだといえるのかもしれません。
【2009/02/01 18:53】 URL | kazuou #- [ 編集]


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