短篇の宝庫 《ソノラマ文庫海外シリーズ》
13人の ご先祖様は 魔夜中の黒ミサ 魔界王国

 1984年ごろから、ソノラマ文庫から刊行された《ソノラマ文庫海外シリーズ》というシリーズがあります。もともと国内作家専門だったソノラマ文庫から、突然変異的に刊行されたこのシリーズ、「海外」とはいいつつも、その当時の最新の作品を出していたわけではありません。じつはその中身は、1950年代前後の作品を中心に、SF・ホラーを集めたものでした。
 監修者に仁賀克雄の名が見えるのですが、ほとんど彼の個人的な趣味で作られたシリーズといっていいかと思います。翻訳に多少難があるものがあるとか、収録作品の選択が恣意的(短篇集の抄訳など)だとか、いろいろ批判はあるようですが、マニアックなセレクションは、今から見ても貴重です。
 以下、全ラインナップを挙げてみます。ちなみに、復刊されたものや、新しく邦訳作品集が出たものは、追記してあります。

ロバート・ブロック他『モンスター伝説』
エイヴラム・ディヴッドスン『10月3日の目撃者』
 →河出書房新社《奇想コレクション》よりディヴッドスンの短編集『どんがらがん』が刊行。
リチャード・マシスン他『機械仕掛けの神』
フィリップ・K・ディック『宇宙の操り人形』
 →ちくま文庫より復刊
グルフ・コンクリン『地球への侵入者』
シオドア・スタージョン『影よ、影よ、影の国』
 →各社よりスタージョン短編集が出版された関係で、収録作品の一部が読めます。
ヘンリー・カットナー『ご先祖様はアトランティス人』
アルジス・バドリス『アメリカ鉄仮面』
ゼナ・ヘンダースン『悪魔はぼくのペット』
 →河出書房新社《奇想コレクション》よりヘンダースンの短編集『ページをめくれば』が刊行。
デイヴィス・グラッブ『月を盗んだ少年』
C・L・ムーア『銀河の女戦士』
フィリップ・K・ディック『ウォー・ゲーム』
 →ちくま文庫より復刊
オスカー・クック他『魔の配剤』
ピーター・ヘイニング編『ウイッチクラフト・リーダー』
ロバート・ブロック『暗黒界の悪霊』
ジェラルド・カーシュ『冷凍の美少女』
 →晶文社よりカーシュの短編集『壜の中の手記』『廃墟の歌声』、角川文庫より『壜の中の手記』(改訂版)、角川書店より『犯罪王カームジン』が刊行。
デニス・ホイートリー編『真夜中の黒ミサ』
デニス・ホイートリー編『悪魔の化身』
デニス・ホイートリー編『13人の鬼あそび』
デニス・ホイートリー編『神の遺書』
H・P・ラヴクラフト『暗黒の秘儀』
リチャード・マシスン『モンスター誕生』
ヴァーノン・ラウス他『悪の創造者』
カート・シンガー編『眠られぬ夜のために』
エイヴラム・メリット『秘境の地底人』
レイ・ラッセル『血の伯爵婦人』
フリッツ・ライバー『闇の世界』
アルジャーナン・ブラックウッド『死を告げる白馬』
ヴァン・サール編『魔の生命体』
クラーク・アシュトン・スミス『魔界王国』
シンシア・アスキス編『恐怖の分身』
ジョン・バーク『吸血ゾンビ』
ロッド・サーリング編『魔女・魔道士・魔狼』
ロバート・E・ハワード『剣と魔法の物語』
ヴァン・サール編『魔の誕生日』
仁賀克雄『海外ミステリ・ガイド』

 このシリーズの特徴として、短編集・アンソロジー中心である、ということが挙げられます。いわゆる「異色短篇」のファンにとっては、宝の山といってもいいでしょう。
 新しく邦訳短編集が出たものとか、復刊されたものなどもありますが、大多数はいまだにこのシリーズでしか読めない作家や作品です。最近では、同じく監修者に仁賀克雄を据えたシリーズ《ダーク・ファンタジー・コレクション》が、似たようなテイストの作品集を出していますが、ソノラマ版とは、収録内容がほとんどかぶりません。
 シリーズ自体が絶版であり、古書価も随分と高値がついています。同じように高値のつくサンリオ文庫と比べても、《海外シリーズ》の古書価は尋常ではありません。一冊3000~5000円、ときには10000円を超えることもあります。そういう事情で、個人的にもなかなか手が出なかったのですが、長年コツコツと集めた結果、目ぼしいものは手に入れることができました。個々の作品に関しては、いずれ少しづつ紹介していこうかと思います。
 さて、このシリーズ中で再評価の機運が高まっているのは、やはりシオドア・スタージョンとジェラルド・カーシュでしょう。それぞれ、再刊や新訳の作品集が数冊出ています。あとはディヴッドスンやヘンダースンの個人短篇集が出ました。基本的に、個人作品集に関しては、再刊や新訳が出る可能性がなくはないんですよね。フリッツ・ライバーも作品集が予定されていますし、デイヴィス・グラッブやヘンリー・カットナーあたりも復刊や新訳が出る可能性がなくもなさそうです。問題はアンソロジーの方。いちど絶版になったものが再刊される確率は、全体的に低いです。
 《海外シリーズ》中のアンソロジーでいちばん目立つのは、デニス・ホイートリー編の4冊のアンソロジーでしょう。これは、もともと《恐怖の一世紀》という大冊のアンソロジーを分冊したものです。クラシックな怪奇小説を集めたものですが、ブラックウッド、ホジスン、コッパードなんかに混じって、マイナー作品も多数収録されている意欲的なアンソロジーです。これは是非、復刊していただきたいアンソロジーですね。
 あとは、ヴァン・サール編のアンソロジーも、なかなか捨てがたいです。こちらの方は名作やクラシックより、読んで面白い娯楽・B級的な作品を集めたもので、このシリーズ以外で全く名前を聞いたことのないような、超マイナー作家がたくさん収められているところが特徴です。日本のもので言うと、鮎川哲也編『怪奇探偵小説集』(ハルキ文庫)に近い味わいのアンソロジーといっていいでしょうか。ちなみに、《ダーク・ファンタジー・コレクション》で出たヴァン・サール編『終わらない悪夢』(論創社)とは、収録作品はかぶりません。
 シリーズのひとつひとつが非常に貴重なラインナップなので、短篇ファンの方は見かけたら入手されることをオススメしておきます。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

この記事に対するコメント

SFというより空想科学小説が好きなので、
こういうの、もっと続けてくれればいいのにと、思います。
【2008/11/26 12:32】 URL | kenn #NV6rn1uo [ 編集]


「冷凍の美少女」は表紙も含めて好きな作品でした。
この本自体は入手できなかったのですが、カーシュが読めるようになってうれしくおもっています。
図書館にはこのシリーズは半分くらいしかないので、相互貸借してもらっていますが、なかなかコンプリートできません。

お持ちでうらやましいです
【2008/11/26 21:05】 URL | fontanka #- [ 編集]

>kennさん
SFや怪奇小説、ミステリなど、ジャンルが混じって未分化だった時代の作品は、エネルギーにあふれていて、いまでも面白いんですよね。
このシリーズもなにかと問題はあったんですが、今考えると貴重な叢書でした。
【2008/11/26 21:08】 URL | kazuou #- [ 編集]

>fontankaさん
じつは、シリーズのまだ手に入らない数冊のうちに「冷凍の美少女」が入ってます。
これがなかなか見つからないんですよね。でもカーシュは、何冊も短編集が出ている関係で、渇は癒されてるので、まあいいかな、と思ってます。

個人短編集よりも、シリーズ中に含まれているアンソロジーの方が、意外と読みごたえがあります。なんらかの形で復刊してほしいシリーズではありますね。
【2008/11/26 21:12】 URL | kazuou #- [ 編集]

これは目の毒!
こちらのブログでソノラマ文庫侮るべからずと知り、古書店でもチェックするようになったのですが、海外ものにはお目にかかれずの状態です。
表紙もいいですね。
【2008/11/26 21:39】 URL | 迷跡 #- [ 編集]

ソノラマ海外
>迷跡さま

最初の数冊はたまにチェーン店系の古書店で見かけますが、最後の方は流石に・・。
並べる人もどこに陳列すればいいのか迷うようで、ラノベの棚ではなく、”その他海外
文庫”の棚に並べていることもあるので、そちらもチェックしてみてください。
サンリオも埋もれていることがあります。

『海外ミステリ・ガイド』は文庫サイズではなかったと思うのですが、現物が埋もれて
いるので確認できません。(すみません)
ラヴクラフトの『暗黒の秘儀』は創土社のものの改定なので創土社のものをお持ち
なら代用になりますね。


>kazuouさま

私もこのシリーズは一部を除いて、アンソロジーの方が好きです。
鮎川哲也編『怪奇探偵小説集』もそうですが、中島河太郎編の『異端の文学I・II』
(新人物往来社)も似た雰囲気で読み応えがあります。
【2008/11/27 09:02】 URL | shen #SgmGMb7Y [ 編集]


『海外ミステリ・ガイド』は文庫ですよ~
ただ、背表紙が黄緑で他との統一感ゼロ。
内容も、なんでこのシリーズなのか、いまだに納得がいきません(笑)
【2008/11/27 09:30】 URL | 司書つかさ #Y85ZE23. [ 編集]

>迷跡さん
ソノラマ海外シリーズは、正直、なかなか古書店でも巡り会えませんね。正当な(!)プレミア価格がついていれば、到底手が出せないので、ブックオフなどの新古書店での出会いを期待したいところですが、こちらには滅多に出ないときています。
shenさんの書かれている通り、シリーズ初期のものは見かけなくもないので、気長に探しましょう。

表紙画も全体にB級の香りがするんですが、あらためて見ると悪くないかもしれませんね。
【2008/11/27 18:41】 URL | kazuou #- [ 編集]

>shenさん
そうですね、海外シリーズは、たまに場違いな棚にまぎれていたりしますよね。雑学コーナーに並べられていたのを見たこともあります。

アンソロジー好きとしては、このシリーズ、たまらない魅力がありますよね。
ミステリの年間傑作選とかは、わりと翻訳されるけれど、怪奇小説の方は、一部が訳されているだけですし。モダンホラーのアンソロジーにしても、このごろめっきり訳されなくなってしまいました。その点、怪奇小説アンソロジーがこれだけ含まれているのは、いまでも貴重だと思います。

中島河太郎編『異端の文学』は、僕も未入手なんですよ。探しているけれど、なかなか見つかりません。
【2008/11/27 18:47】 URL | kazuou #- [ 編集]

>司書つかささん
『海外ミステリ・ガイド』は、わりとよく見かけるんですけど、あんまり興味がないので、いつもスルーしてました。仁賀氏は、現代教養文庫のときといい、論創社のものといい、この手の本を何度も出したがりますね(笑)。
【2008/11/27 18:50】 URL | kazuou #- [ 編集]


この記事に対するコメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する


この記事に対するトラックバック
トラックバックURL
http://kimyo.blog50.fc2.com/tb.php/336-593d4ab9
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

kazuou

Author:kazuou
男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。
主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。
記事の新旧に関わらず、コメント・トラックバックは歓迎しています。



最近の記事



最近のコメント



最近のトラックバック



月別アーカイブ



カテゴリー



メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:



ブログ内検索



RSSフィード



リンク

このブログをリンクに追加する