手堅いオムニバス  ダン・カーティス監督『アメージング・ファンタジー』
アメージング・ファンタジー
アメージング・ファンタジー
ビデオメーカー 1989-08-10

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 ダン・カーティス監督のオムニバス・ホラー映画『アメージング・ファンタジー』(米 1977)には、作家のリチャード・マシスンが脚本家として参加しています。もともと短篇の名手であるマシスンの脚本は、映像化においても優れた「異色短篇」として楽しむことができます。

 第1話 青年の趣味は、クラシックカーを復元し、実際に走らせるようにすること。彼が新しく手に入れたのは、1920年代の車でした。しかしその車にはいわくがありました。かって、その車に乗っていた青年とそのガールフレンドが、汽車と競争しようとして事故を起こし、死亡していたのです。
 どうにか修理をした車でドライブをはじめた青年は、周りの風景がいつの間にか変わっていたのに気付き驚きます。周りを走っているのは、自分の乗っているのと同じぐらい古い型の車ばかり。しかも人々の格好もどこか古くさいのです。やがて到着した町を見て、青年は悟ります。ここは1920年代の世界なのだ…。しかし、周りに気を取られているすきに、何者かが彼の車に乗って走り去ってしまいます。青年は途方に暮れますが…。
 過去に取り残された青年はどうなってしまうのか?と思いきや、わりとあっさりと現代に戻れます。しかし、その後の展開で、青年の行動が世界を少しだけ変えていたことがわかるのです。彼自身の運命をも変えた「第二のチャンス」とは…?
 原作は、ジャック・フィニイ『第二のチャンス』(福島正実訳『レベル3』早川書房収録)です。淡々とした語り口で語られる物語は、まさにジャック・フィニイの世界。静謐な雰囲気に満ちた、ノスタルジックなファンタジーです。

 第2話 若く美しい妻は、吸血鬼にたびたび襲われ、衰弱していました。夫である教授は、さまざまな対策をとりますが、妻の衰弱は止まりません。やがて教授の招きに応じて、知り合いの青年が助けに訪れます。青年は吸血鬼の存在を否定しますが、教授の話を聞いて、確信が揺らいでゆきます…。
 あまりにもストレートな吸血鬼もの、と思いきや、ひとひねり加えたクライム・ストーリーです。原作はリチャード・マシスン『吸血鬼などは…』(青木日出夫訳 矢野浩三郎編『恐怖と幻想 第1巻』月刊ペン社)。

 第3話 母親は、息子の死を受けいれられないでいました。海で行方不明になった息子の死体は発見されていないのです。やがて思い詰めた母親は黒魔術を行い、息子が帰ってくるようにと願います。深夜、ドアをたたく音を耳にした母親は、ドアの下で震えている息子を見つけます。
 意識を失って倒れていたという息子の話を聞いた母親はそれを信じます。しかし、息子の態度にどこかおかしい点があるのに、母親は気付きます。妙な質問を繰り返しするのです。やがて、息子はかくれんぼがしたいと言い出し、家中の電気を壊します。そして母親への攻撃はエスカレートしていきますが…。
 帰ってきた息子は本当に本人なのだろうか? 無気味な言動をとり続ける息子の存在が、恐怖感を高めていきます。後半、真っ暗な家の中で、息子から逃げ続ける母親が描かれるシーンは、かなりの迫力です。三話の中では、いちばんの力作でしょう。

 現代のホラーを見慣れた今見ると、派手さはありませんが、マシスンの脚本の良さもあって、じつに手堅い作りになっています。「異色短篇」が好きな方なら、充分楽しめるでしょう。

テーマ:映画感想 - ジャンル:映画

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