女を憎む男  ロバート・ブロック『ザ・スカーフ』
4787585428ザ・スカーフ
ロバート ブロック 村上 能成
新樹社 2005-10

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 今回は、『サイコ』で知られるロバート・ブロックのスリラー『ザ・スカーフ』(村上能成訳 新樹社)です。ブロックは、扇情的なショッカーやひねりの効いたホラーを得意とする作家です。
 主人公は、幼児期の母親の虐待と青年期の女教師による裏切りによって、女性を憎むようになった作家志望の男、ダニエル・モーリー。彼は女心をつかむのに長け、表面的にはプレイボーイに見えます。しかし心の中では女性全般を深く憎んでいるのです。
 モーリーは、亭主が服役中の女レナのヒモとなって生活しています。モーリーにベタ惚れのレナに対し、モーリーは心中ではレナを軽蔑しています。

 レナは飲んだくれで、ふしだらな大年増となるのが関の山だ。生きていようが、死のうが、だれもなんとも思いやしない。

 レナの存在を足手まといに感じだしたモーリーは、レナを殺害します。自分の野望の足がかりとなる金を奪うため、と自分では思っていましたが、そのうちモーリーは殺す必要はなかったのではないかと自問します。そこには女に対する憎悪が隠されていたのです。しかもモーリーは、殺した女の存在を自分の小説の登場人物として利用するのです。

 女は身持ちのわるいことでは天下一品で、やりきれなくなるほど不身持ちな女を地でいっていた。だから登場人物の名前や場所を変え、細部をすこし変更しさえすれば、女の話がそっくり使えそうだった。

 その後も女を利用しては殺し、それを自らの作品として生かすモーリー。作家として成功の階段を上りつつあったモーリーでしたが、あるとき色情狂と噂されるコンスタンスと、その元夫で精神分析医のジェフに出会ったことから、運命が狂い始めるのです…。
 自分の野心のためには犯罪も辞さない青年のピカレスク小説に、ブロックならではのショッカー風味を加えたという感じの作品です。主人公は、トラウマゆえに殺人を繰り返すという設定になっているのですが、その理由付けには大した説得力は感じられません。ただ無差別殺人では後味が悪い、という程度の意味づけでしょう。女性不信についても掘り下げが足りないように感じます。その点リアリティーという面では現代のサイコ・スリラーには及びません。しかし、小説自体があまり古びている印象はないのは不思議です。むしろその現実味の希薄さが何か童話的とでもいうべき雰囲気を作り出しているようなのです。そういう意味で、ブロックの作品は例えば「赤ずきん」のような残酷なおとぎ話に限りなく接近します。
 殺人が起こっても、ブロックの作品では人が死んだ重みというのがあまり感じられないのですが、軽い娯楽小説として割り切れば、楽しめる作品でしょう。いやむしろ、そうした読み方がブロックの作品の楽しみ方としては正しいのかも知れません。なお主人公の女性蔑視はかなり強烈なので、女性読者は不快感を覚えるかも。

テーマ:読書感想文 - ジャンル:小説・文学

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