B級の愉しみ  仁賀克雄編訳『モンスター伝説』
モンスター伝説モンスター伝説―世界的怪物の新アンソロジー (ソノラマ文庫―海外シリーズ)
ロバート・ブロック 仁賀 克雄
朝日ソノラマ 1984-01

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 1950年代の怪奇小説を、日本独自に編纂したというアンソロジー『モンスター伝説』(仁賀克雄編訳 ソノラマ文庫)。目新しさはないものの、その筋のファンにとしては、安心して楽しめる作品が集められています。以下簡単に紹介しましょう。

 リチャード・マシスン『血の末裔』 幼い頃からおかしな言動を繰り返し、不気味がられていた少年ジュールス。彼はある日、図書館で「ドラキュラ」の本を見つけたことから、吸血鬼に憧れるようになります。ジュールスは、その願望をクラスメイトの前で口にしますが…。
 本で得た知識で吸血鬼になろうとした少年が、その幻想を壊される…というサイコ・スリラーかと思いきや、最後の引っくり返しには驚かされます。ホラーへの愛情にあふれた名作。

 ロバート・ブロック『鉄仮面』 第二次大戦時のフランス、ナチスと戦うレジスタンスに協力しているアメリカ人青年ドレイクは、恋人ロサールが単身、危険な場所へ向かったことを知り、彼女の後を追います。そこで出会ったのは、鉄仮面をかぶった得体の知れない男でした。彼は自分こそ、伝説の「鉄仮面」であり、歴史上いくたびも、フランスを救ってきたのだと話しますが、ドレイクは一抹の不安を拭えません…。
 「鉄仮面」伝説とスパイ小説をからめたエンターテインメントです。スパイ小説部分はかなり凡庸ですが、「鉄仮面」を初めとする怪奇趣味がなかなか愉しい一編。結末のドンデン返しも稚気に満ちています。

  ハリイ・ハリスン『これぞ、真説フランケンシュタイン』 どう見ても、本物としか思えない怪物ショー。疑問を抱いた記者は、酒場でうまくショーの主催者の男から話を聞くことに成功しますが…。
 「フランケンシュタイン」の真相は…という、軽いタッチの怪奇譚。

 フリッツ・ライバー『魔犬』 デパートに勤める青年は、扶養している両親や経済状況のことで悩みを抱えていました。つきあう女の子もみな結婚となると、彼のもとを離れていってしまう。そして、あるときから彼の前に、邪悪な犬の影がちらつくようになります…。
 「犬」の正体はいったい何なのか? 戦時下、悩みをかかえる青年の神経症的な不安が描かれます。怪異の正体ははっきりせず、結末もぼかしていることもあり、かなりモダンな印象を与える怪奇小説です。

 ロバート・ブロック『サド侯爵の髑髏』 好事家メイトランドは、古物商が持ち込んで来た頭蓋骨に眼を奪われます。サド侯爵の髑髏だというその品物に、メイトランドは興味を抱きますが、それが詐欺ではないかと疑っていました。しかしその晩古物商は何ものかに殺害されてしまいます…。
 サド侯爵の髑髏をめぐるオーソドックスなホラー。工夫も特になく、ムードだけで押し切ってしまっている感のあるB級ホラーです。

 レイ・ラッセル『射手座』 老紳士テリー卿から、ふと話を聞く機会にめぐまれた青年ロルフ。しかし、その話はじつに奇怪なものでした。青年時代のテリー卿が、フランスで知り合った名優セザールは、芝居に対するストイックな情熱とその潔癖さで、人々の賞賛を浴びていました。
 一方、テリー卿はたまたま訪れた、場末の「グラン・ギニョール劇場」で、趣味は悪いながらも、まがまがしいほどの存在感を放つ俳優ラヴァルの存在を知ります。彼に興味を抱いたテリー卿は、話を聞こうとしますが、ラヴァルの俗悪さに呆れ返ります。
 このごろ巷を騒がせている殺人事件は、ラヴァルの仕業なのではないか? 疑問を抱いていたテリー卿の前から、ある日セザールが姿を消します。愛していた恋人の死体を残して…。
 純粋なまでに芝居に打ち込むセザール、悪魔のような容貌と演技で人々を威圧するラヴァル。対照的な二人の関係とはいったいどんなものなのか? やがて恐るべき真実が明らかになりますが…。
 フランスの演劇界を舞台にしたゴシック・ホラーです。才人ラッセルの作品だけに、芸術や演劇の蘊蓄を描いた部分に精彩が感じられます。「ジキルとハイド」や「ジル・ド・レー」伝説を折り込んだ展開も、怪奇ムードたっぷりで楽しませてくれます。
 扇情的な題材を取り扱いながらも、洗練された印象を与えるのは、やはりラッセルの腕でしょうか。
この記事に対するコメント

こんばんは。
この本は図書館になくて、他館からさがしてもらおうとおもっているんです。
なんとなく記憶があるようななるような・・ですね。
【2008/06/02 00:32】 URL | fontanka #- [ 編集]

>fontankaさん
この短編集の収録作品は、そんなに珍しいものでもないんですよね。
たぶんレイ・ラッセル以外は、探せば他の本でも読めるのではないかと思います。
【2008/06/02 12:15】 URL | kazuou #- [ 編集]


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男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主催。
主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。
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