6月の気になる新刊と5月の新刊補遺
発売中 鶴田謙二『おもいでエマノン』(徳間書店リュウコミックススペシャル 840円)
5月予定 レイ・ブラッドベリ『夜のかくれんぼ』(仮題)(晶文社 予価1890円)
6月4日刊 アンナ・カヴァン『氷』(バジリコ 1890円)
6月上旬刊 梅田正彦訳 イーデス・ウォートン他 『ざくろの実』(鳥影社 予価1680円)
6月12日刊 北上次郎『冒険小説論』(双葉文庫 予価1000円)
6月中旬刊 L・P・ハートリー『ポドロ島』(河出書房新社)
6月下旬刊 ジェフリー・フォード『緑のヴェール』(国書刊行会 予価2625円)

 鶴田謙二『おもいでエマノン』は、梶尾真治の同名作の漫画化作品。もともと新装版の挿絵も書いていた人ですね。原作は連作短篇なのですが、漫画化されているのは、原作の第一話のみ。多少脚色が入っているとはいえ、短篇一話で一冊を構成しているので、かなり物足りない感じです。ただ定評どおり、鶴田謙二の絵は素晴らしく叙情的。ぜひ続きを期待したいところです。
 レイ・ブラッドベリ『夜のかくれんぼ』は、絵本のようです。これ、むかし出た『別冊奇想天外』のブラッドベリ特集号で、佐竹美保のイラストをつけて掲載された『夜を点けよう』と同じ作品でしょうか。
 イーデス・ウォートン他 『ざくろの実』は、怪奇小説アンソロジーとのこと。訳者の梅田正彦氏は、以前にも、同じ鳥影社から、怪奇小説の翻訳をいくつか出されている方ですね。毎回マニアックな編集には頭が下がります。
 北上次郎 『冒険小説論』は、以前出たハードカバー版の文庫化なのですが、ひじょうな名著なのでぜひ。スティーヴンソンやデュマなどの古典的なものから、現代のスパイ小説まで、冒険小説の変遷を語った面白い本です。ヴェルヌの章や、イギリスの騎士道小説などについての章は、眼から鱗が落ちるような指摘がされていて、とても参考になります。
 〈KAWADE MYSTERY〉の新刊は、L・P・ハートリー『ポドロ島』。このシリーズには珍しく、純粋な怪奇小説集ですね。『怪奇小説傑作集』にも収録されている、超有名作『ポドロ島』はともかく、ほかの作品は現在ではほとんど読めなくなっているので、ファンとしてはとても嬉しいところです。
 これは予定通り出るのか怪しいですが、国書刊行会からはジェフリー・フォードの三部作完結編『緑のヴェール』が登場。2作目刊行からはずいぶんと早く出るようですね。訳者は二作目と同じ布陣のようなので、翻訳の質に関しては安心できそうです。
 
この記事に対するコメント

今月は怪奇小説ファンにとっては楽しみな月ですね。

自分がこちらのブログを知ったのも梅田氏の『鼻のある男』がきっかけでしたので、氏の翻訳は懐かしい気もします。
今回はウォートン他アメリカの女流作家の作品集とのこと、前回も既訳の少ないアンソロジーでしたので、作家の顔ぶれには期待したいです。
氏は、聞くところによれば『猿の手』のジェイコブズの怪奇小説集も翻訳が終わっているそうで、こちらも出版が待たれるところです。

ハートリーの作品集の方は、稲生平太郎氏や荒俣宏氏もティーンの頃に一読してショックを受けたという傑作『ポドロ島』の他、アンソロジー・ピース数編と初訳が収められているようですね。
個人的には『島(The Island)』を楽しみにしています。





【2008/05/24 09:45】 URL | newt #- [ 編集]

怪奇小説集
こんにちは。
『ざくろの実』の作家の顔ぶれが気になります。
「ざくろの実」って、『幽霊』に入っていた「柘榴の種」と同じ作品でしょうか。

newtさん情報の、ジェイコブズ怪奇小説集、これも期待できそうですね。
【2008/05/24 11:04】 URL | タツナミソウ #- [ 編集]

>newtさん
梅田正彦氏は、今までの訳書の解説などを見るにつけても、かなり気合いの入った怪奇小説ファンのようですので、今回も期待が持てそうです。

ハートリーは、識者からは「少々あざとい」という評価もあるようですね。「ジェントル・ゴースト・ストーリー」よりは「ショッカー」に近い志向の作家だと思ってるんですが、そのあたりも含めて、個人的には好きです。初訳も多いようなので楽しみですね。
【2008/05/24 19:09】 URL | kazuou #- [ 編集]

>タツナミソウさん
そういえば、タイトルが似てますね。同じ作品でしょうか。まあ同じ作品だとしても、ウォートンの短編集が出るなんて思わなかったので、かぶるなんて予想してなかったんでしょうね。

ジェイコブズ作品集はぜひ実現してほしいです。
そういえばジェイコブズって、『猿の手』だけからだと想像つきにくいんですけど、もともと大衆作家ということで、けっこうユーモアがあるんですよね。そちらの要素が強い作品も読んでみたいところです。
【2008/05/24 19:19】 URL | kazuou #- [ 編集]


こんばんは。
イーディス・ウォートンはできれば未訳の作品が(翻訳されているの少ないですよね)読みたいんですが・・・
この人が「エイジ・オブ・イノセンス」の原作者だったというのは、それこそ「あとになって」知った事です。
上流階級の出身で、「離婚」したとなると、色々大変だったんだろうなぁと思います。
長編は、読もうという気が起こらないのですが、短編はもっと読みたいです。
「魅入られて」(「化けて出てやる」所収)が、けっこう好きです。
【2008/05/25 00:20】 URL | fontanka #- [ 編集]

>fontankaさん
ゴースト・ストーリーって、「怪異」以外の部分が薄味になっちゃうものが多いんですけど、ウォートンの作品の場合、人間ドラマ部分が充実してるので、興味深く読めるんですよね。
「エイジ・オブ・イノセンス」を読むのはさすがにきついですが、短篇はもっと読んでみたい作家ですね。
【2008/05/25 08:24】 URL | kazuou #- [ 編集]


ベンスンやブラックウッドの作品集が入手できなくなりつつある一方で、昨年はウォートン、今年は
ハートレーと、これまで日本語訳の無かった選集が出版されるのはうれしいですよね。

先年、怪奇小説集ではないものの、エリザベス・ボウエンの短編集も出版されて、こちらも読後に
冷んやりとしたテイストを残す作品が数編収められています。

ボウエンも短編では長編と違って、日常生活の中の些細な亀裂を描いた作品が多いように思います。
【2008/05/25 11:10】 URL | newt #- [ 編集]


アンソロジーはともかく、個人作家の怪談集を出すのはなかなか難しいのではないかと思います。それだけに先年のウォートンといい、今回のハートリーといい、ファンにとっては慶賀すべきことですね。
ベンスンは絶版になってから久しいですが、ブラックウッドもほとんど手に入らなくなっているとは驚きです。どうやら創元の『ブラックウッド傑作集』も品切れ状態のようですし。

ボウエンは、訳がかなり生硬なのを除けば、粒ぞろいの作品集だったと思います。この作家、普通小説でも「怪奇小説っぽい」というか、あまりジャンル間の差異が感じられないタイプの作風のような気がしました。
【2008/05/25 20:22】 URL | kazuou #- [ 編集]


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Author:kazuou
男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主催。
主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。
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