連続殺人者殺人事件  ジェフ・ポヴェイ『シリアル・キラーズ・クラブ』
4434082329シリアル・キラーズ・クラブ (柏艪舎文芸シリーズ)
ジェフ ポヴェイ Jeff Povey 佐藤 絵里
柏艪舎 2006-08

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 いまや、珍しくもなくなった「連続殺人鬼」によるサイコスリラー。スプラッター映画の例を見るまでもなく、下手をするとコメディに堕しかねないこの題材を、逆に、徹底的にコメディにしてしまおう、というのがこの作品、ジェフ・ポヴェイ『シリアル・キラーズ・クラブ』(佐藤絵里訳 柏艪舎)です。
 ある日突然、見知らぬ男に殺されそうになった主人公は、夢中で抵抗して男を殺してしまいます。男の所持品を探ると、出てきたのは、殺人事件に関する新聞記事と、そして犯行声明の写し。なんと男は世間を騒がせていた連続殺人鬼「バーニーの孫息子」だったのです!
 さらに、所持品の中にあった、地元紙の交際募集欄に興味を抱いた主人公は、ふと連絡をとってみる気になります。やがてシカゴのクラブに招かれた彼は、そのクラブが連続殺人者の集まりであることを知ります。そこでは、おのおのがハリウッドの有名人を名乗り、交遊していたのです。「バーニーの孫息子」に化けた主人公は、ダグラス・フェアバンクスの通り名をもらい、クラブに参加する羽目になります。
 クラブに潜り込んだ主人公は、人恋しさからか、クラブに親しみを感じるようになりますが、他の会員にバレそうになるたびに、その会員を密かに始末していました。
 しかし、FBI捜査官ウェイドに殺人現場の証拠を握られた主人公は、他の連続殺人者を全て始末するよう脅迫を受けてしまいます。しかもウェイドは、全米を騒がせている史上最悪の殺人鬼「ケンタッキー・キラー」をも誘い込んで始末するように強要していたのです…。
 連続殺人者を殺す連続殺人者、という徹底的にブラックなコメディ小説です。非常にバカバカしい設定なのですが、主人公の鈍感で間の抜けた語り口にのせられて、一気に読ませられてしまいます。殺しの場面でも、笑いの要素が強調されていて、三つ又のほこで襲ってくる殺人者など、かなりデフォルメされた表現が多用されています。
 ウェイド捜査官にせっつかれた主人公が、クラブの会員たちを一人ずつ始末していくのですが、そこは名うての殺人者たち。思わぬ抵抗にあったり、逆に殺されそうになったりします。主人公がドジなため、しょっちゅう危機に陥るのですが、思わぬウェイドの手助けもあり、命からがら切り抜けます。
 殺人者たちは、どれもユニークに造形されています。毒舌家、いつも母親の幻覚が見えている妄想患者、「トンデモ系」の作家、中には本職の刑事がいたりと、まさに多士済々。殺人者になった原因が、揃いも揃って母親にあるというところにも、風刺が効いています。
 入会してきた女性殺人者に恋した主人公が、彼女を助けるために、ウェイドを殺してしまおうとしますが果たせず、腹の探り合いになるという展開も効果的。
 一方クラブ内でも、裏切り者探しが始まり、主人公は焦り始めます。そして全く姿を見せないケンタッキー・キラーの正体とは…?
 殺人者を一人ずつ始末していくという、わりとシンプルなストーリー形式なのですが、そこに、最後の最後まで姿を見せないケンタッキー・キラーの存在、他にも主人公の恋愛話やウェイドとの対立などが挟まれ、物語にスパイスを添えています。著者のポヴェイは、イギリスの放送作家だそうですが、全体を通して全く退屈させないのは、演出の妙でしょうか。
 ギャグ満載のブラック・ユーモア小説。訳文も非常にこなれており、笑わせてくれることは保証します。
この記事に対するコメント

こんばんは。
この設定すごく覚えがあるんですが、内容をまったく憶えていない。
書店のミステリコーナーで見たのか?立ち読みしかけたのか?
でもこの表紙にはまったく覚えが無く(読んでるとしたら、ポケミスではないのか?)
うーん 図書館にはないことを確認。

自分が読んだ(読もうとしたの)がこの本なのか、他の本なのか不明で気持ちわるいです。

図書館にリクエストしてみます
【2008/02/08 20:35】 URL | fontanka #- [ 編集]


どこかで、あらすじを読んだのかもしれませんね。あんまり宣伝された本でもないし。
でも、これなかなか拾いものだと思います。
やっぱりイギリス人はこういうものを書かせると、上手いですね。
【2008/02/08 20:55】 URL | kazuou #- [ 編集]


こんばんは。
図書館(相互貸借)で読んでみました。
正確には読もうとして挫折。かなりとばし読み。
「クラブ」という着想は面白いんですが、その後の展開というか「ラスト」が、結構ありきたりのような。
で、何故、自分が覚えがあるのか分かりました。
近所のディープな品揃えの書店で、ちらっと読んでみて、パスしたんでした。
記憶がごっちゃになって、てっきりポケミスと思ってました。
そんな近所の書店でできる限り貢献しようと思っているので、本が週末しか買えなかったりします。
【2008/03/05 20:18】 URL | fontanka #- [ 編集]

軽すぎ?
たしかに、ちょっと「軽すぎ」かな、という気はします。僕はこういう悪い冗談みたいな話が好きなので、あんまり気になりませんでしたが。最後まで「悪ノリ」なので、飽きてしまう人もいるかもしれませんね。
【2008/03/05 21:19】 URL | kazuou #- [ 編集]


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