不真面目な侵略  ジョー・R・ランズデール『モンスター・ドライヴイン』
4488717012モンスター・ドライヴイン
ジョー・R. ランズデール Joe R. Lansdale 尾之上 浩司
東京創元社 2003-02

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 ホラー小説というものは、ときにコメディ的な要素を帯びることがあります。作者が大真面目に書いたものが、コメディとなってしまったり、逆に、故意にコメディホラーに仕立てているものも、ときにはあります。
 ジョー・R・ランズデール『モンスター・ドライヴイン』(尾之上浩司訳 創元推理文庫)は、作者の狙いがどこにあるのかわかりにくい、という点で、微妙なラインに位置する作品です。
 ジャックは、友達のボブ、ランディ、ウィラードとともに深夜のドライヴイン・シアターに集まります。B級ホラー映画を観ている最中に、突如として謎の彗星が現れ、ドライヴイン・シアターは異空間に囲い込まれてしまいます。閉じこめられた人々はやがて理性を失い、暴力と殺人がたちまちはびこり出します。ジャックたちはここから脱出できるのでしょうか…。
 筋立ては、かなりシンプルです。何事にも情熱を持てない若者たち、閉塞状況の中ではびこる狂気。ドライヴイン・シアターに閉じ込められたのも、おそらくエイリアンの仕業であろうことが語られます。ここまでの展開は、あくまで現実的なアプローチです。
 ところがその後、怪物が登場するのですが、この怪物、通称〈ポップコーン・キング〉の存在が曲者。この怪物が、作品の中でも浮き立っているというか、あまりに現実感がないのです。実写映画の中に、突然アニメ風のキャラクターが登場してしまったかのような感じ、とでもいったらいいのでしょうか。
 この怪物の存在を受け入れられるかどうかで、この作品を楽しめるかどうかが決まる、といっても過言ではありません。それを除けば、ある種、屈折した若者たちを描く青春小説として読めることもあり、後味は悪くありません。
 設定だけを聞くと、スティーヴン・キングの『霧』(矢野浩三郎訳『骸骨乗組員』扶桑社ミステリー収録)と似ている部分もありますね。あちらが「真面目」なホラーだとすると、こちらは完全に「冗談」だといっていいかと思います。ただ「冗談」小説として読めば、なかなかに面白い作品ではあるので、いっぷう変わった作品を読んでみたい方はどうぞ。
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