たらいまわし本のTB企画第38回「何か面白い本ない?」という無謀な問い
tara38.jpg
 本好きの間では有名な(?)「たらいまわし本のTB企画」、略して「たら本」
 第38回になる今回は、「りつこの読書メモ」りつこさんの主催で、テーマは「『何か面白い本ない?』という無謀な問いかけに答える」です。この企画、参加してみたいとは思いつつも、今まで機会がなかったのですが、りつこさんが参加しやすいテーマを挙げてくださったので、初参加してみたいと思います。

普段本を読まないあの人でも、「登場人物の名前がなかなか覚えられなくて…」と言っているあの人でも、「携帯があれば本なんかいらない」と言っているあの人でも、寝食忘れて読んでしまうぐらい面白い本。本の世界から離れたくない、読み終わりたくないと思うくらいの面白い本。あなたにはそんな本がありませんか?

 「面白い本」とはまた、適用範囲が広いんですが、このブログの趣旨は「マイナー」でありますので、メジャーどころを微妙に外したセレクションで、いくつかご紹介したいと思います。


 まずはこれ、ロバート・コーミア『フェイド』(北沢和彦訳 扶桑社ミステリー)。
4594011454フェイド
ロバート・コーミア 北沢 和彦 Robert Cormier
扶桑社 1993-04

by G-Tools

 一族に代々伝わるという「透明になれる能力」を生まれ持った少年。能力ゆえに苦しむ少年の青春を描く、ほろ苦い成長小説です。「透明」を使った作品といえば、クリストファー・プリーストの『魔法』を思い浮かべる人もいるでしょうが、『フェイド』は、プリーストほどトリッキーではなく、手触りとしては、スティーヴン・キングの『デッド・ゾーン』なんかに近い感じです。細やかな心理描写が魅力的な作品ですね。


 さて、最近「面白い本」を書く作家と言えば、クリストファー・プリースト。彼の作品なら『奇術師』『魔法』あるいは『双生児』が真っ先に挙がりそうですが、あえてここでは『ドリーム・マシン』(中村保男訳 創元SF文庫)を挙げたいと思います。
4488655025ドリーム・マシン
クリストファー・プリースト 中村 保男
東京創元社 1979-07

by G-Tools

 数十人の男女の無意識をつないだ機械。その作用により、未来の世界が仮想的に作り上げられます。彼らはそこで生活し、そのデータを回収するために現実世界に連れ戻される予定でした。しかし、一人の男が現実世界に戻るのを拒否しはじめたことから異変が…。
 仮想現実を扱った、簡単に言ってしまうと、映画『マトリックス』みたいな話です。ただ発表年は1977年とちょっと早いですね。プリースト作品に共通する「現実とは何か?」というテーマを扱った意欲作です。


 カレル・チャペックは、日本でもとても人気のある作家です。基本的にどの作品でもいいんですが、個人的にお気に入りなのは、短編集『ひとつのポケットから出た話』(栗栖継訳 晶文社)です。
4794912420ひとつのポケットから出た話 (ベスト版 文学のおくりもの)
カレル チャペック Karel Capek 栗栖 継
晶文社 1997-08

by G-Tools

 ミステリ、ファンタジー、普通小説、とジャンルはさまざまですが、共通するのは登場人物によせる作者の暖かい視線。とにかく登場する人物たちが、どれも非常にチャーミングなのです。


 チャーミングといえば、ジョセフィン・テイ『魔性の馬』(堀田碧訳 小学館)の登場人物もとても魅力的です。
4093564612魔性の馬 (クラシック・クライム・コレクション)
ジョセフィン テイ Josephine Tey 堀田 碧
小学館 2003-03

by G-Tools

 行方不明の跡取りと容姿が似ているのを利用して、財産をだまし取るために資産家の家にもぐりこんだ主人公。しかし孤独に生きてきた彼は、やがて「仮の」家族たちに愛情を感じはじめます…。
 お家乗っ取りをたくらむ悪党物語のはずが、孤独な男の魂を癒すヒューマン・ストーリーに。謎解き・サスペンス・恋愛など、さまざまな要素が詰め込まれ、結末の収束も見事な、まさに物語の「粋」と呼びたいような作品。


 パトリック・クェンティンは、二転三転するサスペンスを得意とした作家ですが『追跡者』(大久保康雄訳 創元推理文庫)は、その娯楽要素を極限まで追求したかのような作品です。
448814702X追跡者
パトリック・クェンティン 大久保 康雄
東京創元社 1962-12

by G-Tools

 遠国へ出稼ぎにでかけていた男が帰宅すると、妻は行方知れず、そしてそこには男の射殺体が。殺人犯は妻なのか?妻を守るため、彼は死体を隠して、彼女の行方を探しに出かけますが…。
 とにかく、めまぐるしい展開が読みどころ。登場人物は、誰が味方で誰が敵なのかまったくわからないので、終始、緊張感が持続します。人間関係のサスペンスだけで、ここまで読ませる作品も珍しいですね。


 最後に、あんまり話題にならなかったけれど、とびきり面白い本を。
 20世紀初頭に活躍した、ドイツの作家ミュノーナの短編集『スフィンクス・ステーキ』(鈴木芳子訳 未知谷)です。
4896421272スフィンクス・ステーキ―ミュノーナ短篇集
ミュノーナ Mynona 鈴木 芳子
未知谷 2005-04

by G-Tools

 いわゆる「異色短篇」に似た味の短篇が集められていますが、とぼけたユーモアやナンセンスは、ミュノーナ独自のもの。
 人間の体の毛の生え方をオルゴールの筒に移植して、その人間固有の音楽を奏でるという話『性格音楽-毛のお話』。スフィンクスを食べてしまうという、タイトル通りのお話『スフィンクス・ステーキ』。まったく同じ名前、同じ行動をとる40人の集団を描く奇談『謎の一団』。砂漠に現れた巨大な卵をめぐるナンセンス・ストーリー『不思議な卵』など。突飛なイメージが印象に残るような作品が多いです。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

この記事に対するコメント
たら本!
kazuouさん、たら本企画参加してくださってありがとうございます。次回の主催者も引き受けてくださってありがとう!どんな企画なのか今からとっても楽しみです♪

そしてこのラインナップ!!
まさに私の思惑通り(とっておきの本を紹介してもらいたい)で、うしししっとPCの前でペンを片手にほくそ笑んでおります。どの本も文句なく面白そう!!この中で読んだことがあるの「ドリーム・マシン」だけです。
ああ。読みたい本がいっきに増えて、とってもうれしい~。
【2007/10/07 21:48】 URL | りつこ #- [ 編集]

>りつこさん
いえいえ、こちらも楽しませてもらってます。
この企画、なんだかアンソロジーを編むようで面白いですね。ほんとはもっといろんな本を入れたかったけど、際限がなくなりそうなので、このくらいにしました。

次回は、短篇中心になりそうな感じです。
【2007/10/08 07:59】 URL | kazuou #- [ 編集]

はじめまして
はじめまして。
そしてTB&コメントありがとうございました。

未読の作家さんばかりなので、楽しみができました。
特に「フェイド」に期待大。
キングの「デッドエンド」は大好きな作品ですし、
(今アメリカでTVドラマ化してますよね。
かなり原作とは変わってますが、作りこんであって、
面白いですよ)
なんといっても、翻訳が北沢和彦さん!!
北沢さんの翻訳本は、はずれがなくて素晴らしいですよね。
楽しみです。

【2007/10/08 10:49】 URL | 檀 #- [ 編集]

>檀さん
檀さん、こんにちは。
これからもよろしくお願いしますね。

「フェイド」は個人的には、大傑作!だと思ってます。ミステリ、SF、ファンタジー、青春小説、ラブ・ストーリー、といろんな要素がつまっていて、読後感もひとしお。
かなりダークな一面もあって、スティーヴン・キングやジョナサン・キャロルなんか好きな人には、気に入ってもらえるんじゃないかな、と思います。
もちろん、翻訳も素晴らしいですよ。
【2007/10/08 12:34】 URL | kazuou #- [ 編集]


kazuouさん、お久しぶりです~。
今回のたら本には、残念ながら不参加になりそうなんですが
「フェイド」に反応して、思わず書き込んでしまいます。
これ、面白いですよね!!
私も大傑作だと思ってるんです。大好き!
ここでこの題名が見れるとは、いやあ、嬉しいです。

次回はkazuouさんが主催ですね。
お題、楽しみにしてますね。^^
【2007/10/12 06:41】 URL | 四季 #Mo0CQuQg [ 編集]

>四季さん
「フェイド」!
これ、すごい傑作だと思います。コーミアはどの作品も上手いと思うけど、エンタテインメントとしては、間違いなくこれが一番でしょう。

次回のたら本、がんばってみたいと思いますので、ぜひご参加お願いします。
【2007/10/12 18:46】 URL | kazuou #- [ 編集]

はじめまして
はじめまして、菊花と申します。
私、翻訳小説はこれまでどうも苦手意識がありまして、
(たぶんに訳文の癖の好き嫌いの問題だと思うのですが)
翻訳物は敬遠してきたのです。
が、やっぱり面白いと噂の本は読んでおきたいのが
本読みのサガ。とりあえずは、
翻訳好きの人が推薦している本をポロポロと読んでおります。
うわー、紹介されている作品はどれも知らないけれど
辛うじて作者だけは知っていた・・・(感涙)
紹介されている中で最も気になるのは↓コレ
>ミュノーナの短編集『スフィンクス・ステーキ』
短編なら1作コケても安心だわ。
【2007/10/15 21:15】 URL | 菊花 #- [ 編集]

>菊花さん
菊花さん、はじめまして。トラックバックありがとうございます。

そうですね、翻訳小説は翻訳の当たり外れが大きいし「地雷」も多いけれど、今まで知らなかった世界を体験させてくれる、という点では、面白い本がたくさんあると思います。菊花さんもぜひ、いろんな作品を読んで、感想をお聞かせください。
ああ、あとミュノーナの短編集は、とても面白い作品揃いなので、オススメですよ。
【2007/10/15 22:05】 URL | kazuou #- [ 編集]


こんばんは。
シャーロット・アームスロング「毒薬の小瓶」はいかかでしょうか?
読み直したんですが、自殺するつもりで用意した毒薬をバスの中で無くしてしまう。
瓶には毒薬のラベルが貼っていないから、間違って誰かが死ぬかもしれない。

サスペンスだけでもユーモアだけでもなく、アームストロングの良いとこどりでは?
と思いました。
【2007/10/21 00:27】 URL | fontanka #- [ 編集]

アームストロング
アームストロングの作品は、基本的にハッピーエンドのものが多いので、安心して読めますね。「毒薬の小瓶」は、ミステリとしては珍しい「善意」で進むサスペンスなので、誰にでも勧めやすい、という点では、お誂え向きかもしれません。
【2007/10/21 08:02】 URL | kazuou #- [ 編集]


追加というか 短編部門(?)にサーバーの「マクベス殺人事件」をエントリしたいと思います。
サーバの短篇集自体もお薦めだとはおもうのですが、合わないと二の足を踏む可能性もあるので。。。
他にもいろいろお薦めの短編があるのですが、この企画の主旨として、本をあまり読まない人でもってことですので(あー、一応「マクベス」が犯人って知っていてくれないとどうしようもないかもしれないのですが、)
・推理小説とま間違って本(マクベス)を買ってしまう。
・他に読むものがないから仕方なく読む → ありそう。
・小説の結末がおかしい
→旅先で つまらない2時間ワイドを見ていたら 思いっきり犯人がおかしいと思う
というパターンを連想させて、「読書」の無限の可能性を知らしめる(そんな大したもんじゃありませんが)では?

実際、芝居好きの友人にこの短編の存在を話して、本をかしたら、当時絶版だったマクベス殺人事件を買ってましたから。
【2007/10/23 18:19】 URL | fontanka #- [ 編集]

サーバー
たしかに、サーバーは、クセがあるので、好き嫌いが分かれそうです。
「マクベス殺人事件」は、ミステリファンにはけっこう有名(なのかな?)だと思いますが、サーバー入門編としてはなかなかいいと思います。ジョゼフィン・テイの『時の娘』なんかとも似た感じですよね。
【2007/10/23 19:57】 URL | kazuou #- [ 編集]


この記事に対するコメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する


この記事に対するトラックバック
トラックバックURL
http://kimyo.blog50.fc2.com/tb.php/261-d0382cc3
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

たらいまわし本のTB企画第38回 「何か面白い本ない?」という無謀な問いかけに答える

 本のたらいまわし企画「たら本」 今回の主催は、<りつこの読書メモ>のりつこさんです。本好きの人なら一度は言われたことがあるのではないでしょうか、このセリフ。こんなことを言われても、その人がどんな本を好むのかも、今までどういう本を読んできたのかも、何を面 読書記録【2007/10/07 11:15】

たら本38 「何か面白い本ない?」という無謀な問いかけに答える。

1.顔の長い男 「ほほう。すると、あなた。そんなに面白い本が読んでみたいと。こう... AZ::Blog はんなりと、あずき色☆【2007/10/07 19:01】

[その他]たらいまわし本のTB企画第38回 「何か面白い本ない?」という無謀な問いかけに答える

たらいまわし本のトラックバック企画、略してたら本。今回は私が主催者をつとめさせていただきます。指名してくださったざれこさん、ありがとう!!そしてoverQさん、抽象的なテーマなのにこんなにもぴったり素敵なバナーを作ってくださって、ありがとうございます。 たら りつこの読書メモ【2007/10/07 22:06】

たらいまわし・本のTB企画 第38回「何か面白い本ない?」という無謀な問いかけに答える

たらいまわしでお題が決められ、本を紹介していく「たらいまわし・本のTB企画」略して「たら本」。今回のお題は、「りつこの読書メモ」のりつこさんからの出題です。<参考>★記念すべき第1回「たら本」は、overQさんの「AZ::Blog はんなりあずき色のウェブログ」★★「 時々、読書感想文。【2007/10/15 21:02】

プロフィール

kazuou

Author:kazuou
男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。
主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。
記事の新旧に関わらず、コメント・トラックバックは歓迎しています。



最近の記事



最近のコメント



最近のトラックバック



月別アーカイブ



カテゴリー



メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:



ブログ内検索



RSSフィード



リンク

このブログをリンクに追加する