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欲張りな面白さ  『奇想天外』第1期
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 これまで日本では、いくつかSF雑誌が創刊されてきましたが、本家『SFマガジン』を除き、そのほとんどは長続きせず、廃刊の憂き目を見ています。
 その中でも、とくにユニークな印象を残しているのが『奇想天外』です。1970~80年代にかけて出ていたこの雑誌、ご存じの方もいるかと思いますが、何度も休刊しては復刊していた珍しい雑誌です。しかも復刊の度に、雑誌のカラーが極端に変わっているのが特徴。
 第1期は海外作品中心、第2期は、日本作家中心に海外短篇、エッセイなどを交えた総合誌、第3期は、ほぼ完全な小説誌、という感じです。
 とくに面白いのが、この第1期のシリーズです。紙質は悪いし、表紙絵に至っては悪趣味といってもいいほどなのですが、中身はちょっと類を見ないぐらい充実しています。
 まず驚かされるのが、背表紙にある、SF FANTASY HORROR MYSTERY NONFICTION の文字。いったいジャンルは何なの? とお思いでしょうが、要は、面白い作品なら何でも載せちゃえ、という欲張りな編集方針だったようです。
 収録作家名をいくつか挙げると、ロバート・ブロック、リチャード・マシスン、ジャック・フィニィ、シャーリイ・ジャクスン、ジェラルド・カーシュ、デビッド・イーリイ、レイ・ブラッドべリ、ロッド・サーリング、マレイ・ラインスター、デイヴィス・グラッブ、ウイリアム・F・ノーラン、ジョセフ・ペイン・ブレナン、カート・ヴォネガット・ジュニアなど、ミステリ・SF・ホラー・ファンタジー系統の作家の作品がたくさん載っています。
 特集号としては、「レイ・ブラッドべリ」「恐怖短篇」「異色作家」「ショート・ショート」などがありますが、特筆すべきは「ジェラルド・カーシュ」特集でしょう。カーシュの作品を5編もならべたこの特集、この作家の特集をしたのは、後にも先にもこの雑誌だけだったようですね。
 とにかく面白い海外短篇がいっぱいつまった欲張りな雑誌でした。基本的には、ハヤカワの異色作家短篇集みたいなテイストを想像していただくとよいかと思います。
 いまだに、この雑誌だけでしか読めない短篇もたくさんあります。アンソロジーであるとか、何らかの形で復刊してほしい雑誌ですね。第1期は10冊分なので、例えば、河出文庫から出た『血と薔薇』のような形での復刊もありだと思うんですが。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

この記事に対するコメント

 いや,確かに紙質は悪いけれど,これだけ短編をてんこ盛りしているのは特筆すべき雑誌だと思います。やはり,第一期の海外ものの掲載数には,吃驚するものがありますなあ。また,ややマイナー系の作家あるいは,有名作家でもマイナー作品という,悪く言えば胡散臭さも漂わせておりますし。
 二期は,海外ものが減ったのですが,時折,名作が出ており,あなどれません。
 そして,別冊・奇想天外のラインナップも充実していますねえ。これも,値打ちのあるアンソロジイであります。
【2007/07/23 20:41】 URL | おおぎょるたこ #- [ 編集]

>おおぎょるたこさん
やはり、第一期の充実ぶりには眼を見張るものがありますね。「ミステリマガジン」や「SFマガジン」でも、あれだけ海外短篇ばかり並べた号は、なかなかないと思います。
第二期は、エッセイや座談会などに面白い物がときおりありましたが、第一期と比べてしまうと、パワーダウンの感は否めません。
「別冊・奇想天外」は、資料性というか、インデックスとしては、かなりの充実度で重宝したものです。いまでこそインターネットで、作家や作品の情報を簡単に探せますけど、当時としては、あれだけのリストを作るのは大変だったろうなあ、と思います。
【2007/07/23 21:59】 URL | kazuou #- [ 編集]


はじめまして。

ぼくもかすかに覚えがあります。
内容はすっかり忘れてしまったし、
もっていたのも手放してしまったんですが。
kazuouさんの記事を読むと、
もういちど見てみたくなってきます。

最近でも「奇想天外」の名前をつけた雑誌(ムック?)を
ときどき見かけますね。
それだけ思い入れのある人が多いってことでしょうか。

奇妙な味の小説も、あまり読んでませんが、好きなので、
こちらの情報はすごく助かります。
これからも楽しみにしてます。
【2007/07/23 22:03】 URL | kenn #NV6rn1uo [ 編集]

>kennさん
kennさん、はじめまして。コメントありがとうございます。

今の目から見ると、洗練とはほど遠いんですが、「何でもあり」の魅力に満ちた雑誌でした。そもそも、これだけ小説そのもので勝負している雑誌というのは、あまりなかったように思います。
個人的にも思い入れのある雑誌ですね。

【2007/07/24 07:04】 URL | kazuou #- [ 編集]


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Author:kazuou
男性。本好き、短篇好き、異色作家好き、怪奇小説好き。
ブログでは主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。怪奇幻想小説専門の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。
twitter上でも活動しています。アカウントは@kimyonasekaiです。twitter上の怪奇幻想ジャンルのファンクラブ「 #日本怪奇幻想読者クラブ 」も主宰してます。
同人誌『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』『物語をめぐる物語ブックガイド』『迷宮と建築幻想ブックガイド』『イーディス・ネズビット・ブックガイド』『夢と眠りの物語ブックガイド』『夢と眠りの物語ブックガイド 増補版』『奇妙な味の物語ブックガイド』『海外怪奇幻想小説ブックガイド1・2』『謎の物語ブックガイド』『海外ファンタジー小説ブックガイド1・2』『奇想小説ブックガイド』『怪奇幻想映画ガイドブック』を刊行。「海外怪奇幻想作家マトリクス・クリアファイル」も作成しました。



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