深夜のメタモルフォーゼ  トムソン、ゴンサルヴェス『終わらない夜』
4593504384終わらない夜
セーラ・L. トムソン Sarah L. Thomson Rob Gonsalves
ほるぷ出版 2005-08

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 Gonsalves1.jpg今回は、カナダの画家、ロブ・ゴンサルヴェスが描いた絵に、アメリカの作家セーラ・L・トムソンが詩をつけた本『終わらない夜』(金原瑞人訳 ほるぷ出版)です。詩画集といっていいのでしょうか。はっきり言って、トムソンの詩の方はどうでもいいです。それに比べてゴンサルヴェスの絵の素晴らしさ! その画風を一言で言うと「だまし絵」ということになるのでしょう。とにかく日常の風景が次第に不思議な世界に変容する、まさにその瞬間を捉えています。おそらく、だまし絵で知られるオランダの版画家エッシャーの影響が強いと思われるゴンサルヴェスの絵は、見るものを奇妙な空間に運んでくれます。
Gonsalves2.jpg 例えば、『中世の月光』と題された作品を見てみましょう。月光に照らされる深夜の回廊で、女性が蝋燭を持って歩いてゆく情景が描かれています。しかし注目すべきは、外に見える雲です。柱の間から見える月光を帯びた雲がだんだんと人の形をなして変容してゆくのです。この、段階を追って変容するイメージというのが、ゴンサルヴェスの絵の特徴です。
 「夜の飛行」では、夜ベッドに集まった子供たちが描かれています。チェック模様のシーツが、なんとまだらの畑に変化しているのです! 子供の想像力というイメージが、これほどうまく表現された例はまだ見たことがありません。Gonsalves3.jpgまた「白い毛布」という作品では、画面全面に降り積もった雪が真っ白な毛布に変容します。
 さて、ここまで紹介した作品に共通する、一つの要素に気付かれたでしょうか? そう作品に描かれた時間は、すべて夜なのです。本書の全ての作品が、夜を舞台にしています。そういう意味でタイトル『終わらない夜』は、実に本質をうまくとらえた名前だといえるでしょう。
 とにかく、眺めているだけで楽しい絵が目白押しです。誰でも一目見て、その面白さがわかる作品です。


テーマ:絵本 - ジャンル:本・雑誌

この記事に対するコメント

一瞬、ポール・デルヴォーかと思いました。裸の女性を配置すれば「白い毛布」などよく似た雰囲気を醸し出してるかな…
「白い毛布」は気に入りました!ふとんがたくさん敷いてあるのに一人で寝てるなんて寂しすぎます。修学旅行の孤独感?
【2006/04/03 20:50】 URL | 加納ソルト #- [ 編集]


そう言われればデルヴォーに似てるかもしれませんね。登場人物がだいたい子供なのも好感触。
「白い毛布」は僕もお気に入りの一枚です! 登場人物の物語を想像するのも愉しいかも。
【2006/04/03 21:06】 URL | kazuou #- [ 編集]

インパクトが強い絵ですね
最初に見た時から、この絵が気になって気になって(笑)
思わず、図書館に予約を入れてしまいました。
エッシャーのだまし絵も大好きなんです。
それにこの2枚の夜の蒼い色もとっても綺麗ですね~。
ぜひ実物をじっくりと眺めてみたいと思います。楽しみです!
【2006/04/05 06:20】 URL | 四季 #Mo0CQuQg [ 編集]

いいですよ
作者のゴンサルヴェスという人には、僕も馴染みがなかったのですが、この本を本屋で見かけて一目惚れしました。もともとゴンサルヴェスの絵を集めて、詩をつけているので物語はあってないようなもの。それより一つ一つの絵自体が詩なんかなくても、十分に物語を想像させてくれるところが素晴らしいですね。
ものすごくオススメですよ。
【2006/04/05 08:15】 URL | kazuou #- [ 編集]


kazuouさん、おはようございます。
遅くなりましたが、この絵本、見ましたよー。
とても楽しかったです。
やっぱり蒼い色合いの絵が一番綺麗だなあと思いましたが
「夜の飛行」みたいな絵も楽しいですね。
こうして画像で見るのもいいのですが、
絵本で直接見てみて良かったと思いました。
素敵な本のご紹介、ありがとうございます♪
TBさせていただきますね。
【2006/04/23 10:40】 URL | 四季 #Mo0CQuQg [ 編集]

それは何よりです
ご覧になられましたか。
この絵、やっぱりいいですよね。確かに夜の青とか寒色系の方が際だってるように思います。
複製画を部屋に飾っときたいぐらいです。
【2006/04/23 11:13】 URL | kazuou #- [ 編集]


おひさしぶりです。
ロブ・ゴンサルヴェスいいですよねえ!
僕もぐっときました!
【2006/07/27 18:21】 URL | A. #XD/8Df/M [ 編集]


ご無沙汰しております。
おお!ゴンサルヴェスの新刊絵本が出たんですね。気がつきませんでした。早速買ってきたいと思います。それにしても、A. さんのサイトは、相変わらず詳細な情報が盛りだくさんで非常に参考になります。
【2006/07/27 19:20】 URL | kazuou #- [ 編集]


「真昼の夢」に引き続き図書館で借りてきちゃいました。いや~良かった!kazuouさんが紹介されてる作品は私も共感できるものばかりでお世話になりっぱなしです。トラックバックもさせていただきました♪

『夜の飛行』はとても好きですね。寝る前の夢を象徴してるようで・・・。、『中世の月光』も月の光によって徐々に変わっていくという視覚を上手に表現していますよね。ゴンサルヴェスの世界は今後もチェックしていきたいと思います。kazuouさんのブログで(笑)。
【2006/08/26 22:32】 URL | TKAT #- [ 編集]

こっちの方が…
ご覧になられましたか。
『真昼の夢』ももちろん素晴らしいんですが、僕はやっぱり『終わらない夜』の方が好きですね。深夜に想像にふける子供たちのイメージ、を絵にしたような作品群がとっても素晴らしい!
その点『夜の飛行』は「子供の想像力」そのものですよね。
【2006/08/26 23:03】 URL | kazuou #- [ 編集]


はじめまして。

この本を書店で見て、ロブ・ゴンサルヴェスで検索したところ、ここにたどり着きました。
なんとも幻想的で美しく、心落ち着く絵本ですよね。
迷っていましたが、購入することに決めました。

最近、仕事関係の本ばかり読んでいて、趣味としての読書をしていないのですが、また読み始めたいなと思っていたので、参考にさせていただきます(・-・*)♪

本って、その場で広げるだけで違う世界に入っていける素敵なものですよね。


【2007/05/26 17:10】 URL | hiro #- [ 編集]

>hiroさん
hiroさん、はじめまして。コメントありがとうございます。

ゴンサルヴェスの作品は、アイディアも独創的ですが、それだけではなくて、ちゃんと独自の美しい世界を作り出しているところが魅力的ですね。ほんとうに眺めているだけで、幸せになれる本です。

優れた作品は、読んでいるあいだ、違う世界に連れてってくれますよね。僕も「何かのための」読書ではなくて、「楽しむための」読書ができるようになれればいいなあ、と思います。
【2007/05/26 19:21】 URL | kazuou #- [ 編集]


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「終わらない夜」ロブ・ゴンサルヴェス絵・セーラ・L・トムソン文

 [amazon] [bk1] 奇妙な世界の片隅でのkazuouさんの所で見て興味を持った絵本です。(記事) これは、カナダの画家・ロブ・ゴンサルヴェスの絵に触... Ciel Bleu【2006/04/23 10:37】

ロブ・ゴンサルヴェス

カナダの画家、ロブ・ゴンサルヴェスの作品。不思議で、どことなくかわいらしいだまし絵の名手です。☆ロブ・ゴンサルヴェスの作品が見れるサイトはコチラ↓http://www.progressiveart.com/gonsalves_page.htm ☆ロブ・ゴンサルヴェスの絵を使った絵本。↓終わらない夜 真 A.【2006/07/27 18:23】

「終わらない夜」

『終わらない夜』 IMAGINE A NIGHT  文:セーラ・L・トムソン (Sarah L. Thomson) 絵:ロブ・ゴンサルヴェス (Rob Gonsalves) 訳:金原瑞人 出版社:ほるぷ出版<感想>ゴンサルヴェスの「真 TK.blog【2006/08/26 22:13】

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kazuou

Author:kazuou
男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主催。
主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。
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