神々の大戦  ロジャー・ゼラズニイ『光の王』
4150115125光の王
ロジャー ゼラズニイ Roger Zelazny 深町 真理子
早川書房 2005-04-21

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 ロジャー・ゼラズニイの描くSF作品は、どれもスタイリッシュかつ色鮮やか。『光の王』(深町真理子訳 ハヤカワ文庫SF)は、そんなゼラズニイの長所が最大限に出た作品です。
 はるか未来、人類は他惑星に植民し、原始的な社会を形成していました。故郷から持ってきた科学技術は、「第一世代」と呼ばれる技術者たちが独占し、その技術を極限まで高めた彼らは、不死の命を得て「神」にも等しい存在となります。しかし、第一世代の一員でありながら、民衆にも恩恵を分け与えようとする主人公サムは、たったひとり、神々に戦いを挑みます…。
 インド神話を、SF的枠組みで再現した作品です。登場人物も「シヴァ」であるとか「ブラフマン」「アグニ」など、インド神話の神々の名前を持つキャラクターが多く登場します。
 いちおう「神々」の能力は、科学技術によって達成されたという設定がなされているものの、その能力の実態は、かなりぶっとんでいます。にらんだだけで人を殺すとか、転生を繰り返しても消えない能力とか、空気中に分解されても再生できる技術とか、もう科学技術というよりは魔法に近い感じです。そういう意味で、SFの衣をまとってはいるものの、実質はファンタジーです。ただ、ゼラズニイの文体、描写力がもの凄いので、そんな細かい部分は気になりません。物語の流れに乗ってしまえば、あとは華麗な絵巻を眺めているかのような錯覚を覚えるほど。
 何より、ケタ外れの力をもつ神々の戦いのシーンが素晴らしいです。「シヴァ」の持つ三叉槍とか、「アグニ」の持つ杖とか、ほとんど超自然的といってもいい武器が登場するのも愉しいところ。惑星にもともと住み着いていたという、これはもう完全に超自然的な存在の「羅刹」とか、後半になるともう何でもありです。
 後半で「ブラフマン」が死んでいるのが発見されて、代わりに「カーリー」が「ブラフマン」になったりするのも、またすごいところです。神はほとんど役職みたいなもので、中身さえ入っていれば、誰が代りになってもいいようになっているのです。実際「カーリー」は女性なのですが、「ブラフマン」の肉体は男性なのです。
 はっきりって、作品中にはさまれる、哲学論議というか、宗教じみたパートはつまらないのですが、物語自体は、本当に壮大なスケールで豪華絢爛です。とにかく、読んでいて非常に「格好がいい」のです。
 基本はファンタジーながら、ところどころで「センス・オブ・ワンダー」も味わえる傑作です。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

この記事に対するコメント
そんなところに
以前某リサイクル系書店の宗教コーナーにこの『光の王』が並べてあってビックリした覚えが
あります。確かにタイトルとか内容一部・登場人物の名前をみると”いかにも”なんですけどねぇ。
壮大で煌びやかな魅力にあふれた話ですが、私は地味な『ドリーム・マスター』の方が好きですね。
イヤな感じの作品ですが。
【2007/06/19 23:47】 URL | shen #SgmGMb7Y [ 編集]

>shenさん
なるほど!
たしかに内容はそれっぽいですしね。
この宗教がかった感じで、しばらくこの本は敬遠していたのですが、最近読んでみて、これはなかなかだなあと思いました。考えたら、ゼラズニイが真面目に宗教を考察しているとは思えないので、読まず嫌いでしたね。
SF的な考証なんかそっちのけの、破天荒な展開が魅力的な作品でした。

『ドリーム・マスター』は未読なんですが、そんなイヤな作品だったとは、ちょっと読みたくなりました(笑)。
【2007/06/20 06:15】 URL | kazuou #- [ 編集]


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