シンデレラを組み立てろ!  ステファヌ・ブランケ『幸福の花束』
4894190419幸福の花束
ステファヌ ブランケ St´ephane Blanquet 中条 省平
パロル舎 2005-11

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 今回はフランスの絵本作家ステファヌ・ブランケの『幸福の花束』(中条省平訳 パロル舎)です。『幸福の花束』なるタイトルを持つこの本、案に相違して、タイトルとは全く正反対のブラックな絵本です。とても子ども向けとは思えない、暗い話ばかりおさめられています。結末も全てバッド・エンディングです。しかし、陰惨さはほどんど感じられません。残酷なシーンもあるのですが、それもうまくソフィスティケートされています。
 特筆すべきは、やはりその絵柄でしょう。すべてが切り絵のようなシルエットで構成されているのです。顔の造作ははっきりしているという、よくある切り絵風のものとは一線を画します。20060222170753.jpg目や耳といった部分も全部シルエットでぬりつぶされているのが特徴。そうなると登場人物の見分けがつかないんじゃないか、と思いがちですが、そんなことはありません。シルエットとは思えない、デフォルメのきいた人物造形、その輪郭線の豊かなことといったら! とてもシルエットとは思えない存在感があるのです。
 物語もまたブラックな味わいが濃厚です。獲物を殺しまくる暴力的な猟師が、けなげな娘に恋をするが…という『あら皮』、子供を夢の中でとらえて働かせる奇怪な三人組の話『目が重くなると』、シンデレラストーリーがとんでもなく現実的な悲劇に反転する傑作『プリンセス組み立てキット』などが面白いです。
20060222170737.jpg タイトルからして魅力的な「プリンセス組み立てキット」、とくにこの作品が素晴らしいです。
 王子は、舞踏会で出会った娘に一目惚れしてしまいますが、娘は十二時になると急いで姿を消します。王子が後に見つけたのは、靴、ではなく、なんと娘の足! なのです。王子は娘は一本足なのだと考え、一本足の娘を探させますが、一向に見つかりません。するとその後、娘のもう片方の足が発見されるのです! その後、腕など、娘の体の各部分が見つかります。王子はパーツを組み立てて娘を生き返らせようとするのですが…。
 ばらばらのパーツで構成されたシンデレラ、という奇想天外な設定もさることながら、それまでおとぎ話だと思っていたストーリーが最後のシーンで、現実の出来事であったことが分かる仕組みになっています。このおとぎ話と現実が反転する結末は、とてもそこらの絵本のレベルではありません。
 作者の邦訳はどうやらこの本が初めてのようですが、もっと他の作品も読んでみたいものです。

テーマ:絵本 - ジャンル:本・雑誌

この記事に対するコメント

TBありがとうございます。
ステファヌ・ブランケの『幸福の花束』いいですよねえ!
僕もブランケの他作品の邦訳版はでないものかと、
ひそかにパロル舎に期待をよせています。
【2006/03/14 13:44】 URL | A. #XD/8Df/M [ 編集]

続刊希望!
A. さん、コメントおよびTBありがとうございます。
もうこの一冊でブランケにいかれてしまいました。もともとブラック系(?)の絵本が大好きなのですが、ブランケの本は、アート性というか芸術性が素晴らしいです。それに、物語自体も魅力的なのが、いいですよね。『幸福の花束』には、作者についての情報が全然ないのがどうも…。
この本が好評だったら続刊もあるのかもしれませんね。パロル舎に期待しております。
【2006/03/14 18:06】 URL | kazuou #- [ 編集]


kazuouさん、こんにちは。
パロル舎は装丁が凝っている本が多くて眺めているだけで楽しめね。
エドワードゴーリーなどのブラックな絵本大好きなので、この本もとても読んでみたいです。
ブッキングから出ている「ビビを見た」という絵本も絵が不気味な感じで面白いですよ。
お暇なときにぜひ(^^)
【2006/03/17 13:33】 URL | 空猫 #- [ 編集]

パロル舎
パロル舎は、絵本を含めて、マイナーながらも味のある本をたくさん出していますね。好きな出版社の一つです。それにしても、ブランケの絵本は、本当に独創的で驚かされました。オススメです!
僕もゴーリーは好きなんですが、空猫さんもお好きでしたか。当ブログでもそのうち紹介したいと思っています。
「ビビを見た」ネットでちょっと調べてみました。うん、かなり好みに合いそうな感じです。探してみますね。
【2006/03/17 18:23】 URL | kazuou #- [ 編集]

ありがとうございます☆
こちらこそTBありがとうございました。
ほんと、この1冊しか出てないなんてもったいないですよね。
ブランケのHPにはイラストも沢山載っていたので、
他のスタイルの本も読んでみたいです。
【2006/11/04 18:20】 URL | べあ #3fP8K/.I [ 編集]

>べあさん
HPなんかを見ると、ブランケは絵本作家というよりは、マルチクリエーターといった感じの人みたいですね。『幸福の花束』に収められた物語は、どれも子供向けの本を書いている人からは出てこない発想ですよ。
ほんとうに、他の作品もぜひ読んでみたいと感じさせる作家ですね。
【2006/11/04 18:38】 URL | kazuou #- [ 編集]


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幸福の花束 ステファヌ ブランケ

幸福の花束ステファヌ ブランケ, St´ephane Blanquet, 中条 省平フランス人アーティスト、ステファヌ・ブランケの描く切り絵えほん。エドワード・ゴーリーの絵本にも通じるブラック&ビターな読みごたえ。ロッテ・ライニガーの切り絵に毒っ気を注入したかのような、キモカ A.【2006/03/14 13:35】

[本]『幸福の花束』(ステファヌ・ブランケ/パロル舎)

http://www.parol.co.jp/books/041-9.html 絵本コーナーでふと見つけ、手に取ってみたらビックリ。不気味な表紙から分かるように、大人向けの残酷でシニカルな絵本でした。影絵のような切り絵のような独特な絵なのですが、それが余計にお話の想像を膨らませ、一度読んだら スキスキダイスキ【2006/11/02 17:54】

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kazuou

Author:kazuou
男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主催。
主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。
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