ハイブリッド・ホラー  L・P・デイヴィス『忌まわしき絆』
4846005232忌まわしき絆 (論創海外ミステリ)
L.P. デイビス L.P. Davies
論創社 2005-02

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 1964年発表のL・P・デイヴィス『忌まわしき絆』(板垣 節子訳 論創社)は、ミステリの叢書〈論創社ミステリ〉の1冊として出版されているのですが、その肌触りは、ミステリとは、ちょっと異なります。ミステリとSFとホラーとのハイブリッド、今で言えば、モダンホラーが一番近いのでしょうか。とにかく、ストーリーテリングが非常に達者なので、飽きずに読むことができます。
 主人公は、教師のシーコム。ある日、彼の勤める学校内で、問題のあった子供が、屋根から墜落死します。以前にも同じような事故があったことを聞いたシーコムは、奇妙な雰囲気を持つ生徒、ロドニー・ブレイクに関心を持ちます。彼は、事故の現場に必ず居合わせていたのです。ロドニーの両親は養父母であり、彼の出生が不明なことや、空想上の人物と話しをすることなどから、ロドニーには双子の兄弟がいるに違いないとシーコムは考えます。しかも少年は、超能力らしきものを持っているらしい。同僚の女教師とともに、シーコムは、その子供の探索に乗り出します…。
 謎が謎を呼ぶ序盤の展開は、ページをめくる手がもどかしくなるほどの面白さ。最初は双子であると思っていた少年が、実は三つ子、いや四つ子に違いないと、推理が二転三転していくところが面白いです。子供をとりあげた看護婦が、生まれた子供は1人しかいなかった、というあたりの展開は圧巻です。
 しかも彼らは、ただの双生児ではなく、奇形であったことが仄めかされるのですが、このあたりの猟奇的な雰囲気は、素晴らしいものがあります。
 ですが、後半では、物語のトーンが変わってきます。子供たちの秘密が明かされるのですが、その真相も、どこか「トンデモ系」。B級SF的な大風呂敷になってしまうのが、ちょっと残念なところ。なにしろ、世界的なスケールにまで、事態が拡大してしまうのです。
 ミステリとしてみたときには、論理に傷があり、SFとしても、ちょっと大仰というか古くさい。ですが、そのサスペンスはかなりのもので、不思議な魅力を持つ作品です。どこか昭和初期の怪奇探偵小説を思わせる、ブラックな展開が魅力です。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

この記事に対するコメント

「真相がどこか『トンデモ系』、B級SF的な大風呂敷」と聞くと、クーンツのいくつかの作品を連想してしまいます(笑)。
ただ「昭和初期の怪奇探偵小説を思わせるブラックな展開」ともなれば、クーンツとはテイストが少々異なるのでしょうね。
【2007/05/20 14:43】 URL | newt #- [ 編集]

捨てがたいです
そうなんですよね。クーンツっぽいんですが、もうちょっと品がある、というか作品全体が整っている感じです。
「昭和初期の怪奇探偵小説」という表現は、具体的には江戸川乱歩とか、海野十三とかを意識して使っています。
欠点はいろいろ目につくものの、雰囲気がものすごく好みでした。イギリスの怪奇小説が好きな方なら、楽しめるのではないかと思います。
【2007/05/20 17:12】 URL | kazuou #- [ 編集]


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男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主催。
主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。
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