ごった煮小説  マーク・トウェイン『アメリカの爵位権主張者』
4882025337アメリカの爵位権主張者—マーク・トウェインコレクション (12)
マーク・トウェイン Mark Twain 三瓶 眞弘
彩流社 1999-01

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 『アメリカの爵位権主張者』(三瓶眞弘訳 彩流社)は、マーク・トウェインの作品中でも、知名度も低く、評価もあまり高くない作品なのですが、捨てがたい魅力があります。
 イギリスの貴族ロズモア伯爵には、何代も前から正当な爵位権を主張する、アメリカの遠い親類がいました。そして、新たに爵位権主張者となったセラーズ大佐は、さっそく正当な爵位を要求する手紙を出します。ロズモア伯爵はそれを無視しますが、理想家肌である伯爵の息子バークレー子爵は、爵位をゆずることを主張します。
 喧嘩別れをしたバークレー子爵は、アメリカに渡りますが、ホテルに滞在中に火事にあいます。行きがかり上、他人の服を着ることなった結果、子爵は死んだとみなされてしまいます。これ幸いと、子爵はふつうの人間になりすまし、自らの力で生きようと決心します。ところが、アメリカにおいては、学歴も肩書きも役に立たず、何の技能も持たないバークレーは、貧窮に悩まされることになります…。
 肩書きを失った青年のアイデンティティ模索、セラーズ大佐の「霊の肉体化」計画など、魅力的なテーマ、素材がめいっぱい詰め込まれた作品です。ただ、あまりに、いろいろな要素を詰め込み過ぎた結果、焦点がしぼりきれず、中途半端になってしまっている感は否めません。
 最初は、バークレーが火事の際に着た服が、たまたま、名うての悪党のものだったために、セラーズ大佐が「霊の肉体化」が成功したと思い込むあたりでは、非常に面白くなりそうな感じなのですが、それが途中で寸断されて、バークレーのアイデンティティ模索の話になってしまいます。これも社会の矛盾を突き詰めるとか、テーマが深化するわけでもありません。
 作中にあらわれる要素要素は、それぞれもの凄く面白くなりそうな可能性を秘めているように思われるのに、どれもが互いの邪魔をしあって、ごった煮的な作品になってしまっているのです。
 まとまりがないのは確かですが、読んでいて、部分部分は面白く、楽しいことは否定できません。この作品、もう少し手が入って、まとまりがついていたなら、とんでもない傑作になったかも…という期待を抱かせる作品ではあります。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

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