3月の気になる新刊と2月の新刊補遺
2月21日刊 松尾由美『九月の恋と出会うまで』(新潮社 1470円)
2月24日刊 道尾秀介『片眼の猿』(新潮社 予価1680円)
3月10日刊 若島正編『棄ててきた女』異色作家短篇集19(早川書房 予価2100円)
3月10日刊 若島正編『エソルド座の怪人』異色作家短篇集20(早川書房 予価2100円)
3月10日刊 『タルホ・スコープ 稲垣足穂の世界』(平凡社コロナ・ブックス 予価1680円)
3月16日刊 トマス・ド・クインシー『深き淵よりの嘆息』(岩波文庫 予価630円)
3月20日刊 パトリック・マグラア『失われた探険家』(河出書房新社 予価1995円)
3月25日刊 アン・アーギュラ『わたしが殺された理由』(ハヤカワ文庫 予価756円)
3月30日刊 最相葉月『星新一 一〇〇一話をつくった人』(新潮社 予価2415円)
3月下旬刊 アルフレッド・ベスター『ゴーレム100』(国書刊行会 予価2730円)
3月下旬刊 ロバート・E・ハワード『黒い予言者』《新訂版コナン全集3》
3月刊   紀田順一郎『幻想と怪奇の時代』(松籟社 予価2100円)

 このブログでは、基本的に日本作家はとりあげてないのですが、じつは松尾由美はお気に入りの作家のひとりです。ちょっと風変わりな作品を書く作家ですね。SFやファンタジー的な要素が、ほどよく散りばめられているので、ジャンル小説が苦手な読者にも勧められる作風です。
 新刊の『九月の恋と出会うまで』もさっそく読んだのですが、期待に違わぬ作品でした。SF的な設定を使ったラブストーリーなのですが、この作者、日常的な小道具にそうしたファンタジー的な要素をからめるのが、すごく上手いです。今回は、エアコンの穴が、時空を越えた場所につながってしまった、という何とも洒落た設定。タイム・パラドックスなんかも出てきてSFファンにも楽しめるのではないかと思います。
 『片眼の猿』は、日本作家の中では、個人的に今いちばん気になっている作家、道尾秀介の新作。また何か「仕掛け」のある作品らしいですが、あんまりホラー的な要素はないみたいですね。この人は、ミステリよりもホラーの方に適性があるような気がするので、そちら方面を期待したいところです。
 〈異色作家短篇集〉もいよいよ完結。最終配本は、アンソロジー二冊と豪華です。『棄ててきた女』はイギリス編、『エソルド座の怪人』は世界編。
 〈奇想コレクション〉の新刊は、パトリック・マグラア『失われた探険家』。マグラアは、題材はグロテスクなものが多いのですが、小説作りは非常に達者なので、読ませます。どこか夢野久作なんかと似た感じのする作風ですね。
 アン・アーギュラ『わたしが殺された理由』は、初めて聞く作家ですが、あらすじが気になります。「前世が殺人事件の被害者だと知った刑事は、自分を殺害した犯人を追う。輪廻ミステリ。」らしいです。
 紀田順一郎『幻想と怪奇の時代』は、怪奇小説紹介のパイオニアたる著者の回想記。SFやミステリ方面では、この手の回想本もわりと見るのですが、怪奇小説方面のものはあまり聞いた事がないので貴重ですね。ホラー好きな方は必読でしょう。
この記事に対するコメント
渋いところがそろったような
松尾由美、最近読み始めましたが、この新刊、題名からすると相当甘い話のようですね。う~む…
〈異色作家短篇集〉の2冊は未紹介ものがメインだったら是非読みたいところ。
ベスターが国書刊行会からとは意外ですが、短編集なんでしょうか。
一番そそられるのは、やっぱり『幻想と怪奇の時代』になりますね。
ところで道尾秀介、恥ずかしながら知りませんでした。どんな作品を発表しているのでしょうか。
 
【2007/02/28 19:39】 URL | 迷跡 #- [ 編集]

一般向け
『九月の恋と出会うまで』は、ご推察どおり、大甘(笑)な話でした。かなり一般受けを狙っているとは思うのですが、そこはやっぱり松尾由美。どこかひねた部分があって、楽しめます。とはいえ、これもしかして、今までの作品でいちばん甘いんじゃないかなあ、という気はします(笑)。

〈異色作家短篇集〉は、全編未訳のようですよ。ベスターは、どうやら長編のようです。あらすじを聞くかぎり、けっこう面白そうです。

『幻想と怪奇の時代』は、来月いちばん気になる新刊ですね。荒俣宏とともに「幻想と怪奇」ジャンルを牽引してきた著者だけに、気になるところです。回想記だけでなくて、評論やエッセイもいくつか収録されるようで楽しみです。

道尾秀介は、まだ数作しか作品を発表してませんが、かなり気になる作家になっています。ホラーとミステリのハイブリッド的な作風が持ち味のようですね。
処女作の「背の眼」は、ミステリ的な結構は大したことがなかったのですが、怪談風の雰囲気醸成が、かなり上手いです。いちばん驚かされたのは『向日葵の咲かない夏』。友人の死の謎を追う少年を描くミステリ、ですが、これがまた陰鬱かつねじれまくった怪作!
あとは、もうちょっと洗練されたホラー・ミステリ「シャドウ」もトリッキーな作品で、なかなかの佳作でした。
【2007/02/28 20:19】 URL | kazuou #- [ 編集]

松尾由美
他の方のブログ記事で、松尾由美さんの「バルーンタウンシリーズ」が気になっていました。
kazuouさんのお気に入りだったとは。
ますます気になってまいりました!
【2007/02/28 21:31】 URL | つな #nfSBC3WQ [ 編集]

良いですよ
じつは「バルーンタウン」シリーズは読んでなかったりするんですが(笑)。それ以外の松尾由美の作品は、だいたい読んだと思います。
どれも発想は斬新で、筆致は軽妙、たいていほどよい謎解きが用意されていて、ファンタジー的な要素も強いです。日常的な雰囲気が濃いのに、それでいて泥臭くならないのがいいですね。
いちばん最初に読むなら、ラブストーリー的な要素の濃い『雨恋』『スパイク』そして『九月の恋と出会うまで』あたりがいいと思います。とくに幽霊との恋愛を描いた『雨恋』はオススメです。
ミステリ好きな方なら、幻想連作ミステリ『銀杏坂』、人間性の謎を追った『ピピネラ』『ブラック・エンジェル』あたりも、クセはありますが傑作だと思いますので、機会があったらどうぞ。
【2007/02/28 23:05】 URL | kazuou #- [ 編集]


こんにちは。同じ本の感想記事を
トラックバックさせていただきました。
この記事にトラックバックいただけたらうれしいです。
お気軽にどうぞ。
【2010/07/29 10:32】 URL | 藍色 #- [ 編集]

>藍色さん
はじめまして。コメント、トラックバックありがとうございます。
アーギュラ『わたしが殺された理由』は、あまり楽しめなかったのですが、『九月の恋と出会うまで』はとても楽しく読みました。松尾由美作品はどれも一定以上のレベルを保っているので、安心して読めますね。
【2010/07/31 08:32】 URL | kazuou #- [ 編集]


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Author:kazuou
男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主催。
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