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異国の幻想  坂東眞砂子『異国の迷路』
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 坂東眞砂子『異国の迷路』(JTBパブリッシング)は、ニューヨーク、パリ、東南アジアなど、様々な異国での人々の恐怖体験を描いたホラー短篇集です。

 姑を伴った夫婦の南国への旅行が悲劇を呼ぶ「マルガリータをもう一杯」、アイルランドを訪れた女性が現地の「呪い」に憑かれる「死者を忘れるなかれ」、呪われた靴が何人もの死を惹き起こすという「黒い靴」、ネパールを再訪した男が思いもかけない復讐に見舞われる「信じる?」、わがままな新妻が恐ろしい目に会う「霧の中の街」、かって住んでいた異国の家を訪れたモデルが変容を遂げる「極楽の味」、列車の旅路で出会ったイスラム教徒の夫婦の恐ろしい真実を描く「理想の妻」、飛行機内で出会った二人の女性の奇怪な縁と悲劇を描く「離れない」、孤独な男性によって異界に誘われるという「夜の散歩」、異国の年上の夫に嫁いだ日本人女性の悲劇を描く「地の果てにて」、異国でかっての恋人に再会した女性の愛憎を描く「ムーンライト・キス」、夫と共に移り住んだ異国の生活に馴染めない妻の不安を描いた「ガラスに映る貌」を収録しています。

 旅行雑誌の「るるぶ」連載ということで、異国の旅先での出来事をテーマに描かれた、ごく短めの恐怖小説をまとめた作品集になっています。呪いや霊など、明確に超自然的な題材もありますが、どちらかというと現実的に起こる出来事を描いた恐怖小説が多くなっていますね。特に夫婦や男女関係のもつれや行き違いが悲劇や犯罪を呼び起こす、というタイプの作品が目立ちます。

 いちばん印象に残るのは「黒い靴」。フランスを訪れていた靴職人の「ぼく」は、カフェで隣り合わせた中年夫人と言葉を交わすことになります。彼女は靴にまつわるある話を始めます。靴職人だった父親の工房で綺麗な靴を見つけた「わたし」はそれを欲しがりますが、それを見つけた母親に取られてしまいます。靴を履いた母は交通事故で亡くなってしまいます。さらにその後、兄が亡くなります。例の靴をはいた恋人と共に溺れたというのです。靴に何かがあるのではないかと「わたし」は考えますが…。
 履くと死を呼ぶ呪いの靴をめぐる恐怖小説です。最終的に靴の正体は明かされるのですが、靴一足によって一つの家族が全滅してしまう…というところで恐怖感の強い作品になっていますね。

 短めながら、どれもスマートで、鋭い恐怖小説集となっています。


テーマ:怪談/ホラー - ジャンル:小説・文学

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Author:kazuou
男性。本好き、短篇好き、異色作家好き、怪奇小説好き。
ブログでは主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。怪奇幻想小説専門の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。
twitter上でも活動しています。アカウントは@kimyonasekaiです。twitter上の怪奇幻想ジャンルのファンクラブ「 #日本怪奇幻想読者クラブ 」も主宰してます。
同人誌『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』『物語をめぐる物語ブックガイド』『迷宮と建築幻想ブックガイド』『イーディス・ネズビット・ブックガイド』『夢と眠りの物語ブックガイド』『夢と眠りの物語ブックガイド 増補版』『奇妙な味の物語ブックガイド』『海外怪奇幻想小説ブックガイド1・2』『謎の物語ブックガイド』『海外ファンタジー小説ブックガイド1・2』『奇想小説ブックガイド』『怪奇幻想映画ガイドブック』を刊行。「海外怪奇幻想作家マトリクス・クリアファイル」も作成しました。



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