おかしな双児の物語  マーク・トウェイン『かの異形の双生児』
4882023229まぬけのウィルソンとかの異形の双生児—マーク・トウェインコレクション (1)
マーク・トウェイン Mark Twain 村川 武彦
彩流社 1994-11

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 『まぬけのウィルソン』と成立過程を同じくする作品『かの異形の双生児』『まぬけのウィルソンとかの異形の双生児』収録 村川武彦訳 彩流社)は、成り立ちそのものを作者が語りながら、物語が進むという、多分にメタフィクション要素の強い作品です。
 作者によれば、本来は『かの異形の双生児』が最初にあって、シャム双生児のような、双児の兄弟を主役にした物語を構想していたのですが、ロクシーとウィルソンとトムという3人の人物をとりいれたところ、そちらの登場人物が物語を支配してしまい、本来中心となるべき人物たちが背景に退いてしまったというのです。そのために本来、喜劇として構想していた部分をぬきだして、別作品に書き改めた、というのが本作です。
 冗談小説の色合いが濃く、ストーリー自体もあってないような感じです。物語の本筋とは別に、作者の一人語りが頻出する部分が目立ち、かなり前衛的な作風になっています。登場人物、出来事が共通しているものの、基本的に『まぬけのウィルソン』とは全く別の作品だと考えた方がよさそうです。
 『まぬけのウィルソン』に登場する双児は、ただのふつうの2人の人間でしたが、『かの異形の双生児』の双児は、身体のくっついた奇形です。また設定がふるっていて、1週間単位で、決まった時間になると身体の支配権が兄弟間で移動するというのです。この設定をうまく使って、一方が出かける場所がもう一方には不愉快であるのを、面白おかしく描いています。決闘の最中に支配権が移ってしまい、平和主義者であるもう一方が逃げ出してしまうシーンなど、抱腹絶倒です。
 双児を使う作品の常で、兄弟は正反対の性格を持っていることになっています。ルイージは、酒のみで自由思想家、野卑で勇敢です。アンジェロは、禁酒主義者で、宗教心が厚く、温厚で平和を好みます。当然一方の行動が、もう一方には気に入りません。しかし、利点もあって、アンジェロが薬が苦手なために、薬はすべてルイージが飲んでやります。
 作品のタッチは完全にファルスのそれなので、起こる事件や結末も、かなりぶっとんでいます。今風に言うと、いわゆる「バカミス」の範疇に入るのでしょうか。
 作品の成立上、『まぬけのウィルソン』を読んだことが前提になっているので、この作品だけ読んでもその面白さはわかりにくいのは確かです。けれど『まぬけのウィルソン』と一緒に読むことによって、作品の成立過程や、物語の変奏の仕方などが、透けて見えてくるという、面白い体験を得られるでしょう。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

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