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悪の館  手代木正太郎『涜神館殺人事件』
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 手代木正太郎の長篇『涜神館殺人事件』(星海社)は、過去の住人が涜神の限りを尽くした館で、霊能力者たちが次々と殺されていく…というホラー・ミステリです。

 黒い噂の絶えないダヴェンポート公爵によって二百年前に建てられた屋敷、涜神館。屋敷を買い取った作家ソーンダイクは、名高い霊能力者を集め心霊的な実験を行おうとします。「妖精の淑女」の異名を持つ霊媒師エイミー・グリフィスも霊能力者の一人として涜神館に招かれていましたが、その実、彼女の能力は全てイカサマでした。
 館にはエイミーを含め六人の霊能力者たちが招かれていましたが、その場に居合わせたもう一人の男は、以前エイミーのイカサマを見破った、心霊鑑定士ダレン・ダングラスでした。謎の死体が発見されたのを皮切りに、次々と霊能力者たちが殺されていきますが…。

 黒魔術や暴虐の限りを尽くしたというダヴェンポート公爵によって建てられたという館、涜神館を舞台に、次々と異様で猟奇的な殺人が多発する、というホラー・ミステリ作品です。
 舞台となる館といい、登場する霊能力者たちといい、全体にオカルト趣味たっぷりの作品となっています。序盤から霊能力者たちの能力は本物とされており、彼らによる驚異的な能力が明かされていきます。
 死んだ友人の霊を憑依させることのできる心霊考古学者デリック・ボンド、官能的なきっかけでエクトプラズムを発生させられる物質化霊媒師ミランダ・クランドン夫人、心霊写真家ウィルフレッド・ホープ、過去の事実を再体験できる逆行認識能力者エレノア・モーバリー夫人、ラッピング交霊術氏の双子フォックス姉妹など、彼らの能力も多種多様。その全てが本物であるようで、逆に視点人物であるエイミーは、自身の妖精を見る力がイカサマであることに劣等感を感じる、というところも面白いですね。

 霊能力者たちの力が本物であることから、いわゆる超自然的な力が実際に存在する世界観であることが分かるのですが、館で起こる異様な現象や事件が超自然的な原因によるものなのかは、はっきりしない、というのも興味深いです。事件が人為的な原因によるものの可能性もある、というところで、スリリングな展開となっています。
 霊能力者たちが次々に殺されてしまい、誰が生き残るのか? そもそも彼らを殺しているのは誰なのか?何の意図があるのか?といった謎も物語を引っ張っていきます。
 館に起こった過去の事件もオカルト的な雰囲気を高めるための単なる題材ではなく、事件の真相としっかり結びついているという部分で、ホラーとしての完成度も高いですね。
 完全にオカルトや超自然が存在する世界で、それを前提に「謎解き」がなされる…という点で、とてもユニークな作品です。ミステリ的な趣向も良く出来ていますが、ホラーとしての魅力が勝っている作品かと思います。

 作中で、館の使用人として登場する人物たちに、ジム・ショートハウス、ヘレン・ヴォーン、トマス・カーナッキがいたり、霊媒の一人ボンドの支配霊の名前がジョン・サイレンスだったりと、海外ホラー作品へのオマージュもところどころにあって、楽しい作品です。
 ただ、黒ミサやパーティのシーンなど、猟奇的・性的にかなりえげつない描写が見られるので、そのあたりが苦手な人はお気をつけください。


テーマ:怪談/ホラー - ジャンル:小説・文学

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Author:kazuou
男性。本好き、短篇好き、異色作家好き、怪奇小説好き。
ブログでは主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。怪奇幻想小説専門の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。
twitter上でも活動しています。アカウントは@kimyonasekaiです。twitter上の怪奇幻想ジャンルのファンクラブ「 #日本怪奇幻想読者クラブ 」も主宰してます。
同人誌『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』『物語をめぐる物語ブックガイド』『迷宮と建築幻想ブックガイド』『イーディス・ネズビット・ブックガイド』『夢と眠りの物語ブックガイド』『夢と眠りの物語ブックガイド 増補版』『奇妙な味の物語ブックガイド』『海外怪奇幻想小説ブックガイド1・2』『謎の物語ブックガイド』『海外ファンタジー小説ブックガイド1・2』『奇想小説ブックガイド』『怪奇幻想映画ガイドブック』を刊行。「海外怪奇幻想作家マトリクス・クリアファイル」も作成しました。



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